39 賽は投げられた
12時のチャイムが鳴り、ゲームがスタートした。
桜たち3人はまず時計台の生徒室に向かい、氷柱を仲間にしようと考える。
最初、スタートしたときは武器を持っていないので、迅速な行動が求められる。
武器の所持している相手に遭遇したならば、防戦一方になってしまうので、なるべくA~Fクラスの者に遭遇したくはない。
このゲームの範囲は雲の上中学・高校の敷地を使うので、かなりの広さになる。幸運にも桜たちGクラスは、時計台まですぐの距離なので、誰にも会うことなく生徒会室にいけるであろう。
桜たちは周りに誰もいないことを祈りながら、時計台の下にまで行った。
周りで、パンッパンッと音がする。
恐らく、銃を持っている者同志で打ち合いをしているのであろう。
勝負がついて、こちらにこられてはまずいと思い、桜たち三人は一層早く行動する。
誰にも気づかれず、どうにか時計台下にまでたどり着いた。
エレベーターを使い、生徒会室にまで行く。
チンっと音が鳴り、ドアが開かれると、そこには、いつもの光景、氷柱が生徒会長の椅子に座って、新聞を読んでいる姿があった。
「あ、やっぱり来たのね。」
「ウチらも氷柱ならここにいると思ったよ。ここは生徒会メンバーしか入れないしね。」
そうして、氷柱に近づくと、衝撃の事実がわかった。
「つ・・・氷柱・・・。」
「ごめんなさい。私打たれちゃったの。」
氷柱の腹部に、黒い後。打たれた後があった。
「やっぱり・・・氷柱って腹黒いから血が黒いのね」
「ぶっころすわよ♪」
あくまで笑顔で殴る。
「でも、ゲームに負けた後でも、自由に動いていいらしいから、助かったわ。」
「あ、いいの?」
「ええ、通信役とかはやっていいらしいわ。」
「じゃあさ、ウチらと組もう。」
「ええ、いいわよ。それと、拳銃一個あったわよ。玉は六発。大事に使ってね。」
そして、役割分担をした。
イヤホン型の通信機を桜に渡し、
通信兵 南
戦術予報士 氷柱
移動手段 七海
戦闘兵 桜
といった風になった。
「私は~通信役だから安全だねぇ~」
「そうね。それに生徒会室にいれば、攻撃は受けないわ。」
「外の様子はどうかな?」
南は外の様子を伺おうと、生徒会室の大きな窓から外を覗く。時計台の最上階に生徒会室はあるので、そこからの景色は絶景であるし、周りがよく見える。
だが、顔をだした南に
一弾の黒墨が飛んできた。
「きゃあっ!!」
その場で後ろへところんだ。
「南っ!!!」
全員が駆け寄る。
南の顔は墨だらけになっていた。
「馬鹿な、銃では、こんな高さまで玉が届くはずが・・・」
「違うわ。恐らく、理事長が隠していた、“スナイパーライフル”よ。」
「「スナイパー!?」」
桜たちは、まさかそんなものがあるとは思えず、まぬけな声で反応した。
「武器を隠しているって言っていたけど、まさか、銃だけでなく、そんなものまで用意していたとは、理事長恐るべし・・・。」
「確かに、スナイパーライフルなら、この距離の説明がつくな。氷柱。対策は?」
氷柱は身を乗り出さず、大きな窓を見て、考える。
「この方角、南が打たれた方向角度から考えると、時計台の1階エレベータ門の前に隠れている感じね。」
時計台エレベーターは1階にあり、そこから生徒会室にまで行く設計である。
階段もあるが、最終的に、エレベーター前に下りることになるので、結局は狙い撃ちされる。
「これは、あきらかに私たち生徒会を狙った行動。やられたわね。エレベーター門から前の茂みまで50m。私たちは武器なし。絶望的ね。」
そこで、南が目を覚ました。
「むきーー!!!やられたよぉー!!!」
「あ、やっと起きた。」
「仕返ししてやるぅ~~~」
南は生徒会室のパソコンへと向かった。
「南?何を・・・」
「私のパソコンでハッキングをかけて、相手の正確な場所、生徒情報を丸裸にしてやるぅ~~~」
南のキーボードを叩くスピードは尋常ではなかった。
キーボードが壊れるくらい強く、早く、正確に叩く。
「出たよぉ!!」
パソコン画面には、生徒の写真名前と、現在位置が出ていた。
名前は、××椿
現在位置は、氷柱の予想通りのところであった。
「相手は椿か!!!」
「確かに、椿さんは移動しながら戦うのは格好的に不利。だから待ち伏せってわけか。」
さらにデータを見ると、現在の撃破数が20人となっていた。
待ち伏せで倒した数であろう。
「氷柱ちゃん。これスナイパーライフルのデータだよ!」
「・・・・これじゃあ、ロシアンリボルバーってのじゃないわね。だけど見て。これは一発ごとにリロードが必要よ。」
スナイパーライフルでは、打った後に玉を装填しなきゃいけないようになっている。
玉を取り出す→玉を入れる→レバーを引く→
などの手順がある。
それにライフルを持っているのは素人なので、時間がかかることが予測される。
そこで、四人は作戦を立てた。
(南と氷柱を当てたから、後は七海と桜ね。桜さえ倒せば、一気にこのゲームはチェックメイトをかけるものだわ)
椿は茂みに隠れて、銃を構えていた。その先にはエレベーター門。
スコープを覗き、時に生徒会室の窓を見、椿は辛抱強く待つ。
ふと、エレベーターの階表示のランプが生徒会室から下へと移動している。
これは、覚悟を決めて、特攻を決めたのかと思い、スコープでエレベーターから出てきたところを狙い撃ちすることにした。
チンと音がなり、ドアが開く。
椿はトリガーに力をこめようとする。
だが、ドアが開き、中は無人であった。
(フェイク!?)
椿は生徒会室窓を見る。
これをオトリに別方向からの攻撃を予測した。
だが、何も・・・
と思ったとき
ギュルルル!!!!
何かが回る音が聞こえる。
そこでは、七海が自転車に乗り、後輪部分に桜が乗っていた。
そのまま、突撃。
乗り物の運転が神レベルの七海が操縦しているので、加速が早い。
遅れて、椿が銃を構える。
これなら間に合う距離であると思った。
トリガーを・・・
「とりやああぁぁ!!!」
七海は自転車でジャンプをした。
だが、椿は動じることなく脅威である、後ろに乗っている桜に照準を合わせる。
(二人は無理でも、桜だけなら・・・さよなら!)
トリガーに力をこめる。
銃弾が飛び出る。
それより、一瞬前であった。
後部に乗っていた桜は七海を踏み台にし、もう一段ジャンプをした。
椿は桜のジャンプまで反応することができず、後部座席の位置に射撃し、はずした。
「いっけえええぇぇぇ!!!桜あぁ!」
「うおおおぉぉぉ!!!」
椿は銃を構えなおそうとは思わなかった。
今から玉を装填しても間に合わない。
あきらめの表情を浮かべ、桜に打たれた。
「この猿桜・・・」
「えっへっへ。椿一丁あがり。」
負けた椿は汚れた顔面をハンカチで拭きながら悪態をついていた。
「で、そのライフル頂戴♪」
「これね・・・」
椿は手に持っていたライフルを・・・
ガチャガチャといじり銃口を曲げた。
「あーーー!!!何壊してんだよっ!!!敗者のクセに!!!」
「あらあら、桜に使われるくらいならこうしたほうが、武器のためよ。そのかわり、玉くらいあげるわ。」
桜は椿から玉だけもらい、その場を去った。
桜は通信機で南と氷柱に連絡をとる。
「氷柱。状況は?」
『今の場所だと、近くにだれもいないわ。とりあえず、今いくつかの勢力があるわ。そのうちの小さい勢力から潰していきましょう。』
「わかった。」
そして、椿は・・・・
「やられたわ。けど・・・」
椿は時計台の隠れ扉をカードで開く。
地下階段をくだり、薄暗い部屋に入る。
そこはセキュリティールームであった。
「椿嬢!お疲れ様です!」
「ありがと、じゃあ・・・さっそく・・・」
椿はコントロールパネルをいじり、トランシーバーで連絡をとる。
「中嶋くん。間宮・・・間宮千。聞こえて?」
『こちら中嶋。聞こえる』
『こちら間宮。良好』
「では、狩を始めるわよ。」
椿は不適な笑みを浮かべ、モニターを見ていた。
次回予告
椿「桜に負けたわ・・・」
間宮「・・・・・」
椿「きいいぃぃーーくやしいーーー!!!」
間宮「・・・・」
椿「桜を黒墨だらけにして、あられもない姿にしたかったわぁ」
間宮「・・・・」
椿「アンタいい加減喋りなさいよ!!!」
間宮「次回、椿チーム編」
椿「そこだけ!?」