温かく売りたい
翌朝、考え事をしながら山菜取りをしていた。
さっそく惣菜まんを売り歩こうと思ったけど、どうやって売り歩こう…。
惣菜まんの入れ物だけならそこまで考えなくていいんだけど、惣菜まんはやっぱり温かいのを食べて欲しい。
石焼き芋とかヒントにして売れないかな。
大きい鍋に温めた石を入れて、その中に少し小さめの鍋と生地が渇かないように水を少し入れてお皿の上に惣菜まんを乗せ温める。
「中々いいかも。」
「何が?」
楽しそうに笑う私の横に与一君がひょっこり顔を出した。
「わっ…!びっくりした…。おはよう。あれ?どうして与一君がここに?」
「おはよう。師匠と一緒だよ。おっとうと来たんだ。で、何が?」
与一君は山菜の採取を手早くやりながら、先程私がこぼした一言を言及する。
私より取るスピードが早い…羨ましい。
「昨日食べた惣菜まんを温かいままお客さんに食べて貰いたくてね。」
「………。難しいんじゃない?売り歩きなら尚更さ。冷たくても美味しいもんは美味しいしそのまま売れば?」
確かに冷たくても美味しい。
だけど寒い日に手を温めながら食べる肉まんの幸福感は人類逃げられない。
あの温かい肉まんにどれだけの人が救われた事か…。
「でも温かい方が最高だから!」
「へ、へぇー。でも、今は寒いから冷めるのも早いと思うよ。どうするの?」
一瞬、与一君が引いたような気がしたけど気のせい、気のせい。
「実はね…。いい案が思いついたんだ。それで石を拾いに行こうと思って。」
「いし…。」
与一君が疑いの視線で私を見る。
「食べないよ!」
「…一応一緒に行く。」
「石を拾いに行くだけだから大丈夫だよ。それにさっき来たばっかりでしょ?」
付いて来てくれるのは嬉しいけど、自分の家の仕事をやってからお願いしたい。
山菜はこの時代の大切な食糧だから。
「大丈夫、おっとうも一緒だし。それに…師匠と同じぐらい取ったから。」
「…たしかに。」
与一君の籠にはこの短時間で私より少ないか多いかぐらいの山菜が入っていた。
私の方が早めに取ってたはずなんだけどな。
こうして私は与一君と一緒に川辺までやって来た。
沢山の石の中から手の平ぐらいの石を与一君に見せる。
「これぐらいの石をお願いします。」
「わかった。」
与一君とせっせっと石を集め終わった時にやすさんに声を掛けられた。
「おうっ!こんなところで何やってんだ?」
「おはようございます。今、与一君に石を拾うのを手伝って貰っていて、少し与一君をお借りしています。すみまさん。」
「いしだ~~?何でそんなもんを…。まさか…食うー。」
「食べませんっ!!」
皆が私をどう思っているか良くわかったよ。
やすさんが私と拾った石を交互に見ている。
これは…信じてないな。
与一君を驚かせたいから帰ってから実際にやってみようと思ってたんだけど…仕方ない。
私はさっき思いついた案を与一君とやすさんに説明した。
「ってすれば温かいものをお客さんに食べて貰えるかなって思いまして。」
「う~ん、なるほどな。よくそんな事思いつくな~。でもよう…。」
結構いい案だと思ったけどやすさんと与一君が考え込む。
一体どうしたんだろう。
やすさんが何か言おうとした時に与一君が先に喋る。
「面白いけど…そんな重いものを一人で売り歩くの?」
たしかに…、水と石だから結構重いのが想像つく。
一人で持って歩くのは難しいかも。
「たっく、菜ちゃんよ。俺のとこにある荷車を貸してやる。店に牛もいるからな、何とかなんだろう。」
「ありがとうございます。」
「その代わりなんだが…。」
やすさんがそわそわしながら視線を斜め上にそらした。
「はい、惣菜まんご馳走します。」
「さすが、菜ちゃんだぜ。」
やっぱり寒い日は肉まんですよね~。
ちなみに私はピザまんのチーズが好きです。
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