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安くて美味しい料理11

初さんはクスクス笑いながら話を続けた。


「この人ったら毎日難しい顔して考えてたわ。あなたがあの条件で料理を作る事が出来るって言った時すごく驚いてたんだから。でも同時に心配もしてたのよ。本当に料理を作れるのかとかまた無理してないかとかね。ねぇ?」


「………。」


孫次郎さんは無言のままだ。

これも一種の照れ隠しだろうか?

心配もしてくれていたとは思わなかった。


「まさかこんな方法だとはこの人も思わなかったみたいだけど…。でもいいわね。賑やかで、楽しくて、安くて、面白くて何より美味しいわ。」


初さんがこんなに褒めてくれるなんて。


「ありがとうございます。私も凄く考えました。量を作ろうとすると材料費がその分かかりますし、私が作ると私にもお金が発生しますから。」


「やっぱり…その事気にしていたのね。ほらっあんた。」


初さんが孫次郎さんをまた肘でつつく。


「…料理人が考えて決めた値段だ。文句いう奴なんてろくな奴じゃねぇ。」


「でも…孫次郎さん前に…。」


「お前が作ってそれでいいと決めた値段にケチ付けるなんざ、そいつは料理人として失格だ。」


「孫次郎さん…。」


私はあの時の言葉をアドバイスとして受け取っていたんだけどな。

孫次郎さんはそれ以上喋らず、何処かに行ってしまった。


「本当に素直になれない人なんだから。あの人はあなたに嫉妬してたのよ。…少し違うかしら?あなたの料理に嫉妬していたって言えばいいのかしら。だからいつも態度もだけど言葉もあなたにつらく当たっていたのよ。あの人の代わりに私が謝るわ。ごめんなさいね。」


初さんは深く頭を下げた。

私は二人に感想を聞きに来ただけなのにどうしてこんな事なったんだろうか。


「謝らないでくださいっ。私、孫次郎さんに会えて嬉しかったんです。今まで中々お料理をする方にお会いする事がなかったので。それに孫次郎さんに料理の感想聞くの緊張もしますけど楽しみでもあって…。

あっ、あとー」


「あんたの気持ちはわかったよ。ありがとう。でも今の言葉は私じゃなくてあの人に言ってくれないか?外にいると思うから。」


「はい!行ってきますっ!!」


私は走って外に出た。

孫次郎さんは夜空を見上げていた。

私はゆっくり孫次郎さんに近づいた。


「味の感想ならさっき言ったぞ。」


「ありがとうございます。とても嬉しかったです。」


「…うまいしか言ってないのにか。」


「その言葉が一番嬉しいです。」


料理をする人にとっては最高の誉め言葉だ。

それは孫次郎さんが一番よくわかっているはずだ。


「あの方法…俺には全く思いつかなかった。よく思いついたな。」


「私もあるお腹を空かせたお客さんに会うまで思いつきませんでした。」


そのお客さんとは藤吉郎さんの事だ。


「飯屋に来る客なんざ大抵腹が減っているだろ。何も珍しくない。」


「確かにそうですね。でもその人はいつもお腹を鳴らして来るんです。その人はいつも早朝に来るんですが、その日は材料が少ない日で一緒に山に材料を取りに行った後に料理をお出ししたんです。」


「その時に思いついたのか。」


「いいえ、まだその時は気づいていませんでした。」


そう私がこの方法を思いついたのは藤吉郎さんに二度目の料理をお出しした時だった。


「またある日の早朝にそのお客さんが料理の材料を沢山持って来たんですよ。でもそのお客さんお金が無いらしくて…だから沢山の材料を渡す代わりに料理を作って欲しいって。その時にこれだったら材料費がかからないなって思ったんです。」


「なるほどな…。」


孫次郎さんは真剣に私の話を聞いて頷く。

話を聞いてくれるのは素直に嬉しい。


「だから料理も手伝って貰ったら…私にもお金がかからずにすんで、凄く安く料理を作る事が出来るって思ったんです。」


料理が出来ない人も手伝えるかは藤吉郎さんで少し試させてもらった。


「どうやってこんな奇想天外な事を思いついたかはわかった。だが料理は?どうしてあの料理にしたんだ?」


「それはですね、ある子が惣菜まんが食べたいって言ったのと、皆で作るって言えば餃子かなって私が勝手に想像したからですね。」


「お前の故郷では皆でその餃子とやらを作るんだな。確かにあの惣菜まんの中身と同じ味はしたな。」


なるべくあの子のリクエストに答えれていたらいいな。

でもお店にあの子の姿が見当たらなかったような気がする。

後で太郎さんにでも確認してみよう。


私はもう一度孫次郎さんにお礼を言った。

自分自身を大切にするいい機会を孫次郎さんに貰ったから。


「孫次郎さんのお陰で私の人生で一番笑ってお料理出来きました。本当にありがとうございます!!」




次回もお楽しみに!!

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