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雲の上学園生徒会記録  作者: skyofnet
第2章『三月旅行』
21/119

21 極寒の遭難

その日の晩。

「あ、木刀返さなかったの?」


桜は“妖刀・村雨”を七海に見せていた。


「それがさぁ・・・」



時を遡ること、エヴァとの対戦後、木刀を返しに行った時。


「木刀か?それがだな・・・。ちょっと木刀を俺に貸してみろ」


店主が木刀を持つ。


ジュウウウゥゥ!!!!!


「ぎゃああぁぁあぁぁっぁ!!!」


木刀から発した高熱により店主は木刀をはなした。

店主の手には木刀の後の火傷がクッキリと残っていた。


「こういうわけだ。つまり」


店主は桜をビシッと指す。


「この“妖刀・村雨”はお前を主人として認めた。他の者が触るとこうなる。」

「え・・・・つまり・・・?」

「お前が面倒みろ。やる。」



というわけだが、七海には店主にもらったとしか言わなかった。


それと店主はもう一つこう言っていた。


「この村雨は願えば主人の想いに応えるそうだ」

「はい?」

「一応覚えておけ。」


桜は特に深くは考えなかった。



風呂

ここのホテルは露天風呂がある。


「ふぃ~~~。生き返ったって感じだね~~~」

「ごもっとも~~~」

「はあぁ~~~」


桜たち三人は露天風呂に浸かっていた。


「氷柱も来ればよかったのに。」

「本当だよ~」


氷柱も誘ったのだが、用事があるとかで断られたのである。


一方その風呂の壁を隔てた一枚向こう。つまり男風呂


「中嶋君・・?何をしてるの?」


男子Aは識に言った。


「何ってお決まりだろ。なあ?」

「その通りだ!」


識と男子Bは言った。

二人はいわゆる覗きをしようとしていた。


「これはな、やらなきゃ女性にむしろ失礼だぜ。なぁB」

「まったくだ!」


男女を隔てている壁を必死に調べ、どこかに穴がないか調べている。

壁は竹製なのでもしかしたらと思っていた。


「このクソ寒いのによくやるな」


当然露天風呂の外は雪が積もっている。それを気にすることなく識は覗き穴探しに没頭していた。


「あった。」


識は小さい声でBに告げた。さっそく穴を覗く。


「湯煙で・・・見えないな・・?」


小さい穴を目を細め必死に見る。

すると、先ほどまであっち側の湯煙が見えたが急に真っ暗になった。


「?」


なんだこれは?と思った。おそらくあちら側から塞がれたか。ならば


「Bよ。こうなったら特攻するしかない!」

「同志よ!よく言った!」

「死ならばもろとも!!!」


竹の上を手で掴み、顔を上へと上げる。

その瞬間


「・・・・・」

「・・・・・」


向こうに人影。すごい近距離なので直ぐにその人物が誰なのかわかった。

桜であった。


「「何してんの」」


声がハモった。


「「・・・・・」」


再び沈黙になる。


「「穴塞いだのおあなたか?」」

「なんでお前が覗きをする?」

「いやノリ」


カポン・・・・

その晩も雪がパラパラと降っていた。





翌日、午前中は雲の上生徒全員で、北海道の旭山動物園に行くなど、クラスのグループ行動をした。


ここでのアクションはないので午後に飛ばす。



午後、は自由行動だったので、皆はスキーをしていた。


「氷柱?大丈夫?」

「ええ・・・大丈夫よ。」


氷柱はちょっとフラフラとしていた。

そのせいで今日は数回リフト乗り場でトラブルを起こしリフトを停止させた。


「リフトから落ちなかったからよかったけど・・・、なんで頂上まで来たかったの?こんなに吹雪いてるのに・・・」


今は、氷柱の要求で頂上まで来ていた。


「もう一回、頂上の風景を見たかったのよ。たぶん・・・もうしばらくは雪山なんてこれないから。」

「そう・・・」


氷柱は身体が弱いのでそう何度も雪山にはこれない。今回は事前に様々な準備をし、身体の調整をしてきたので来れた。


「じゃあ、今日はちょっと吹雪いてるけど、また写真を撮ろう!」

「いいねぇ~」

「よし、じゃあまた桜!こけろ!」

「いやに決まってんでしょ!」


桜を省いた三人は並んで待っていた。

風景の都合で少し危ない場所に立っていた。

少し後ろへ足を踏み外せば落下してかなり麓までノンストップで滑り落ちてしまうであろう崖があった。

落ちないようにするためのポールは昨日誰かに壊されたのかそこにはなかった。


「いくよ~!はい!」


桜は走る。


「うわっ」


またこけた。


タイマー機能のついたカメラがカシャッと鳴った。

その時、


「っ・・・・」


全員がカメラレンズを見ていたのでしばらく反応できなかった。

氷柱が後ろへ倒れる。

それに一番最初に気がついたのは隣にいた七海であった。

氷柱の手を掴むが、支えきれない。

七海も落下。

その七海の足を南が掴む。だが、二人分の重さを引っ張ることはできず、一瞬で落下。


桜は起き上がったとき、南が落下するところを見た。


「っ!!!間に合わない!!!」


今からでは、間に合わない。そう直感した。

だから、引き上げることより、怪我をさせないことを考えた。


目の前にボードが二つあった。

それを片手に一本ずつ持ち、一本を崖になげ、一本は手に抱え桜も落下する。



桜が見たのは、氷柱を先頭に三人で落下する姿。雪はカチカチに凍っており、勢いよく滑る。

少し行くと、雪からはみ出た石などが見える。

このまま行くと氷柱は石に衝突する、そう察知した。

桜は低姿勢になり、なるべく空気抵抗をなくし速度を上げた。

七海のいる位置にまでつく。


「ナナ!これ使って南をぉ!」

「ぅわかったぁ!」


七海は桜からボードをとり即座に装着。南を背負う。

同時に桜は氷柱を掴み、ポンっと上へ投げ、後ろへ背負う。


「危な!」


石を避けるように飛ぶ。さらに飛ぶ。そして石を避けるように回る。


そのまま二人は石を避けながら、崖ななので止まることができず、急降下していった。






雪が吹雪いている。

桜たちは崖を登ることはできず、迂回してホテルへといこうと考えていた。

だが、氷柱と南は気を失っており移動はどうしても時間がかかる。


午後4時過ぎ。雪山はこの時間寒さが厳しくなる。

しかも、吹雪、そして霧まで出てきた。

いわゆる“ホワイト・アウト”


周りが真っ白、3メートル先くらいしか道を確認できない。


「これは・・・」


桜は焦っていた。

自分は昔の経験により、この寒さをしのげる。

だが、他の三人、特に氷柱は危険である。身体が弱い氷柱がこれ以上体温が低下すると命が危ない。

かぶっている帽子が凍ってきた。


ビバークをするか?

ダメだ。緩やかな斜面しかないから、雪を掘ることはできない。


先ほどから、七海のペースが遅れている。

当然だ。桜と違い、七海は元々体力はない。それなのに南を背負っている。



すると、先に何かが見えた。


小屋がある。


「ナナ!小屋がある!」


七海はしゃべらず、桜が指を指した方向を見ただけであった。


そして小屋へと入った。



中は予想以上にしっかりとしていた。

寒さをしのげるのはもちろん、暖房設備、絨毯、毛布まであった。


氷柱と南を絨毯の上で毛布にくるませた。


暖房は古い者だった。薪をいれるタイプである。

桜は木をこすり火をつけた。


「こっちには缶があったよ!」


七海は台所の引き出しから缶詰があった。

それを食べながら、二人でこれからのことを話し合った。


「桜。これからどうする?」

「まず、今晩はここで休もう。暖房も毛布もあるし。翌朝。太陽が出たらここをでよう。」

「わかった。アタシもちょっと・・・疲れた・・・から、寝る。」


そのまま、七海は深い眠りに入った。

桜はまだ、寝ようとしなかった。


「生活するための物はある。けど生活観がまったくない。」


物はある。だが、暮らしている物がない。

おそらく定期的に誰かが使っているのだろうと思った。


ここで、待っていればそのうち誰か来るか?

いや、それは期待できない。いつになるか?


そんなことを考えていると、


「?誰か・・・来る?」


その瞬間、ドアが勢いよく開かれた。


そとの吹雪が外から中へと流れ込んでくる。

桜はその寒さを忘れるほど、そこにいる女性に夢中だった。


そして、そこには女性が立ってた。

薄い青の長い髪の女性

白い着物を着ている。


こんな場所にこのような格好。


人間ではない。


(そうか、)


桜は経験からわかった。


(この人は・・・・、妖怪か・・・・)


桜は再び、人ではない・・・妖怪と対面するのであった。




次回 『その女、笑う』

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