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安くて美味しい料理1

お昼になり孫次郎さんの店に惣菜まんを売りに行く。

店の中に入ると顔色が悪い初さんが座っていた。


「今日もご苦労様。」


「今日もよろしくお願いします…。初さん具合が悪いんですか?」


「何でもないさ。さぁ、仕事っ仕事っ!」


初さんは笑顔で挨拶してくれたが、いつもより声に元気が無いような気がする。

孫次郎さんに少し聞いてみようかな。

私は孫次郎さんに挨拶するべく料理場に行った


「こんにちは。今日もよろしくお願いします。」


「おう。」


相変わらず素っ気ない返事。


「あの…初さん今日具合が悪そうでしたけど大丈夫ですかね?」


「………っ。」


私がそう言うと孫次郎さんの肩がピクリと動き、持っていた包丁の手が止まった。

あれ?…孫次郎さんも知ってる?


「もしかして知ってましたか?すみません。」


「あぁ…いや…。」


孫次郎さんが言いよどんだ。

何か言いたくない事があるのだろうか?

それ以上孫次郎さんから聞くのを辞めて私は私の仕事をする事にしたのだった。

いつものように惣菜まんを売っているとそこへ太郎さんがやって来た。


「おう、惣菜まん一つ。」


「あら、今日は一つでいいんですか?」


「俺がいつも多く買うと思うな。ちゃんと地道に売れ。」


「それもそうですね。多くの人に売って稼がないと。」


他愛のない話をしているつもりだったが、ふっと太郎さんの表情が暗くなった。


「お前が外に出稼ぎに出ないほど金がないのか…。お前毎日ここにいるよな?」


「え?別にお金に困ってはないですよ。」


惣菜まんを売っているのは太郎さんを探す為に売っていたのであって稼ぐ為ではない。

後は太郎さんとよしさんを合わせてあげたいと勝手な私のわがままだけ。

それまでは惣菜まんを売ろうと決意している。


「はい、熱いから気を付けて下さいね。そんなに心配でしたら一度お店にいらしては?遠目でもいいですから。」


太郎さんは無言のまま惣菜まんを受け取り、ぼそりと呟いた。


「温かいな…。」


その悲しそうで辛そうな笑顔にかける言葉を失っていると太郎さんから話しかけてくれた。


「はぁ~、惣菜まんもう一つくれ。」


「一体どうしたんですか?」


「んっ。」


太郎さんが右を向くように目線で合図した。

右を見ると五郎さんと目が合う。

五郎さんは目が合うなリ走って来た。


「菜ちゃん、いつもながら綺麗だね。あっ、太郎~一口頂戴。」


「断る。」


「ひどっ。」


五郎さんが来ると一気に空気が明るくなった気がする。

太郎さんが急に惣菜まんを買った理由がわかった。


「五郎さん昨日ぶりですね。はい、惣菜まん。太郎さんからです。」


「やった~!!ありがとう菜ちゃん。」


「お礼は私じゃなくて…太郎さんにした方がいいと思いますよ。」


太郎さんをチラリと見ると黙々と惣菜まんを食べ、気にしている様子は無い。


「太郎も一応ありがとう。一応ね。」


「お前に全部食べられるよりはいいからな。」


「でさぁ、菜ちゃんもう一回ご飯作ってくれない?五日後に。」


五郎さんは太郎さんを無視して私に仕事の依頼をして来た。


「私はいいですけど…お店の場所はここがいいんですよね?」


「あぁ。」


五郎さんが答える前に太郎さんが答えた。

やっぱりまだよしさんの店には行きたくないか…。


「ちょっとここで待っていて下さい。またここを借りれるか聞いて来るので。」


「それはいい。もう昨日話しておいた。許可も取ってある。」


いつの間に。

昨日っておでん食べてた時だよね?


「今回はどんな料理にしますか?」


五郎さんが苦笑いしながら言いにくそうに言う。


「今回も安くて腹いっぱいになる料理がいいんだけど…。いいかな?」


「はい、わかりました。努力してみます。」


こうして私はまた五郎さんと太郎さんの依頼を受ける事になった。



ブックマーク、評価ありがとうございます!

次回もお楽しみに~

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