24 銀色に舞う刀
雪音の作った大きな壁が爆発し、付近に粉雪が舞い上がる。
粉雪がはれ、二人の姿が見え、爆破の中心地には雪音一人が倒れていた。
いや、たしかに二人いたのだが、雪音が上にかぶさり、桜を爆破の衝撃からかばっていた。
「雪音さん・・・?」
雪音は応えない。
桜は雪音をどかし、雪音の顔を確かめた。
目をつぶったままであった。
「雪音さん?・・・ねえ雪音さん!返事して!雪音さん!」
桜は涙を流しながら必死に雪音を揺らす。だが、雪音は返事をしない。
「うそ・・・。うそでしょ・・・・・。わたしは・・・・また・・・・」
桜の目は大きく開かれひたすら涙をながしていた。
その先で、狼は笑っていた。
「はっは!お仕事一つ完了だぁ!人間!次はテメェだぜ!」
「“黙れ”」
桜はただ一言、それだけを言った。
狼はその一言に圧倒され後ろへと後退させられた。
(な、なんだ?この威圧は?動けないだと!?)
そこから、狼は見た。
桜の身体から発せられる黒い何かを
悪魔・・・鬼・・・・
そのたぐいの像をしたオーラのようなものを見た。
(これが?人間?確かに奴は人間だ。それは間違いない。だがこれは?人間が持つ妖力にしては異常だ。)
「くそおおおお!!!人間!!!!」
狼はやけになり、炎を飛ばした。
何個も何個も
だが、その炎は桜にあたる前に弾けてなくなる。
桜は細く冷たい目を狼へと向ける。
そして、ゆっくりと、狼に口をあけて告げた。
「今、お前をここで殺しても、雪音さんはもどらない。だが・・・」
その一言一言が、狼を威嚇する。
「 “わたしはお前を許さない!!!!” 」
ついに狼はしりもちをついた。
圧倒され、膝の力がなくなった。
そして桜が一歩踏み出したとき、
「・・・くらさん。」
桜の後ろからかすかに声がした。
「雪音さん!」
すぐさま雪音の元にかけより、安否を確かめる。
雪音は生きていた。かすかに息をしている。
「ダメです・・・。そのままでは・・・桜さん・・・。自分を見失わないで」
「わかりました。大丈夫です。ウチはウチのまま戦います。」
桜は立ち上がり、狼を見た。
その時、桜の後ろから太陽が昇り、桜を照らす。
桜の後ろにはさきほどのオーラはなくなっていた。
そして、伽羅女流で店主が言っていたことを思い出した。
望みをかなえる。
そういっていた。
今の願いは・・・・・
「こい!村雨!!!ウチのところにこい!!!」
すると遥か彼方から何かが飛んできた。
村雨である。
桜の手に向けて高速で飛んできた。
その村雨をつかみ、桜はかまえた。
「ウチは殴る蹴るよりも、木刀使うほうが強いよ!」
「人間、お前は不思議なヤローだぜ。」
狼は再び燃え出した。
そこから、青白い炎を飛ばす
桜は木刀をふり、それを真っ二つに切る。
すると、炎は爆発することなく、消えていった。
「これはどうだ!」
次は十個の炎をだし、全部狼の形となり、桜を襲う。
狼は桜を中心に円を描くよう陣を組み、一斉に襲い掛かる。
「どおおぉぉりやあぁ!!」
桜は木刀を高速で振り回し、次々を狼を消す。
桜の周りに青白い炎がちらちらと散る。
「十匹はアンタきついでしょ?」
そのとおり、狼は息遣いが荒くなっていた。
「に・・人間。お前を!」
今度は接近してきた。助走をつけた膝蹴り。
桜はそれを木刀で防御する。
小さな爆発をおこすが、今度怯まない。
狼の爪をしゃがんで避け、そこから顎に向かって木刀を振る。
上手くあたり、狼は上へと飛ぶ。
地面に落ちる前に桜は追撃として横一閃でさらに吹き飛ばす。
すぐに起き上がり、炎を連続で飛ばす。
桜はそれを切ることなく華麗に避けながら近づく
狼は恐れを感じ逃げた。
だが、逃げた先が問題であった。
小屋の近くへと逃げ出した。
「まずい!あそこには氷柱たちが!」
「はっは!その様子だと、小屋の中には人間がいるようだな!なら!」
狼は大きく息を吸い、口をあけようとした。
「させるかあぁぁ!!」
だが、ほぼ同時であった。
狼の吹いた巨大な炎は小屋を燃やした。
そして、桜は狼の頭を木刀で殴り、地面へと叩き落とした。
小屋が燃える。
その瞬間、桜のボロボロになったジャンパーが光った。
「なに!?」
ポケットを突き破り、中から小瓶が出てきた。
以前、修羅山で砂かけババからもらったお守りであった。
小瓶が燃えている小屋へと飛んでいき、中から、考えられないほどの砂が出てきた。
量は莫大な砂であった。
その砂は炎の上へと落ち、火を鎮火した。
「ば・・・か・・・な・・・」
そして狼は気を失った。
その後、小屋の中にいる氷柱たちを確かめたらまったくの無傷であった。
外の戦闘で氷柱たちが起きなかったのは、雪音の張った結界によるためであったらしい。
それを確認して、外へとでると、不思議なことに狼の姿はなかあった。
雪音は心配ないといっていたが、桜はここにいればまた襲われるのではないかと心配だった。
次回、エピローグ編