11 あなたに捧ぐ美しき花・焉
桜と間宮と熊に担がれた識は、老婆につれられ小さな小屋についた。
「じじいー!ムソウのじじいー!おらんのかー?」
老婆が大声でムソウを呼ぶが、なかなか返事が返ってこない。
「じじい!じじいーー!…薪でもとりにいったか?」
すると後ろから声が聞こえた。
「砂かけのババじゃねえか。久しぶりじゃねえか」
「じじい、いたのか。タマ、あいさつしな」
熊はこくりと頭をおろしてあいさつをした。熊なのに…
「おお!タマ!しばらく見ないうちに3センチくらい大きくなったな。」
「それと、じじい。このボーヤなんだが、どうもタマとやりあっちまったようだ。手当てしてやっておくれ」
「タマと?バカか?こんな3mの熊とケンカするバカがまだいるとはな。よし部屋につれてこい」
桜たちは言われるがまま、ムソウに小屋の中へと案内された。
このムソウという人物は、体つきがよく・白髪・白髭・着物といった仙人のような容姿である。
老婆は着物を着用し、ながい灰色髪の持ち主である。
小屋のなかで、識はムソウに手当てをされた。
熊にひっかかれた傷口になにかすっごく染みる薬を塗られていた。
「ぎやややぁぁあぁ」
「騒ぐな!!!」
ゴンッと殴られた。
「良薬、口に苦しというじゃろ。三時間もすれば傷口が完治するからしばらくじっとしとれ」
話が終わったところで、桜が本題に移る。
「あの~、ウチら氷柱に頼まれたて花を取りに着たんですが」
「おお、伝書鳩から手紙がきとったぞ。そこの二人、ついてこい。花のとこまで案内してやる」
識を置いて桜と間宮はムソウの案内する花畑へといった。
案内された花畑は小屋から軽く十分歩いた場所にあった。
木々が並んでいてまったく道とは呼べない場所を歩いてつく場所であった。
木の並びが終え、光が差す場所へとでるとそこは一面花が咲き誇っている場所であった。
様々な色の花が並んでいる。
「ここは、あまり人をよせつけん。だが、氷柱ちゃんの友達なら別じゃ。いつか氷柱ちゃんにも見てほしいんじゃがな。それはそうとこっちじゃ…って小娘!何しておる!」
桜は一本の花をむしろうとしていた。
「あ、ごめんなさい。たしかこの花って食べることができる花だから、つい食べようとしちゃった」
ムソウは驚いていた。
(馬鹿な。あの花は、ここ修羅山か“あの場所”でしか生えていないはず。だが“あの場所”はもう…)
「ムソウさん、どうしました?」
しばらく呆然と立っていたムソウに間宮は声をかけた。
「いや、なんでもない。それと小娘。ここの花は摘み取るな。」
「へ~い」
かなり残念そうに桜はムソウの後に続いて目的場所に行った。
そして目的の花がある場所へとついた。
といっても数メートル動いただけである。
「この花じゃ。名前はまだない。じゃが花言葉は“これからも続く”じゃ」
「花ことばだけつけたんですか」
「細かいことは気にするな」
その花はピンク色の花びらを持つパンジーのようなものであった。
「えっとこれは摘み取っていいんですよね」
「うむ。ワシも手伝うからとっととやるぞ。」
ムソウは背負っていたかごを下ろし、三人で作業を始めた。
小屋
「ボーヤ…見た限りだと、霊感があるね」
急に変なことを言われたものだから、少し返答するまでに時間が空いた。
「何を急に」
「以前…いや、最近ではないな。この感じだと、もっともっと昔、霊的な何かに触れたことが」
「そんなことない」
識は老婆の言葉を遮るかのように否定した。
その顔は少し、俯いていた。
「そうかい。余計なことを聞いたね。」
そのまま二人は黙りこんでしまった。
その三十分後
ムソウと二人は帰ってきた。
「今帰ったぞ。」
「おや、ずいぶんと早かったね。」
「このガキどもが手早くやってくれてな。」
桜はピースをする。
「そっちのガキの怪我はどうだ?」
「お蔭様で完治しましたよ」
「さすがの薬じゃな。それではもうすぐ暗くなるから早く下山するがよい。途中まで付き合ってやる」
ムソウが言うと老婆は桜に話があるから先に行くように言った。
桜はなんだろうと思い話を聴いてみる
「ジョージャンは昔霊的なもんに何か関わらなかったかい?」
「霊的な?・・・・」
桜は少し考える。
「わかんね」
「そうかい。じゃあタマから私を救おうとした心をたたえてお守りをあげよう」
すると老婆は袖下から小さな水晶のついたネックレスをとりだした。
「これは一回だけおぬしを守るじゃろう。」
「はい?」
「まぁお守りじゃつけとけ」
そのネックレスを桜に渡した。
「なんだかよくわからなけど、ありがと。」
「さて、降りようか」
こうして、桜たち三人は無事修羅山を後にすることができた。
ムソウたちは電車を見送り山へと戻る。
「ムソウ、どうじゃった?あの三人は。気に入ったかい」
「うむ、三人ともよい精神を持っておった。ただ、あのうちの一人」
「わたしも感じたよ。体の半分が妖怪化しておった。あの気は五大妖怪の仕業だね」
「じゃが、しばらくは大丈夫であろう。」
月曜日
生徒会室
「氷柱~。花たくさんもってきたよ」
「あらご苦労様。」
「桜ちゃん~おかえり~」
「あ、桜。桜のことだから山で熊と戦ってきたんじゃないの?」
七海は冗談のつもりで言っていた。
「あははっはは…まさかまさか」
これ以上バケモノ扱いされるのはゴメンだったので嘘をついた。
「じゃあ、この花を卒業生の方たちの式に飾りにいきましょう」
「そうだね。」
「あなたたちがとってきてくれた美しき花をこれから未来へいく方々のために捧げましょう」
そして、卒業式は、その花もあり、華やかな式となった。
先輩は雲の上を後にした。
その花を捧げられながら・・・・・・
エピローグ
トゥルルルル・・・・・
誰かの電話がなった。
「はい、桜です」
桜の電話であった。
『あ、桜ですか?先週もお話しましたが、恋継さんの結婚式ですけど、家でいっても桜答えださないから勝手に了承しちゃいますよ』
「あ~、そうね。うんいいでしょ、ウチでやっても。でいつやるの?」
『それが…先ほど電話しましたら、相手の都合で来週やりたいと…』
次回予告
桜「長かった・・・・」
識「ああ、本当に長かった。」
桜「でもこれでなんとか山編が終わったわ」
識「けどよ、三月旅行編なんて章だけど、ここ4話旅行についてはまったく触れてないぜ」
桜「あ~いいのよ、そこはもう気にしないって決めたらしいから。でも次から、やっと旅行始められるでしょ」
識「それもそうだな」
桜「ってことでまた次回!旅行準備編で!」
識「まだ行かねえのか!!」