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雲の上学園生徒会記録  作者: skyofnet
第8章『楽園は過去の傷と共に』
113/119

113 識の過去

中嶋識は両親というものを知らない。


物心がついた時には、『ナナシ』の戦士として訓練を積まされ実践に投入されていた。


親はどこかで死んで、自分は隊長に引き取られたのだろうと思い込んでいた。

だから識は自分の本当の歳は知らない。


そのことに対して不満はなかった。



『ナナシ』

識は全てを聞かされたわけではないが、おおよそのことは把握している。

メンバーは『A』〜『Y』のどれかにちなんだコードネーム。いわば名前を隊長から与えられる。

ちなみに『A』だからといって古株とか力関係がどうとかはない。


識は『F』、『フォックス』と名付けられた。


メンバーは決して多くない。

アルファベットの半分も埋まってはいないらしい。


メンバーは隊長の指示で作戦へ赴く。主に暗殺、工作など裏稼業である。


当時の

識は作戦に対して何も感じず、ただ無感情で作戦を遂行していた。

つまり、何も思わず人を殺していた。




ある日、

「おい、フォックス聞いたか!」


現在拠点にしている基地でデルタがならなれしく抱きついてきた。

デルタは年も近い(と思う。)ので仲良くしている。


「次の作戦から新人が入団するってよ!」

「新人?隊長のスカウトか?」

「ああ!なんでも俺らとはまた違ったヤツらしいぜ!」


識…いや、フォックスは流し聞きをしながら銃の手入れをしている。


「あん、それは頼もしいわぁ〜。」


エコーだ。パーフェクトボディーの持つ女と、本人が常に言っている。


「俺もブラボーから聞いた。」


どこからかオスカーが出てきた。


「ブラボー曰く、人差し指と中指を上げるだけで街一つ消し飛ばす力を持った奴らしい。」

「あん、ブラボーから聞いたの〜…」


『ブラボー』とは『B』の称号を持つ男である。


「なぁ、ブラボーの言うことって…」

「ああ、殆どが嘘だ。」


オスカーはそんな嘘にまったく気づかず、いいオモチャにされている。


「あはっ♩いたか貴様ら♩」

「ブラボー。」


漆黒のスーツ、いや喪服を来た男が現れた。

識も含め、この人物を苦手としている人物は多かった


「オスカーを騙すのやめろよ。」

「あはっ♩騙される方が馬鹿なんだ♩」

「ブラボーッ!貴様ぁ!」


オスカーは短気だ。

それを知って、いつもブラボーは嘘をつく。

そして、オスカーに対する対処も心得ている。


殴りかかるオスカーに対し、一瞬払うかのような動作をする。

すると、『見えない力』に飛ばされ壁へと叩きつけられる。


「だからさぁ〜、オスカーちゃん。力ねぇのに俺に挑むなんてダメダメぇ。さて、本題だ。」


壁にめりこんだオスカーを放っておいて話し始める。


「ウチにあらたな隊員が入る。入れ。」


現れたのは識達よりも幼い少女。

目は虚ろで人形のように無表情を変えない。


「コードネームは『リマ』だ♩隊長によると索敵能力に優れてるらしい。後は仲良くしろよ。あ、あとフォックス。」

「なんだよ。」

「お前が面倒見ろ。」

「はぁ?女だろ?エコーが…」


と、エコーを見ると、何時の間にかエコーを含めデルタも消えていた。


「あのヤロー!」




新団員リマ

彼女は付近一帯の人の位置を完璧に探知できるようだ。

それからの作戦はリマの情報を元に行うことが増えた。


識は人の世話というのを始めて行った。ちなみに世話というのは…


「おいリマ、口開けろ。食えないだろ。」


ほぼ介護に等しかった。

リマは感情がないためか、自分自身で行動をしない。

喋るときも、単語しか言わない。


しかし、リマの世話をしてしばらく時が経ち、ある『感情』が生まれてきた。


今までは、言われるがまま無感情に人を殺していた識に『情』や『やさしさ』が生まれ始め、それは作戦にも影響を及ぼし始めていた。




とあるアジトの最深部

「隊長。」

「…」


話をしているのは、全身に包帯を巻きコートを着ている男、Aの称号を持つ『エイス』。

そして聞いているのは、隊長である。


「フォックスの件ですが、明らかに迷いが生じています。リマと接し優しやを覚えたことで、敵に対して非情になりきれなくなっております。」

「…」


隊長は報告に対して何も言わない。


「兼ねてからの作戦を実行しますが、よろしいですね?」

「…」


それは肯定を意味していた。




旧市街地による反政府組織殲滅作戦。

それが今回与えられた任務であった。


作戦には、フォックス、オスカー、デルタ、エコー、キュー、リマの六人であたる。


リマは主に通信で敵の位置を仲間に伝えるが、探知距離は通常半径五キロなので作戦区域にいなくてはならない。

そのリマを護衛するのがキュー。

他の者が作戦の実行部隊となるのがリマが入ってからの陣形である。

今回も同じであった。



「では、行くぞ。」


作戦拠点とした場所でミーティングを終えた一行。これから持ち場に移動する時、


「フォックス…。」


リマに声をかけられた。

一同は驚いた。

何せリマが人を名前付きで呼ぶことなど初めてであった。

当の識も驚いていた。


「な、なんだ?」

「…いってらっしゃい。」


まさかの言葉だった。

リマからそんな言葉が出るなんて、夢にも思わなかった。

そして、何より嬉しかった。


「ああ、行ってきます。」



作戦は長期に及んだ。日をまたぐことはなかったが、敵の人数が多かったことと、途中でアクシデントが起きたためだ。

通信障害が起きた。

リマからの援護がなくなったが、作戦は終盤のことだったので、その場で原因の究明はしなかった。強い雨が降っていたのでそのせいだろうと軽く思っていた。




「なんだ…これ…」

「…ひどい。」

「くっ…」

「…」


作戦拠点に戻ると作戦前とは違った状況となっていた。



リマが死んでいた。



明らかに他殺であり、胸に弾痕があった。護衛でいたキューも、殺されていた。

フォックスは何も言えなかった。何も考えることができなかった。

ただ、自分の頬を伝っているのが、雨なのか涙なのかわからなかった。


死でないたことがなかったから。



その時、隣の部屋から音がした。

瞬間、フォックスは跳ねるように駆け出した。


「ダメ!罠よフォックス!」


エコーが後を追うが、フォックスが通り過ぎた道で爆発が起こった。

瓦礫が崩れ、道を塞いでしまった。



「誰だっ!」


黒いレインコートを着た人物がいた。手には拳銃。恐らく犯人だ。

フォックスに気づかれるなり、その場から逃げ出した。


犯人を追い、廃ビルの地下から繋がる地下水路の明かりが強い場所へと来たところで犯人は止まった。


ゆっくりどフォックスへと振り向く。


「…ッ!!お前はっ!!」


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