19 雪を駆ける(前編)
桜たちは“ウルトラキャラメル”を買うため伽羅女流という店にいる。
「で、買うために試練をクリアしろって?」
「そうだ。これは非常に貴重なものだ。10ダースだと?ふざけんな。欲しいならそれなりに条件を満たしてもらう」
「キャラメルでも作れっていうの?」
「いや、違う。おもしれーことをしてもらう。おいエヴァ!」
店主は大声で呼んだ。すると奥から一人でてきた。
「んだよ。でけー声だすな、ここの機械でミンチにすんぞ」
出てきたのは長い金髪をし、目にはサングラスをかけたアメリカ系女性。
シュガースティックを加えながら、肩にヘッドホンをかけている。
見かけは綺麗な女性であるが、言葉使いはかなり下品。
「エヴァ、別報酬の仕事だ。例のアレやんぞ。」
「アレか・・・。誰がやんだ?」
「そこの・・・オレンジの髪だ」
“オレンジ髪”とは桜のことであった。
ペチャだと南を指すことにもなるので言わなかった。
「な・る・ほ・ど?」
エヴァは桜を下から上へと舐めるように見た。
おそらく体系などを確認していたのだろう。
「猿か」
「だぁれがぁ猿だぁ!!」
猿と言われた桜は顔を真っ赤にし、反撃した。
「これ見えるか?」
エヴァは大きなわっか型のペンダントを見せた。
「一時間。それまでにこれをアタシからとりな」
「奪えってこと?」
「奪うなら何してもいい。ここにある小道具でも使え」
そう言うとガラットと引き戸を開けた。
中には弓矢、拳銃、槍、薙、木刀があった。
「これって、本物?」
「偽者だ、カス。本物だったら銃刀法違反でお縄だ。とはいえ今から街中でこれを振り回してもらうわけだがな」
「ちょ!それって」
「街のイベントだ。警官含め、住人は協力してくれる。いくぞ」
どうやら今から外へ出て街を使ったリングの取り試合をするようだ。
「住人はこのイベントを楽しみにしてんだ」
「このタコが言うとおりだ。ライブ中継もされる。準備しろ、10分後にスタートだ」
そういうと、エヴァは拳銃をとった。
「スタン弾だ。あたれば痺れる。まぁ一時間は痺れがとれないだろうな」
「まったく・・・。じゃあウチは・・・」
選んでいると、エヴァはとっとと外へ出ていってしまった。
「ちょっと、ウチの武器見なくていいの?」
「テメーが何を選ぼうがアタシは負けねえ。それだけだ。」
「絶対に負かす。」
桜は倉庫を漁っていると、ふと目につくものを発見した。
「これは?何?」
桜は木刀をとった。
その木刀をみた店主は驚いた。
「おい、それは辞めとけ。危ねえから」
「?なんで?」
「信じねえと思うが、いわゆる妖刀“村雨”だ」
桜以外の三人は胡散臭そうに店主を見た。
だが、桜はまじまじと刀を見た。
「うん、何かわかる。重い?いや凄みがある?」
「信じんのか?こんな妖怪じみた話。」
「まあね」
「まあ、桜が妖怪じみた人間だからね。」
「ちょっと!」
そして桜はその木刀“村雨”を選んだ。
時間になった。
外に出ると、外出している人物は誰一人いなかった。
これからおきることのため、巻き添えを食らうのは、ゴメンと言ったところだろう。
遥か先にあった時計台の上にエヴァが立っていた。
「おい、猿!今からスタートだ!一時間後にここの時計台の金がなったら終わりだ!」
そう言い、エヴァは消えていった。
街のいたるところにはカメラが設置しており、住人に見られているようだった。
こうして二人の雪を駆ける戦いが始まった。