安くて美味しい料理3
本当は孫次郎さんの店を手伝いたかったけど今回は諦めよう…。
「菜…こっちはいいから朝一から手伝って来なさい。」
「えっ?いいんですか?」
でも本当にいいのだろうか?
与一君が手伝ってくれているとはいえ、よしさんの仕事がますます増えてしまうのではないだろうか。
よしさんにため息をつく。
「いいかい?よくお聞き。辛くて苦しい事ばかりの世の中だけどね。助け合えば乗り越えられる時もあるんだよ。だから何も心配しないで行っといで。」
最後によしさんはにっこり笑った。
「…はい、わかりました。行ってきます。」
よしさんにはやっぱり…敵わない。
次の日になるとよしさんは朝早くからご近所さんを周り、着なくなった着物を集めてきた。
「よしさん…着物をどうするんですか?お店のおしぼりは足りてますよね?」
「赤ん坊が生まれたら必要になるだろう?」
「赤ちゃんが着るには大きすぎませんか?」
着物は大人サイズでいくら何でも赤ん坊には大きすぎるサイズだ。
「やだよ~。この子ったら…このまま使いはしないよ。これで産着を作るんだよ。」
「へぇ~。……。」
産着…?
きっと赤ちゃんが着る服のことだと思うけど。
「作ったら持って行っておやり。あっても困るもんじゃないからね。」
「わかりました。持って行きますね。」
よしさんは嬉しそうな寂しそうな笑みを浮かべていた。
もしかして…今昔の太郎さんと娘さんの事を思い出しているのかな…。
与一君が来るのを待ってから私は孫次郎さんの店に向かった。
「おはようございます。」
孫次郎さんのお店の中に入ると昨日より顔色が良くなった初さんがいた。
顔色が良くなったと言ってもまだ少し具合が悪そうだ。
「おはよう…。今日は随分早いんじゃないの?」
初さんは驚きながらも私に挨拶してくれた。
「実は私が働いているお店の方から許可を頂いて手伝いに来ました。」
「そんな事しなくても私は大丈夫よ。」
初さんは元気に振舞ってはいるけど、やっぱり声に元気が無い。
ひとまず孫次郎さんに挨拶と報告をしよう。
「ちょっと…孫次郎さんに挨拶してきますね。」
私は台所に向かった。
孫次郎さんはため息をしながら料理をしていた。
「孫次郎さん…おはようございます。」
「お前…何で…。昼からだろう…。」
あははは…初さんと同じ顔してる。
「実は…私が働いているお店から許可を頂いて、朝から手伝う事になりました。」
「っ…。」
孫次郎さんは何か言おうとして止めた。
そして、料理を再開しながらボソリと言った。
「…助かる。」
「いいえ、お互い様ですよ。」
私はそう言って店の表に出て初さんの様子を見ながら、店を手伝った。
次回もお楽しみに!




