温かい食べ物
与一君の説明を聞く限りお芝居もするけど水商売もする人達って事だよね。
一座が何かはわかった。
お客さん情報だと隣町で色々披露したりしているみたい。
「う~~ん。」
何とか太郎さんと会う方法を考える。
泊っている宿に押し掛けるにしても会ってくれないだろうし。
私が今持っている武器といえば…。
「料理しかないか~。」
料理人ってわけじゃないから大したものは作れないけど…料理で頑張るしかない。
そうなれば作戦を練らなければ。
出来る事ならその太郎さんがいるであろう一座で料理が出来ないかな。
その一座がお芝居している近くで売り歩くとかして上手く近づけないだろうか。
「ムムム…。」
「………。百面相。」
与一君が私を横目で見ながら呟く。
仕事が出来るようになったけど少しばかり生意気になったような。
まぁ、そこが可愛いけど。
一座の関係者が店に来てくれないかなぁ~など妄想をしてみるが所詮は妄想。
行動あるのみか…。
「よし、売ってみようかな。」
歩きながら売れる料理を考える。
今は寒いから温かいのを売りたいな。
肉まんとか…いいよね。
よくコンビニで買って食べてたっけ。
寒ければ寒いほど美味しくてあったかい。
よく、カイロ代わりに手を少し温めたりしてた。
「パンが作れたから作れない事もないか…。」
最初に中身の具を作っていこう。
今日はあいにくお肉が無いのできのこと山菜のおかず系で。
きのこを細かく刻んで塩抜きをした山菜も出来るだけ細かく切る。
少ししょっぱめに味噌で味を付けたから生地と一緒に食べればちょうどいいはず。
「与一君。はい、あ~ん。」
「……あ~。」
ちょうど通りかかった与一君に箸で掴んだ具材を口元に近づけると、素直に口を開けて食べてくれた。
「美味しいけど、味が濃いんじゃない?」
「わざとそうしたの。味見ありがとね。」
食べ終わると与一君は店に戻っていた。
私は肉まん改め惣菜まんの続きを作る。
以前のパン作りの要領で卵なし生地を作っていき、第一次発酵が終わった所で具材を詰めていく。
そして後は蒸すだけ。
蒸すだけなのだが…よしさんの店に蒸し器が無いので鍋を使って蒸す。
鍋に適量の水を入れて真中に小皿を逆さにして置き、水が沸騰するまで待つ。
皿を下げに来た与一君が私と鍋に入った皿を交互に見る。
「まさか…皿を食べるわけじゃないよね?」
「へっ、た、食べないよ?!」
食べないって言ったのにまだ疑いの目で私を見ている。
「本当に食べないから、信じて。」
「………師匠ならやりかねないから、ここで見てる。店の方も大分落ち着いたし。」
私は信用がないらしく、与一君の監視が入った。
水が沸騰したところで惣菜まんを入れるのだが……。
今度はよしさんからお母さんのような怒号が飛ぶ。
「あんた!!今度は皿を食べるって言うんじゃないだろうね!!いくら何でも皿は食べないからやめなさい!」
私って皆からどう思われてるんだろう。
「今から蒸し料理をするために必要でして。お皿は食べないので安心してください。」
「本当かい?」
よしさんは心配そうに私を見ている。
私の事何でも口に入れてしまう赤ちゃんにでも見えてるのかな。
「本当です。約束します!」
私は一体何を約束してんだか。
それ以上よしさんは何も言わなかったがチラチラと私を見ながら洗い物をする。
監視役が与一君とよしさんになった。
………そんなに見なくてもお皿は食べないよ~~~~~!!!
心の中で叫びながら大き目の皿に惣菜まんを入れ、鍋の中にある小皿の上に惣菜まんがのった皿ごと置いて木の板を使って蓋をした。
よし、これで水が無くらないように気を付けながら蒸せば出来上がりだ。
そしていつの間にか与一君とよしさんは私の監視を解いていた。
どうやら私がお皿を食べないとわかり安心して仕事に戻ったらしい。
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私も皆さんの期待にそえるように執筆していきたいと思います!!
次回もお楽しみに~