15 エア・バトル
待機時間が終わり、一年生一同は飛行機の自分の席に着座していた。
飛行機の座る場所はクラスごとではなく自由である。
桜たちは飛行機の三列にわかれている椅子の真ん中。
そこには椅子が四つある。
桜、氷柱、七海、南がそれぞれ座った。
その後ろに識、間宮が座っている。
ちなみに生徒会席というわけではない。
「こっからだいたい二時間ってとこかな?」
「そうね、国内線だから、ビデオとかないのが残念って顔してるわ」
「えっ!?顔に出てた?」
「南、お菓子ちょうだい!」
「あっ!これは宿についたら食べるコ〇ラのマーチなのにぃ・・・」
「北海道限定のがあったら買ってあげるから」
「ううぅ・・約束だよぉ。七海ちゃんのことだから、勝負にかったら買ってあげるとかいいだすんじゃないかな?」
「うっ・・・。そんな悪いことはしないって」
その後ろの席で識は震えていた。
間宮はうざったいと思っていたが、十分間ずっと震えていたのでいい加減、聞いてみた。
「どうした中嶋」
識はうつろな目をし、か細い小さな声で答えた。
「ひ、ひ、ひ、飛行機は鉄の固まりだ。こんな大きな鉄が浮くわけない浮く分けない浮く分けない・・・」
「・・・・・」
このまま放置しようかと思ったが、震え+ブツブツと呟き始めたので、鞄からあるものをとりだす。
「中嶋、今の飛行機はそう簡単に落ちない。99%落ちない。」
「百回あったら一回落ちる・・・。今がその一回かもしれない」
「もうウザイからこれを飲め、気が楽になる。」
白い錠剤を識に渡した。
「これは睡眠薬だ。二時間だけ眠るよう調整してある。」
「本当か?じゃあこれを・・・」
その時、
「は、は、ハクショイ!」
識はタイミング悪く、くしゃみをしてしまい、受け取った錠剤をとなりの席へ飛ばしてしまった。
「やべ!取りに行かないと!」
その時、ポォンと音が鳴り、席で閉めていた安全ベルトが固定されてしまった。
「ととととととれねぇぇ。つつつつかもう離陸すんのかぁ!?すまんもう一錠くれ!」
「残念だが、錠剤はあれで最後の一錠だ」
「落ちる落ちる落ちる空が落ちる」
「・・・空は落ちない」
「お客様申し訳ございませんが、離陸しますので座席に・・・・」
「ここここここれが落ち着いてっ!」
識はいきなり頭をカクンと下へおろした。
というより気絶をした。
となりで間宮が手刀で識を打ったようだ。
「すみません」
「・・・・え~っと・・・」
さすがにスチュワーデスも今の光景には困惑していた。
そして飛行機が離陸を開始した。
おおよそ機体が斜め45°のとき、識は目を覚ました。
「ん・・・俺はたしか・・・・っっ!!」
目を覚ましたかと思えば、飛行機の傾きを感じ、ショックでまた気絶をした。
「何か後ろがうるさいな」
七海がチラリと後ろを向いた。七海の席の後ろは識や間宮ではなく別の人が座っていた。
「倉田さん?なんかあったの?」
「いえ、何もありませんよ。ね、村瀬さん?」
「はい、いたっていつも通りですよ」
また新キャラである。
“倉田”は一年G組の生徒である。
顔がかなり老けており60代に間違われる。
髪は白い。
ちなみに杖は必要ないのだがなぜか持っている。
“村瀬”は倉田の専属メイドである。一年G組の生徒である。
倉田とは違い若い容姿をしているが20代のような落ち着きをしているため、年齢を間違われる。そのたびに怒る。
長く綺麗な黒髪を持っている。顔は常にトロンとしたような顔をしている。
「いつも通り、間宮さんが識くんをボコっただけですよ。」
「それがいつも通り!?」
機内放送で、立ち上がり自由となり、何人かはトイレに行ったり、飲み物をもらいに席を立った。
桜たち4人は席に座ったままであった。
「暇だね」
「暇ね」
「暇だ」
「暇だねぇ~」
上から。桜、氷柱、七海、南である。
桜は席の前にあるモニターを隣にあるリモコンでいろいろいじっていた。
「あ、これ4人で対戦できるゲームがあるよ!」
「じゃあ、ゲームって苦手だけど、やろうかしら。」
「お!いいね!やろうやろう!」
「やっちゃおう!」
桜が選んだゲームは、“ポリオレース”というこの世界では大ヒットゲームである。
このゲームは何度か生徒会のメンバーでやったことがあるので選んだ。
4人はそれぞれキャラクターを選んだ。
桜・ポリオ(ノーマルタイプ)
氷柱・桃姫
七海・パック(パワータイプ)
南・ヨッシャー(スピードタイプ)
4人のみのプレイヤーのみの対戦である。
コースはシンプルなポリオサーキットを選ぶ。
このコースは∞の字をしたコースである。
画面で赤黄青とランプが光り、それぞれスタートした。
先に前へ出たのは、ポリオを使う桜である。
桜はこのゲームではかなりの勝率を誇る。当然スタートダッシュを使う。
その桜の少し後ろにいるのはパックこと七海。
七海もスタートダッシュを成功し、桜に並ぶが、キャラクターの性能の関係上、桜より少し遅れた。
氷柱の桃姫と、南ヨッシャーはスタートダッシュができず、ほぼ同じ位置にいる。
最初のアイテムポイントに桜がつく。
上位のキャラクターは大抵、あまり強力なアイテムが出ない。
桜がとったのは“スカ”であった。
この“スカ”とは名前どおり、はずれである。何もとらないと同じである。
「スカかぁ。まぁ一位だしこんなもんか」
七海がアイテムをとる。
“ロケット”をとった。
これは前の相手をスリップさせる道具である。
画面でうまく操作し、相手に打つアイテムであるが、まっすぐにしか飛ばない。
「くらえ!桜!」
「見える!」
パック(七海)の打ったロケットは、ポリオ(桜)の右を過ぎさった。
「見える、私にも敵が見える!」
「キャラクターが赤いからって3倍にはならんぞ!」
その後ろで、ヨッシャー(南)はアイテム“ミサイル”をとった。
“ミサイル”は前の相手をロックオンし、確実に相手をスリップさせる。
ヨッシャー(南)の前であるパックに向け発射!命中!
「ごめんね、七海ちゃん♪」
「南か!やったな!」
その間もポリオ(桜)は一人距離を広げる。
「ふふふ、そうやって足を引っ張っていたまえ。やってやる・・やってやるぞ。シャ○少佐だって・・」
「言ってることはよくわからないけど、桜。ごめんなさいね」
今まで沈黙を続けていた桃姫(氷柱)が動いた。アイテム“ホーミングミサイル”を使う。
これは選択した順位の相手をロックオンし、発射する。
スリップ時間が長いのも特徴。
「くっ!氷柱!?」
スリップをし、4人はほぼ同じ位置に並んだ。
ここで七海が口を空けた。
「ねぇ、これ罰ゲームつけない?」
「罰ゲーム?」
「まったく七海は好きだよね、そういうの。」
「で、罰ゲームは 1位の人は他の人になんでも一つずつ命令できる。」
「お!いいねそれでやろう。」
まず、三人の思考・・・・
(((これで氷柱に命令できる!)))
氷柱の思考
(また脅迫のネタが増える!)
そして四人の思考は一つになる・・・・
((((絶対に負けられない!!))))
こうして飛行機の中、火花散る白熱したバトルの火蓋が切って落とされた。
次回予告
桜「ども!」
氷柱「こんばんは、かしら?」
桜「すぐに北海道スキー編をやりたかったんだけど、ゲーム編が意外と長くなっちゃって・・・」
氷柱「そうね、こんな話間にちょっとやるつもりが、次回に続くなんてね」
桜「そういうことで、次回は決着編!誰が勝利者となるのかお楽しみに!」
氷柱「それと、次回は倉田さんと村瀬さんよ」