58 インターミッション
桜たち雲の上学園は橘高校に勝利し、次の対戦高校である、大江戸大付属高校との対決まで会議室でひと時の安らぎの時間をすごしていた。
今は、大江戸が橘と試合をしている。
「次の大江戸だっけ?氷柱、何か知ってる?」
情報通である氷柱に桜は問いかけた。
「生徒会長の徳川海さんは知ってる?」
「ああ、昨日会ったよ。」
「そう。彼女はうちの徳川空君同様、何か不思議な感覚を持ってるわ」
実際、徳川空と対峙したことがある桜はその“感覚”というのを身をもってしっていた。
「でも空君とは違う…そうね、威圧?というのかしら。そういった相手をひれ伏すような感じ。」
「ふ~ん。他の生徒は?」
「副会長の織田信長君は、剣術の達人。その片腕として明智光秀君。」
「何か歴史人物と同姓同名なんてね…。」
「まだいるわ。豊臣君、石田君。慶事。市さん。の七人が生徒会よ。」
「そりゃまた、名前が“偶然”だね。」
すると、エヴァが声をかけてきた。
「おい、貧乳。」
「貧…!って何?」
「アタシ次でんのか?」
「さっきの試合に出ていない人は出るよ。」
「ちっ、メンドくせ。」
悪態をついて離れていった。
「ちょっと!真面目にやってよ!」
手だけを振って、了解の合図をした。
桜はいまいち信用ならないと思いながらも、エヴァの運動神経は北海道で証明済みなので、真面目にやりさえすれば大丈夫だろうと思っていた。
会議室のドアがトントンと叩かれた。
大江戸の職員が試合に関する紙を届けにきた。
紙はこう書かれていた。
『オーダー表・雲の上学園
一回戦
二回戦
三回戦
四回戦
五回戦
』
とだけ書かれていた。
「何をやるかは、まったく秘密ってわけか。」
「桜。」
「あ、椿。すっかり忘れていた。」
「失礼ね。」
椿はいつも通り、黒いドレスを身にまとっていた。
「私、一回戦に出させてほしいんだけど。」
「へ?別にそれはかまわないけど?」
「とっとと終わらせて、シャワー浴びに行きたいのよ。」
「ウチらの試合はまったく興味がないわけ?」
「ないわ。しいていうなら、桜が運動したときに見える素肌には大いに興味があるわ。」
「勘弁してください。」
「一眼レフカメラでとるわ。」
「勘弁してください。」
「じゃあ、よろしくね。」
椿は用件だけ伝えると、一人会議室を出て行った。
椿はこの大会中、フリーダム。一人でどこかに行っている時間が多い。
どこで何をしているのか気にはなるが、詮索するほど興味もないし、謎多き人物であるので放置しておく。
「無い乳。」
「な…!胸から離れろ!」
「アタシ二番な。」
「あ、ちょっと!」
エヴァもそれだけ伝えると、時間には会場にいるといい、部屋を出て行った。
「チームワークゼロだけど…」
「だけど?」
「みんな、桜が好きなのよ。」
「ッ!」
意外にもシャイな桜は顔を赤くしてしまった。
その様子を氷柱は笑って見ていた。
「じゃあ、そんな桜が大将ってことで、五回戦でいいわね。」
「さくらちゃ~んがんば~」
「ちょっと!南も無責任な!大将ってことはね」
「桜が負けたら雲の上全体の負け。」
わざと七海が鋭く言った。
普段の七海からは創造できないような鋭く、冷たい声であった。
「な…七海?」
「驚いた?私こんな声の出し方できるんだ。脅しになったでしょ。」
この流れで、桜は五回戦に出ることになった。
あとは、間宮と識がジャンケンをして、間宮が三回戦・識が四回戦に出場するようになった。
一回戦・椿
二回戦・エヴァ
三回戦・間宮
四回戦・識
五回戦・桜
でオーダーを提出した。
桜はそろそろ、四回戦をやるだろうと思い、外に出て、大江戸対橘の試合状況を確認しにいった。
スコアボードには、驚愕のスコアが記載されていた。
大江戸5勝0敗
橘0勝5敗
橘のストレート負けであった。
桜は恋美元に話を聞きにいった。
「恋美!どうしたの!?」
「あ、桜…。」
少し疲れた様子の恋美の姿があった。
「うん、なんと言うか、スポーツ対決だったんだけど…。圧倒されちゃった。」
「そんな…」
恋美は決して運動オンチではない。むしろ逆で、一般的に運動神経がいい方である。
「徳川海って会長?」
「いや、会長は出なかった。あいつら…、気をつけて。たいしたこと無いやつもいるけど、桜並みのバケモノもいるわ。」
「な…!」
桜並みのバケモノという言葉にイラっときたが、自分と同程度の実力の持ち主ときいて、恐れるどころか、ワクワクしてきた。
「大丈夫。恋美たちの仇とるよ!」
「なんだかすっごいうれしそう…」
そして、時間が来た。
次回、雲の上学園vs大江戸大付属高校