二人の太郎さん
やっとよしさんの息子さんに該当する人を見つけた。
目のほくろに太郎さんと言う名前…。
「よしさんと言う方を知っていますか?今お世話になっている方の名前なのですが。」
「知らないね…。」
よしさんの名前を出した途端、太郎さんの笑顔が消え声のトーンも下がった。
随分わかりやすい反応。
よし…このまま話を進めよう。
「私、菜と言います。よしさんの家に寝泊りしながらお店を手伝っている者です。よしさんもあなたを探していましたが実は…私もあなたを個人的に探していました!」
「だから知らないって言ってるだろ。」
太郎さんは聞く耳を持たずその場を離れようとした。
こんな別れ方したら絶対太郎さんは私の所にもよしさんの所にも来ないような気がする。
何とかして話を聞いてもらおうとした時だった。
「おい、おい太郎よう。何こんなところで油食ってんだ~。おっどこの美人かと思ったら……あの時の人じゃないか~。何売ってんだい?」
太郎さんに話しかけて来た人はこの前一座で出会った太郎さんだった。
太郎さんが二人…。
「惣菜まんです。良かったら一口どうぞ…。あの~太郎さんはこちらの太郎さんとは仕事仲間ですか?」
「太郎?いや、俺のなまっっっ…!!っておいっ!」
太郎さんが何かを言いかけた時に顔が歪んだ。
隣にいる太郎さんが足を踏んでいた。
「そんなところだ…。いいから行くぞ。」
この前太郎さんがいるかと尋ねた時にどうしてもう一人の太郎さんは紹介されなかったのだろう。
「お前何で怒った顔してんだよ。って言うか旨いねこれ!皆に買っていこうかな~。三十個ちょうだい。」
気に入ってくれたのは嬉しいけど、いきなり三十個!!
皆ってことは一座の人達って事かな。
「申し訳ございません。二十五個しか作って来てなくて。」
「んじゃあ、二十五個で。お前も払えよ、太郎~。」
「なんで俺が…。」
「だってお前も食うだろ。それに俺そんなに金ねぇし。」
太郎さん達は言い合いしつつもお金を払った。
見ていて分かった事はこの二人とても仲が良いって事かな。
二人の太郎さんは惣菜まんを片手に一個持ち食べながら去っていった。
「今日はとても早い店じまいになっちゃったなぁ。」
結局太郎さんに言いたい事は言えず別れてしまったけど、先程までとは違いまた合えそうな気がした。
そして翌日…本当に直ぐに合う事になってしまう。
私がいつものように惣菜まんを売っていた時の事。
「あ~いたいた。昨日ぶり!」
私に話しかけてきたのは昨日会った太郎さんだった。
後ろには不機嫌そうな太郎さんがもう一人…。
「実はお願いがあるんだけど。俺ら一座の夜飯作ってくれない?」
更新遅れました。
次回からは新しい料理を出していきますのでお楽しみに!