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雲の上学園生徒会記録  作者: skyofnet
第2章『三月旅行』
22/119

22 その女、笑う

桜たちは遭難し、寒さを凌ぐため小屋の中にいた。


その小屋に着物を着た女性が現れる。

長い髪で顔は確認できない。


(この人・・・妖怪だ・・・。)


桜は経験から感じていた。


開けられたドアから外の吹雪が入ってくる。

いや、その女性本体からも風・吹雪を発しているかもそれない。


女性が動く。それと同時に桜も警戒する。

中へと入る。まず一歩・・・・




「きゃあ!」


ドアにつまづいてドン!と前からモロにこけた。


「いた~い・・」


ムクリと起き上がる。そして口を開く


「さっさささ寒い!寒いでしょ!早くドア閉じましょう!」


女は急いでドアを閉じた。


「あ、暖房つけてくださったのですか。ありがとうございます。」


ペコリと桜に頭を下げた。


「あの、勝手にあがりこんでスミマセン」

「え?ああ、いいですよ。ゆっくりしてください」


女は髪をかき上げ、笑顔になった。

顔はトロンとした目をし、瞳は紫であった。子顔でかわいいといった顔。

どこか、元気がないような顔である。

顔から察するに年齢は少し上か同年齢といったところ


「寒いですね。あ、暖房の近くにいっていいですか?」

「え、どうぞ」


女は暖房の近くに行き暖まる。


「あの、こんな雪山で着物でいるあなたは・・・?」

「私ですか?私は“雪女種”の雪音です。」


妖怪であることが決定した。


「雪女?ってこと」

「そうです。寒い・・・」


雪女のわりに非常に寒がりである。


「雪女種って言ってたけど・・・」

「はい。雪女って言ってもけっこういるんですよ。でも私はその中でも特殊で非常に寒がりなので、こうして暖房がないと辛いんですよ。」

「他の雪女さんはどこにいるの?」

「皆さんもっと奥の山にいますよ。あ、人間の方がいくとあの場所はたぶん凍死しますよ。」


雪女の生態について興味を持ったのかもう少し聞いてみた。


「夏はどうするの?」

「夏はですね、まず冬のうちに洞穴をつくります。で、春くらいですかね、結界を張って洞穴を塞ぎます。いわゆる冬眠ですね。」

「で、雪音さんも?」

「私はずっとここに住んでます。森の精霊と遊んでいます。」

「・・・だれ?」

「夏になると出るんですよ。」


どうやら桜の常識はこの一日でずいぶんと更新されそうである。


「えっと・・・お名前・・・」

「ああ、ごめんなさい。まだウチの自己紹介まだでしたね。東海林桜です。」

「雪音です。よろしくおねがいします」


こうして握手をした。

その手を触り桜は手を急に引っ込めた。


「あ、ごめんなさい」


すると雪音は急に暗い顔となり、目が虚ろになった。


「いえ、ごめんなさい。私、雪女ですから・・・迷惑かけてごめんなさい」


すると急に室内の温度が急低下した。0℃より下であろう


「ささ・・・さ・・寒・・・い」

「ごめんなさいごめんなさい・・・・・・・・・・・・・」

「だ・・・だ・・だ・・大丈夫・・ですよ」

「本当ですか?私・・ご迷惑・・・」

「気に・・しません」


今度はパァッと明るい顔になり、室内温度も元に戻った。

どうやら気分で周りの温度を変化させてしまうらしい。




「桜さん?」

「はい?」


雪音が桜の顔を覗き込むように見た。

ちょっとかわいかったので少し桜は頬を赤くし


「な、なんです?」

「昔、妖怪と会ってます?」

「・・・いえ、会ってませんよ。」

「本当ですか?」


じりじりと顔を近づける。


「そうですか。」


ちょっと残念そうに顔を離していった。


「そうですか・・・。急にごめんなさい。私たち妖怪には妖力というものがあるんですけど、人間でも持っている人はいるんですよ。」

「妖力ってあるとどんなことができるんですか?」

「そうですね。私たちにも詳しくはわかりませんが、私の場合、吹雪を起こしたり、氷柱を飛ばしたりできます。」

「へー。なるほど。」

「私の兄ですと、氷をまとうことができます。私と違って、兄や父や母はちゃんとした雪種族ですから。でも、私はあまり妖力がないし、寒さに弱いし、グズだし・・・・だし・・・だし・・・」


再び、室内の温度が氷点下に突入した。


「ゆゆゆ!雪音さん!大丈夫ですから!雪音さんもいいとこありますよ!氷柱を飛ばせるなんて、夏にはカキ氷食べ放題じゃないですか!」

「え!本当ですか!私役に立てるんですか!」


室内温度は再び元に戻った。


桜は先ほどから気になっていたものがあった。天井の氷柱である。あぶん雪音さんが落ち込んだときにできたのだろう。


「私、家族がいるんですけど、一緒に暮らせないんです。寒がりなんで。それどころか、雪種族の恥さらしって、勘当されてしまって。でも今は楽しく暮らしてますよ。」


桜は気づいた。雪音が笑顔になってもどこかさびしそうな顔が残っていたわけを。

彼女はいつも一人である。

夏は森の精霊とやらと遊んでいる。

だが、冬は?


「雪音さん。さっきはどこまで行ってたの」


その質問をすると体をビクッとさせた。


「えっと、その、そう川に芝刈りに」

「それは山ですよ。」

「え・・・そっそうですね。山です!山に芝を・・刈に。」


しばらくお互い沈黙してしまった。


「桜さん。明日・・・朝一番にここを離れてください。」

「え?そのつもりだけど?」

「そうですか。よかったです。ではもう寝ましょう。」


そう言うと、雪音は部屋の明かりを消して絨毯の上で寝てしまった。

桜は何か聞いてはいけないことを聞いてしまったという罪悪感を抱えていた。







午前五時。

キイッと音がなった。

人よりも五感が優れている桜はその音で目が覚めて、ドアを見た。


雪音が外へと出た。


「雪音さん?」


雪音は応えず部屋を出て行った。

桜は気になったが、桜は妖怪に関する用事なのかな、と思い特に気にしないでおこうと思った。


だが、


(ッ!!!殺気!!!)


桜は昔の戦闘訓練により、殺気を感じるくらいはできるようだ。


桜は雪音を追いかけた。

ドアを開けたとき、七海が起きてしまった。


「・・・桜?どうした?」


外は何か危険な感じがする。七海には寝てもらわないと困る。


「便所。」

「・・下品。」


そう言い、また七海は寝てしまった。


今度こそ、ドアを出て、雪音を追いかけた。


外は当たり前だが暗い。月の光が唯一の明かりである。

外の吹雪は止んでいたため、よく見えた。


小屋の少し先に雪音が立っていた。

こちらに背を向けた状態で、何かを見ているようだ。


その視線の先、大きな影が立っていた。





次回予告

茜「こんにちは。茜です。」

黒井「黒井です。いいんですか?僕ら本編に出てないのにこんなことやって」

茜「桜たちは忙しいので私たちがやりましょう。」

黒井「そうですか。では何をします?」

茜「そうですね。実際やることないので、次章予告しましょうか」

黒井「お嬢に内緒でいいんですか?」

茜「かまいませんよ。さて、次章は“東海林家の一族”ですよ。でもこの章はまだ続きますよ。」


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