48 五章『the six school 』
ここは雲の上学園生徒会室。
この部屋には今は桜一人しかいない。
というのも今は授業中であるので、単に桜が授業をサボッて生徒会室にいるから一人なのである。
しかし、今回はタダサボッているわけではない。
桜にはやることがあった。
それは
「あと3人…いや4人かな…。ゴールデンウィーク中に誰が出てくれるんだよ。」
桜たち生徒会プラス数名は5月3日に六学校対抗大会が行われる。
その人数集めをするため桜は誰が来てくれそうか、生徒会にある生徒名簿を見て考えていた。
「これもダメこいつはフランス…」
雲の上学園は休日中、学校に海外旅行に行くことを申請すれば割引券がもらえるので、誰がどこへいくかはだいたいわかる。
(南のハッキングで教師のPCにハッキングしたデータ。)
すると、エレベーターがゴウンと重い音を鳴らして、誰かが生徒会室にやってきた。
今の時間は、授業中なので、普通は誰もこないはず。
南か七海なら授業をさぼってくる可能性は十分にある。
ドアが開いて現れた人物は意外な人物であった。
「む、桜しかおらんのか?おぬしまたサボりか?」
「あ、浦島。珍しいね。学校に来るなんて。ケガはいいの?」
「うむ。良好じゃ。」
このじじくさい話し方をする人物。
彼は“浦島太郎”。
頭の上にちょんまげを立てており、江戸時代の人間のような格好である。
普段から江戸時代の人間が着ているような服を着ている。
クラスはSクラス。どうも病弱らしいので、たまにしか学校に現れない。
「ところで桜よ。先刻氷柱より文が届けられて知ったのだが、どうやら運動大会があるらしいな。」
「ええ、そう。5月3日にやるんだけどいける?」
「わしは大丈夫じゃ。」
これで、あと必要な人数は3人となった。
昼休み。
正直あまり頼りたくないが、この際四の五の言ってられないと思い、桜は学校一
の情報屋に聞くことにした。
その人物は、昼休みになると、所属部活である美術部の部室であるアトリエで絵
を描いている。
美術部のアトリエは校舎エリアの裏、部活動エリアにある。
桜はため息をつきながら、重い足を引きずるような気分でアトリエの前まで歩い
た。
一呼吸いれる。
意を決して扉を開け、その人物の名を呼ぶ。
「椿?いる?」
アトリエは全面窓張りで、鳥かごのような構造をしている。中央には二階へ行く
ためのエレベーターがある。
窓からは、園芸部が育てている花が見える。
椿は、花を描いている最中であった。
桜に呼ばれ、首だけ桜に向けた。
「あら、桜。珍しいこともあるものね。何かしら?」
「頼み…」
「無理よ。」
即答であった。
「私、ゴールデンウィーク中は海外で会合があるから」
「じゃあ、代わりに」
「タダじゃないわよ。」
即答であった。
まるで、ここに来るのがわかっていたような感じだった。
「今回は何が欲しいの?」
「そうね…。貴女の身体でもいいけど」
「かんべんして」
桜は頭を軽く下げた。
とは言え、これはいつものパターン。時々本当に身体を差し出す羽目になるが。
「そうね…。大会の優勝商品である、“赤羽の剣”がいいわ。」
「何それ?」
「もう、大会の要項をちゃんと見なさいよね。チューするわよ。」
椿はどこからか、大会に関する紙を取り出した。
「え~っと?最後のページだね?」
『今大会も、素晴らしい商品をご用意しております。
1位、最上大業物・白桜。
2位、大業物・赤羽刀。
』
「ってなんで両方刀なの?」
「六つの高校を締める、総理事長が刀好きなのよ。」
こんなマメ知識までしってるとはさすがだと、桜は素直に思った。
これで、レズ気がなければ、とても頼れるのだが。
「そういうことだから、よろしくね。」
「その赤羽刀ってのを家に飾るの?」
「ふふふ。そうね、私の母が“上級色刀”をコレクションしたいとおっしゃるの
よ。」
“色刀”とは、桜にさ聞き覚えのない単語であった。
その考えがあまりにも顔に出ていたのであろう。
椿は“色刀”について説明を始めた。
「色刀というのは、まぁ単純に刀の名前に色がついているものよ。だからレプリカも多いのよ。本物の色刀は上級下級と二種類存在するわ。まぁ中にはいわゆる妖刀というのも混ざっているらしいわ。」
「へ~、で赤羽刀は本物?」
「間違いないわ。総理事長の眼力は本物よ。その理事長が出した商品なら当然本物よ。」
桜はその時、自分の刀である“村雨”について考えていた。
あれは、北海道でもらった妖刀である。
色はついていなが、あれも立派な刀であることは振っていればわかる。
「ま、そういうわけだから、よろしく。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。ウチたちに協力してくれそうな人は?」
椿はさっぱり忘れていたようだ。
「ああ、そうね。二人ほどあてがあるわ。」
「誰?」
「わ・た・し♪」
「いやいやいやいや!!!ちょっとちょっと!!アンタ??」
「出てあげるって言ってるのよ。」
「でもアンタ大事な会合があるって…」
「面白そうだからサボるわ。」
ずいぶんと簡単に言うと桜は思う。
「それなら礼をいうわ。あともう一人は?」
「明日、Gクラスに転校生がくるわ。その人に頼みなさい。転校生はゴールデンウィーク中何も予定がないことは調査済みよ。」
「そう、まぁあとはウチでどうにかするわ。」
桜は美術部のアトリエを後にした。
五限目の授業。
さすがに授業にでないといけないと思い、桜は教室に顔を出した。
「なあ、桜?」
「ん?」
授業中、となりの席に座っていた中嶋識が声をかけていた。
桜も別に授業を聞いているわけではなく、寝ようとしていたので、識の言葉に耳を傾けた。
「人数は決まったのか?」
「あと二人。」
「そうか、俺の方もあたっているが、ダメだ。三年生の人とかどうだ?」
「ああ、ダメね。薬師寺さんに聞いてみたけど、断られた。」
「くおぉら、テメェら授業中話しているんじゃね!二日酔いなんだぁ!」
機嫌が悪い教師紫部にゴンゴンっと殴られた。