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雲の上学園生徒会記録  作者: skyofnet
第3章『東海林家の一族・前』
28/119

28 レスキューガール

結婚式当日。



「黒井さん、白井さん。そちらの準備はいいですか?」

「こちらは大丈夫です。」

「私の美の庭は既に準備万端さ。」

「あの茜さん。これはどちらに・・・?」


桜邸庭では恋継の結婚式の準備が進められ、ほぼ完成していた。

四人の使用人が準備をしていると主である桜がやってきた。


「ウチも何かやろうか?」

「いえ、桜はお祝いの言葉の練習をしておいてください。」


桜は手元に持っていた紙をもう一度見た。

それにはビッシリとお祝いの言葉の文が埋め尽くされていた。


「これを噛まずにすらすらとだよね」

「そうですよ。今日は、東海林薔薇都一家のご夫婦がいらっしゃいますから」

「うそっ!!えっ!そんなこと言ったっけ?」


茜はため息をつき、


「昨日言いましたよ。まったく・・・」


桜は眉間にしわを寄せ、真剣に文の朗読を始めた。


「あの薔薇都の親父と叔母さんは、失敗するとネチネチうるさいからなぁ~」

「ですから、桜はそれを頑張ってください。会場とかは私たちでやりますから。」

「わかったよ。茜さん。」


桜は文章を朗読しながら戻っていった。




そのころ、恋継邸。

「不破!出発まであとどのくらいだ!」

「10分を切っております!」

「愛歌と恋美はどうしてる!?」

「すでに桜様家付近におります。」

「三葉さんは!?」

「同様に桜様家付近におられます。といいますか、恋継様が一番遅れています。自分の心配をしてください。」


恋継家ではバタバタと準備をしていた。


「それにしても、若。桜様から受けた傷よくなおりましたね。」

「ああ、あの猿からは、猿が中学の時から殴られているから、俺の治癒力も上がっている。」

「骨折ですよね?若もバケモノですよね。」


恋継邸庭には本家から、レンタルをしたヘリが待機をしていた。

中にいるのは本家から派遣された使用人がいる。


「恋継様!お急ぎください!本家の方が待っております。」

「今いく!それと母さんはどうしてる!」


するとヘリから顔だけだす女性がいた。

恋継の母である“東海林瞳”である。

この人は桜の母の姉にあたる。


「急ぎなさ~い。薔薇都のお兄様に叱られますよ」

「母さん!わかってますよ!」




そして桜家付近の八王子駅。

そこにはバイト終わりの識が歩いていた。

駐輪場から自転車を取り出し、今から家へと帰ろうとしていた。

その識に向かい二人歩く人がいた。


「おい、貧乏人。」


いきなりわけわからない二人に貧乏人と言われさすがに腹が立った。


「おい初対面に向かってそれはないだろ。つーかお前何者だ?」

「道教えろ。」


あくまで最低限のことだけを伝える二人。

一人は赤い髪をした同年代の女の子

もう一人は青い髪をした同年代の女の子

顔はかなり違う。赤い髪は目が大きく活発的なイメージが強かった。

青い髪の方は、暗い目をし消極的な女の子であった。

識に話をかけているのは、赤い髪の方であった。


「おいガキ、お前な」

「東海林桜の家を教えろ」


桜の名前が出て、この二人は桜邸に行く人間であることを知った。

二人を見ると、高級品を身につけていて、いかにも桜の親戚のような感じがしていた。


「桜の家か?タクシーで東海林邸って言えば行ける。」

「タクシーに乗って誘拐されたことがある。怖い。」


金持ちだと確かに知らない人間の車に乗るのは怖いかもしれないと思った。

だが、その時不思議に思ったことがあった。


「・・・付き人とかいるだろ?どうした?」

「誘拐犯にノックアウトされた。」


その瞬間、全身黒い服に身を包んだ人が二人現れた。


「いたぞ!あの二人だ!応援を呼べ!!」


識は見た。その手には携帯電話と黒いL字型のアレ。

やくざ用語でハジキというアレ。

そして識は女の子二人をそれぞれ自転車の後部座席とサドルに座らせ、自分は立ち乗りをし、


「ににににに逃げるぞおおぉぉぉ!!!!」


猛ダッシュでその場を後にした。




丁度その時、恋継の乗ったヘリの中で。

「不破。恋美と愛歌についていったのは誰だっけ?」

「弱久です。あいつが運転しています。若が弱久がつくよう言ったのですよ。私は反対したのに」

「あら、弱久さん運転なんてしてましたっけ?」

「ペーパーですよ。奥様。あいつは家事は完璧ですが、他のことは・・・」

「ま、さすがに事故を起こして、その隙に誘拐犯に恋美たちが追いかけられることはないだろう」


三人は笑いながら談笑をしていた。

まさに現実はその通りであるとは知らずに。




八王子市街。

裏道を激走する自転車があった。


「おいガキ!そのノックアウトされた使用人はいいのか!!」

「アイツは死なないから問題ない。貧乏人。このまま桜家のとこまで頼む。」

「クソッ!おれはタクシーか!!」


それまでずっと黙っていた青い髪の少女が口を空けた。


「後ろ来た。」

「何っ!!」


後ろを見ると、黒いベンツが三台。そして助手席の窓から手を出して、その手にはL字のハジキが握られていた。

裏路地なので、一台ずつ縦にならんで追いかけてきていた。


「おいガキ!こっから飛んだりするからしっかり捕まれ!」


二人は言われたとおり、前の識の腰にしっかりと掴んだ。

識は右折左折とし、昇り階段の道に出た。

端っこの方は段差ではなく坂道であったので、そこを上ろうとした。

斜度は45度。驚異的な脚力でスススっと昇った。


下のベンツはさすがに階段を昇ることができず、助手席の男が窓から顔をだした。


「まずい!!」


識はとっさに予感した。

そしてグリップに力を入れて。


バァン!!


黒服の発砲。


識は自転車でジャンプする。


まさかの行動に弾丸はそれた。


そのまま階段を昇りきり、識は広い道へと出た。


「おもしろい!もう一回あそこではねて!」

「アホか!」



黒いベンツから一人の女性が出てきた。

全身黒ずくめで、顔は黒い帽子で隠されている。

二人を逃し悔しそうに歯軋りをしていた。



そして、識たち。

「そうだ!桜の家に電話しろ!助けを呼ぶんだ!」

「さっきのジャンプで携帯落とした。」

「何ぃ!じゃあ青髪の携帯は?」

「青髪じゃない!恋実だ!私は愛歌だ!」


識は初めて二人の名前を知った。


「そういえば自己紹介どころじゃなかったからまだ、言ってなかったな。俺は・・・」

「中嶋識でしょ。桜の家の写真で見たことある。たしか生徒会の人でしょ。」


自分のことを知っていたのに驚いた。

同時にこの二人が桜とどういう関係なのかも気になった。


「桜とは親戚か?知り合いか?」

「従兄弟だよ。今日私の兄貴が桜の家で結婚式すんだ。だから遅刻しないように急げ貧乏人。」

「名前知ってんなら名前でいえ!」


識はなぜ自分を訪ねたか理解した。

桜の知り合いで生徒会の人間なら信頼できると思ったのだろうと思う。


「ここを突っ切れば、桜の家だ。」


識は角を曲がり、大通りにでた。

三人はあともう少しで桜の家につくと思い安堵していた。


だが、


大通りにでた瞬間。猛スピードでベンツが突っ込んできた。

当たる寸前の所で急ブレーキをし、さらに別方向からも来て、識たちは四方ベンツに囲まれた。


ベンツからは男が出てきて、銃を片手に話かけてきた。


「小僧。ずいぶん逃げてくれたな。この件に関わった以上。ここで・・・」


識は銃を向けられる。

その時、空から大きな音が近づいてきた。

バララララとヘリの音であった。

同時にそのヘリからロープが垂らされた。


「そこぉ!!!私の親戚に何をしている!!全員そこを動くなぁ!!」


空に浮いていたヘリから垂らされたロープを伝い、特殊部隊のような集団が降りてきた。手にはマシンガン、体に防弾チョッキを着用していた。




その後、三人は無事に保護され、ベンツの集団は全員逮捕された。

三人はそのヘリに拾われた。

ヘリの中には年配の男性と女性がいた。


「薔薇都おじさん!」


愛歌がそう叫んで薔薇都に抱きついた。


「大きくなったな!愛歌。それに恋美もな!」


はっははは。と笑い。ハグをしていく。そこで識に気づいた。


「君は?」

「桜の友人の中嶋識です。」


すると恋美は識の服の裾を掴み


「恩人・・・、私たちを助けてくれた。」

「そうかそうか!これは何かお礼をしなくてはいけないな!この後結婚式があるのだが、来るかい?」

「いえ、そんな・・・できれば家に帰してください。」

「遠慮するな!さあ来い!」



こうして識は桜の家に連れられた。



そして、恋継も同時に桜の家に到着し、ついに結婚式が始まろうとしていた。


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