20 雪を駆ける(後編)
エヴァは建物の上から上へと飛ぶ。
靴は対雪用の滑らない靴を履いていたため、跳ねることができる。
しばらくして止まり、あたりを見渡した。
「来ねえ・・・か・・。」
そう言い、ポケットにしまったシュガースティックを口に加えると
「とおおぉりや!」
エヴァの後ろから影が一つ。
当然桜であった。木刀を構えた格好でエヴァの背後をとり、斬撃を一閃。
「甘めぇ!」
とっさに察知し、エヴァは前転をし避けた。そのまま、額へ向け銃を発砲。出たのはBB弾のような丸い物であったが、電気を帯びている。
桜はそれを見た。頭を後ろへと折り、ギリギリで避ける。
そのまま、バク転。
お互い、顔を合わせる。
「驚いた。今の一発で、マグロ状態にするつもりだった。」
「マグロ?はよくわからないけど、あまり舐めているとタンコブじゃ済まないよ」
エヴァは後ろへ飛び屋根上から落ちる。
そのまま開いた窓から民家の中へと入る。
桜も追いかける。
その民家は無人で、かなり荒らされている部屋であり、生活感がまるでなかった。
その静かな感じ。桜は耳を澄ました。
・・・・
・・
・
僅かな洋服の擦れる音がした。
「そこか!」
近くにあった椅子を投げ飛ばした。
すると反対方向から影が飛び出した。
「それはオトリだよ!クソが!」
カモフラージュしていた毛布を盾にし、飛びながら銃を構え、発砲した。
「んなこと、わかっているよ!」
飛んできた弾丸を左手で持っていた木刀で上へと弾き飛ばす。
さらに右手に持っていた雪球を飛ばす。
「ちっ!」
エヴァは持っていた毛布を盾にし、雪球を弾く。だが、目を隠さず、桜を見続ける。
「思ったより、できるじゃねえか!楽しくなってきたよ!」
「ウチも同感!久しぶりだよ!こんな刺激的なのはっ!」
エヴァは外へと跳躍。
桜もそれを追い外へと出る。
その後、エヴァが逃げながら打つ。桜が避ける。の連続であった。
そして時間もあと少しとなった。
(このままじゃ、時間切れになる!雪の上での追いかけっこじゃ、ホームグランドであるあっちに部がある)
先ほどから追ってはいるが、向こうがこちらと戦うためにわざと少し遅く動いている感じがしていた。
(できるか?あれを・・・?)
エヴァはわざとらしく時計台の天辺屋根へと立つ。
「さあ~~?どうするもう時間がないぜぇ~?どうすんだぁ~?」
桜は無言でエヴァの直線上に立つ。
腕をだらりと下げている。木刀を逆手に構える。指は木刀の下を掴む。
「なんだ?降参のポーズか?じゃあな」
エヴァは打つ。
その発砲を凝視していた桜は球の軌道を読む。
目を見開く。
前へと進み球を避けつつ右足を軸に回転する。
一周したところで、逆手に持っていた木刀を投げる。
あまりにも素早い動きだったのでエヴァは反応できなかった
その木刀はエヴァの銃を弾く。
エヴァの右手が衝撃で後ろへ跳ねる。
体勢をくずした瞬間を見逃さなかった。
一気に間合いをつめる。
首にかかっているリングに手を伸ばす。
だが、エヴァは笑いながら
「アタシは二丁銃なんだよっ!!!」
隠していた銃を取り出した。発砲。
それの球を腹へあたる直前右手のひらでかばう。
そして、桜は少しよろめいた。
「スタン弾だよ!!痺れは全身にくる!!お前は終わりだぁ!!」
「残念。“ゴム手袋”だよ」
桜は手のひらを見せ、掴んだ球をパッと落とした。
「き、汚ね!」
「うりやあぁぁ!」
桜はリングをとった。
その瞬間、時計台が鳴った。
ゴォーーーーン、ゴォーーーーン。
ウチの勝ち!と言わんばかりのポーズ。高々と拳を上げた。
「ふざけんなぁ!!」
桜はエヴァに殴られた。
「ゴム手袋だと!反則だろテメー!!」
ゴン!
「あの倉庫にあったんだからいいだろ!」
バシ!
「はぁ、武器二種類とかおかしいだろ!」
ゴス!
「あんたも武器二個!隠していたでしょ!」
ドス!
言葉をいうたびにお互い殴りあっていた。
この殴り合いは店主が止めるまで続いていた。
「いやあ~~、エヴァが負けるとはな!」
「じゃあ、キャラメルちょうだい」
「しょうがねぇ。」
桜は10ダースほど買った。
「おい猿!今回はたまたまゴム手袋があったから勝てたんだ。覚えてろ猿」
「このメスゴリラ。負け惜しみいわない!あと顔はれた!」
桜たちは店を後にした。
「あれ?桜?その木刀いいの?」
桜は借りていた木刀を所持したままであった。
「あ、どうしよ?」
「桜ちゃん。どろぼー?」
「いけない子ね。」
「わかったって。返してくるよ。」
次回雪山編本編