表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲の上学園生徒会記録  作者: skyofnet
第8章『楽園は過去の傷と共に』
104/119

104 遠い荒野と近い楽園

燃え盛る業火。その炎を一瞥し、素早く自分たちの基地へと戻る。

そのようなことを何度繰り返したことだろうか。


女と呼ぶよりは、少女と呼ぶほうが正しいであろう背丈と容姿をした少女は少し

遅れて返答をした。


「それじゃあ、始めてくれ。」


俺が言うと、少女は目を閉じ,意識を集中させた。

その様子をいつものように俺は見ている。


四秒…五秒。少女だけ時間が止まったかのように微動だにしないで、目を閉じて

いる。

六秒たった所で目をゆっくりと開いた。


「車両三、ライフル兵四、目標一。距離三百。」


それから延々とその人物の細かい座標を喋った。

それを全て聞いた俺は腰にかけてあったトランシーバーを手にとった。

余談だが、大きさは今の携帯電話とは比較するのも馬鹿馬鹿しいくらい大きく、重量もあった。


「聞いたか?」


ジジジ…っと、ノイズが鳴る。


『こちらデルタ班。オーケイだ。』

『オスカー班。いつでもいける。』


今、俺たちは三班で行動をしていた。


『フォックス。合図は任せた。』


“フォックス”。俺は昔、その名で呼ばれていた。


「リマ。ここで待っていろ。」


少女は無言で頷いた。


少女の名前はリマ。当時の俺のパートナーと呼べる人間であった。リマは不思議

な力を持っていた。それは、動物を使い魔として、動物の視界を見ることができ

るというものであった。詳しい事は何もわからない。ただ、そういういことがで

きるという事実。それだけで十分であった。


「…今。」


リマが声を出す。

それを無線で聞いていた仲間達は同時に行動に移る。


俺は何をするかというと、他の仲間よりも先に標的と接触をする。そして、浮き足立った所に仲間が現れ一網打尽にする計画だ。つまりは“囮”ともいえる。



ここはとあるプライベート空港。どこの国の人間かはわからないが、標的が飛行機でこの場所に着陸する。それと同時に標的、及び取り巻きを“消す”。それが俺達に与えられた任務であった。

しかし、空港の着陸するであろう場所はとても見通しがよく隠れることができるような場所などはない。



リマと俺は大型のトラックの荷台にいた。無論、空港付近に停めることなどできるはずがない。なので、空港から数キロ離れた場所に停めている。

その荷台から出したのはバイク。

しかしただのバイクではない。


経緯はしらない。俺達の“隊長”が、任務のために特別用意をしたカスタム機である。

説明によると、時速250kmは出る改造が施されている。


俺はそのバイクに跨り、アクセルをフルスロットル。豪快な音と共に、俺を目的地にまで運んでいった。



空港ではこの爆音には気づかない。なぜなら飛行機の着陸音にバイクの音がかき消されているからだ。だが、それはバイクが遠くにあるからという話である。

近づいてくるにしたがい、SPと思われる黒服の人物が異変に気づいた。


「何か音がしないか?」

「ああ、何かの機械トラブルか?」


飛行機は滑走路を停まり、中から人が出てきた。


「大臣。お待ちしておりました。」

「うむ。」


大臣と呼ばれた男。男は専用飛行機に取り付けられた階段から降りる。

それを出迎える男。

その二人は異変に気づいていない。


取り巻きのSPが異常を伝えようとしたそのとき。


ヴオオォォォォン!!!


激しい音がし、その方向には猛スピードで接近してくる影。


「何だ!?大臣!機内へ!」


踵を返し、機内へと戻ろうとする大臣。


すると、数名いるSPの一人が動き出した。

その人物は高く跳躍して大臣の頭上を通り越し、飛行機と階段を連結させている部分へと飛んだ。


「“黒爪”!!」


連結部分へ拳を叩きつける。否、ひっかく。

すると、階段は破壊され、それによって物体のバランスは崩れた。大臣は落下。だが、この高さなら死ぬことはないであろう。


「よくやったオスカー!!!」


識はバイクを減速させる。

そして、バイクを捨てるように飛ぶ。その捨てられたバイクはSPの一人へと突撃をした。



飛んだとき、空中で足を組んで丸まり、前宙をし、次の行動んための遠心力をつける。


「奥義“落葉”!!」


遠心力をつけた踵落とし。

識は踵で誰をどのように打撃を入れたか。それを見ることはせず、次のターゲットへと視線を移していた。


そのターゲットは識が見ていると、SPは何かに飛ばされたかのように倒れた。


「…。」


耳につけた無線に音が入る。


『悪い悪い。暇だったからさ。』

「デルタ…。」


デルタの遠くからの狙撃。それはSPを二人射殺した。

恨み言の一つ言おうとしたとき、ガシャアアン!と崩れた階段からオスカーが出てきた。


「目標は私が滅した。」


オスカーの右手袋には赤い染み。そこから時々雫が落ちる。


「ちっ、それじゃあ、後始末するぞ。」

「それくらいは譲ってやろう。」


胸の中に入れてあった手榴弾。それを飛行機のエンジン部分近くに投げつける。

手榴弾が爆発した瞬間、爆破がさらに爆発を呼び、飛行機をガラクタへと変えていった。





「…きさん?識さん?」


識は目を覚ました。そこは飛行機の座席。識は思い出した。今グアイ島へと向かう飛行機に乗っていて、長時間乗ることになるのだから少し仮眠をとろうと思っていたのである。


「識さん、すごい汗をかいてますよ?悪い夢でも見ていたんですか?」


隣の席に座っていた雪音に言われると、自分はずいぶんすごい汗をかいていることに気づく。


「ええ、まあ。」


言えなかった。昔の自分の記憶。それを見ていたということを。




そして、彼らを乗せた飛行機はグアイ島へと着く。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ