51 ファースト・コンタクト
最終メンバーも決まり、桜は一安心して、翌日の授業をサボっていた。
今日は一人でサボっているわけではなく、七海と南の三人で五限目の授業を抜け出し、隣町のショッピングモールに来ていた。
雲の上駅から二つはなれた“七王子”に来ていた。
ちなみに八王子とは別である。
今桜たちが歩いているのは、オシャレなショッピングモール街。
気分的には青山に近い感じである。
「いや~こういう時のために、私服を生徒会室に隠しておいて正解だったな。」
「ほんとほんと!氷柱に唯一ばれない屋根裏に隠してよかったよ。」
「氷柱ちゃん汚いとこは見ないからね~」
桜たちはサボりように、私服を生徒会室の屋根裏にビニール袋にいれて隠してある。
「今日は目的があるんだっけ?」
今日は、七海がサボりを提案していた。
普段は桜がサボろうとメールを送り、二人が乗るという感じである。
たまに南が人形を買いたいなど甘いものが食べたいなど言い出し、サボる。
七海からの提案はゴクゴク稀な話である。
「今日は眼鏡を買い替えたいのと、ちょっと置物を注文しに行きたいのだけど、置物の店が、昼間しか開かない店でさ。物が物だから、親には頼めなくてさ。」
「エロ本?」
「置物だっつーの。しかも女のくせにエロ本とかいうな!」
「にゃははは…あれ?」
三人の前を横切った人物がいた。
「桜ちゃん、アレって…」
桜には見覚えのある人物であった。
「あれって、確かSクラスの徳川。氷柱が言うには病院に通っている人だって言ってたから、病院に行くんじゃない?」
「それよりついたよ。」
三人は徳川とはあまり面識がないので、それほど話題にはならなかった。
そしてついた先、まずは眼鏡屋であった。
普通の眼鏡屋ではなかった。
外見は、オシャレなアンティークを扱う店のような高級感あふれる所であった。
中身も同じように赤絨毯がしかれた室内。そして、店の中では、グランドピアノによる演奏を行っていた。
店に入る前に職員に会員カードを見せる。
南と桜はカードを持っていなかったが、七海が少し電話をすると通れるようになった。
「どこに電話したの?つーか…ここ本当に眼鏡屋?」
「まず一つずつ説明すると、ここの店長は私の知り合いでね。カードがない二人を通してくれるようにお願いしたの。で、ここは付近では一番高価な眼鏡屋ってとこかな。」
普通の眼鏡屋同様に、机の上に眼鏡が置いてある。
値段を見た。
「ふ~ん、これ普通の方?」
「そうね、この店じゃあ普通の方。」
値札には“1,00,000”と書かれていた。
「十万か~。まずまずだね~」
「私が買うのは二百万の眼鏡だけどね」
「あっはっは。眼鏡にしてはけっこうな物だね。」
ここに識がいたら良識なツッコミがあったであろう。
多彩なデザインの眼鏡を見ていると、他の職員とはまるっきりオーラが違う人がこちらに向かって歩いてきた。
「西園寺七海様。おまたせいたしました。」
「ああ、どうも店長。じゃあいつも見せてくれる?桜、南行くよ。」
二人はそのまま七海についていく。
周りを見ると、スーツを着たサラリーマン、など金持ちの連中しかいない。
エレベーターで四階に上がると、一階と同様眼鏡売り場であった。
だが、一階にくらべ売り場面積が小さい。
眼鏡の値札を見ると、どれも百万単位の物であった。
「七海様、本日はどうなさいますか?」
店長は七海に眼鏡を紹介している。
そこからは、七海の眼鏡ファッションショーであった。
「うわー」
「すごーい」
「かわいい」
「きれい」
桜と南は次々と七海の眼鏡を見せられる。
それを全て棒読みで感想を述べる。
「どっれにしようかな♪」
本当に楽しそうだ。
七海の趣味として、“眼鏡集め”というものがあった。
桜たちは、買い物につきあうことが、始めてではない。
以前眼鏡が何個あるか聞いたところ、百は超えているらしい。
「桜ちゃ~ん、もう三十分だよぉ~」
「この時の七海は無双状態だから、ウチではどうにもできないよ。あとでパフェ奢ってもらおう。」
「これに決~めた♪」
最終的に決めたのは、赤いふちのオシャレな眼鏡であった。メーカーは桜の知らない“ルイベルトン”というものだった。
「いくらした?」
「三百万。今日は奮発しちゃった♪」
眼鏡屋を後にし、次は置物を注文しに行くことになった。
だが、
「悪いんだけどさ~、ちょっと私だけで行きたいから、二人はここで何か食べていてくれない?」
「え?」
「いやさ、そのそこの店員が気難しい人で、常連以外店に入れようとしないんだよ。そこの店の代金奢るからさ、ね。」
その条件なら、と言い桜と南は店へと入っていった。
七海が若干店に来てほしくないと言っているようにも感じた。
水臭いぞ~などと言い、ついていこうとすればできたが、七海が自分の家のことを話さないのと同様に、知られたくないことがあるのかもしれないと思った。
三人は仲はいい。だが、お互いこいうったプライベートには足を踏み入れてはいない。
桜は少しそのことを考えていたらあっという間に頼んだパフェが来た。5つも。
「さぁ!食べよう~♪食べよう♪」
「桜ちゃんってよく食べるよねぇ~。というかよく太らないね~」
「ウチは食べた分、筋肉になるし、家で激しく運動してるからね」
桜の家では、桜用トラップのせいで、否応にも運動させられる。
最近トラップの種類が増えている。
実家に帰ったときに、祖母である御春が茜になにやらリストを渡していた。
おそらく、トラップリストであろうと思う。
あの有名な丸いピンクの生物のごとく、桜はパフェやらケーキを食べ始めた。
その隣の席のテーブルで、男性四人がパソコンを見ながら小さな声で話をしていた。
その話を桜は聞こうと思えば聞けたが、今はそれどころではない。
パフェの山をいかに早く食べるかを考え手を動かしていた。
その四人の一人が携帯で話しており、話が終わると四人はその席を立ち、走ってその場を離れた。
桜の横を通りすぎるとき、桜は反応した。
「っ!!」
「どうしたのぉ~?」
ふいに桜はスプーンを止め、その四人を見た。
何が起きたのかわからない南は頭に?を浮かべていた。
「ごめん、七海が来たら、先帰ってて。」
「え?あ、桜ちゃぁ~ん?」
桜はフェンスを飛び、四人の男を追いかけた。
男が通り過ぎるときに、わずかに臭いがした。
それと、胸のあたりがわずかに膨らんでいた。
おそらう拳銃であろうと思われる。
一人しか確認していないが、四人とも持っていると思われる。
七王子のはずれの裏路地。
薄暗く、夜は不良のたまり場となる。
昼間は、誰もいない。
そこに男四人が入っていった。
桜も裏路地に入り、男を見たとき、男たちは女の子一人を囲っていた。
「徳川海だな?」
「違うと言っても、聞いてくれるのかしら?」
「やれ。」
合図をすると同時に男達は足を一歩前に踏み出した。
すると一人の男の頭にパフェグラスがコォンと当たった。
「ってえね!誰だ!!」
コツコツと足音が聞こえる。
当然桜である。
「あ~、小さいころ女の子をいじめちゃダメって教わりませんでしたか?」
無駄に格好をつけて登場した。
桜は手に持っていたパフェを飲み込むように食べる。
「理由はわからないけど、大人数でナンパってわけじゃないわね。」
「かまわねぇ、見られた以上殺せ。」
男の中のリーダーと思われる人物が再び合図を送る。
二人の男は銃を取り出し、桜に向ける。
それと同時に桜は相手に向かって走り出す。
銃声が鳴る前に桜が喋る。
「村雨」
手元に木刀村雨が現れる。
男が発砲する。
完全に射線を見切っていた桜は走りながら、木刀を一閃。
弾丸を弾き落とす。
「撃ちゃ当たると思ってんのかい?」
そのまま、男二人をなぎ払う。
あわてて、残りのうち一人の男が女の子の手を掴み、車にいれようとする。
「ふっ」
女の子は一瞬手を振り、男をいつの間にか宙へと投げ飛ばした。
さすがにリーダーも作戦不可能と思い、後ずさりながら銃を取りさそうとする。
桜は木刀を構え、投げようとした。
だが、不思議な現象が起きた。
男は、スタンガンでもくらったかのように一瞬痙攣し、その場に倒れてしまった。
桜は何が起きたのかまったくわからず、呆然と立ち尽くした。
「持病の発作?…あ、それより大丈夫?」
「それはこちらのセリフだ。ですが一応お礼はしておきます。ありがとう」
「そ…そう。」
すると、路地に再び男性が現れた。
「徳川!無事…であるか。」
髭を生やした男性が走ってきた。
「織田。どうした?」
「どうしたではない。うぬが勝手に消えたからどうしたかと」
「ああ、誘拐犯がいたから片付けていた。」
ここで桜はいらない世話をしたことい気づいた。
「あ、でも助かったのは事実だぞ?」
「そうかい。」
「私は徳川海。」
徳川海は握手を求めた。
「ウチは東海林桜。」
「余は織田…」
「いくぞ」
自己紹介をすると織田のことなど、無視するかのように歩き出した。
「徳川よ…。」
「さよなら、東海林さん。また会えるといいわね。」
「ああ、お元気で」
桜はため息をついて、後ろを振り返る。
「こいつらどうしよ…。つーかあいつらウチにこの場を任せやがったな…」
肩を落とす。
徳川海は裏路地を出るとある人物と会った。
「お兄様。お待たせしました。」
「海。怪我はないかい?」
「お兄様。海はあんなチンピラどうということはない。」
「そうか、織田君もいつも迷惑をかける。」
「いえ。」
雲の上学園・徳川空は笑った。
「それより、海は五月の大会にでるのかい?」
「ええ、海と織田は“大江戸大付属高校”の生徒会だから出場する。それに海は生徒会長だから」
次回予告
七海「あれ?桜は?」
南「よくわからないけど、先に帰ってだってさ」
七海「何か困った人でも見つけたのかな?ま、いつものことだし、私たちで予告しちゃおう。」
南「よ~し。では、次回は一気に時を進めて、大会編!」
七海「まぁ長々とやるのは作者の趣味ではないから、さっさとこの章も加速させちゃおうってことね。」
南「次回は、『開催高校へ!』だよ~。お楽しみにぃ!」
七海「開催高校で南があんな破廉恥なことを…」
南「みゃ~!何をやらせるのぉ~七海ちゃ~~ん!!」