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浸したパン

私はよしさんとリゾットを味見してみる。

ふーっと息を吹きかけ冷ましてから箸で冷ました部分を口の中に入れる。


雑炊にもお粥にも似ているけど少し違う。

牛乳と特製めんつゆがご飯にしみ込んで牛乳のコクと出汁が上手く混じり合ってる。

鰹節の匂いが食欲を誘ってまた一口。


ねっとりとした米だけでは食感が足りないけど、そこをきのこが補って噛めばきのこの風味が口に広がる。

ノビルはいいアクセント。


牛乳を入れるとなぜだかホッとする。

心も体もホカホカだ。

寒い朝には嬉しい料理。


「美味しいですね~。」


「初めて食べるのに懐かしさを感じてしまうはなぜかねぇ。」


私とよしさんは仲睦まじい二人を見つめながらリゾットを食べた。

何度もおかわりを取りに与一君がやってきてはやすさんの元に戻って行った。

おかげで鍋の中は空っぽだ。


朝ご飯を食べ終わり、いつもの仕事に戻る。

与一君も戻って来て店の手伝いをしてくれた。


牛小屋が気になりチラホラ見に行っていたら、やすさんに声をかけられ今度は汁に浸したパンが食べたいとリクエストされた。

なので、お昼におやつでもあり、ご飯にもなるフレンチトーストを作ろうと考えた。


今回も与一君に作って貰おうと思ったけど、少し忙しそうなので私が作る。

大き目の皿に卵、牛乳、蜂蜜を入れてよく混ぜる。

その中に三分割した丸パンの両面を浸す。

しっかり浸り液がなくなるまで少しばかり待つ。


「師匠、何してるの?」


私がいつもと違う動きをしていて気になったのだろう、与一君が見に来た。


「フレンチトーストを作ってる。やすさんのおやつとご飯替わりね。」


「あ、パンに浸みてる。このまま食べるの?」


確かに前回はパンをスープに浸してそのまま食べたけど今回は違う。


「浸み込ませたら焼くの。そしたらフレンチトーストの出来上がり。」


「へぇー、そうなんだ。……まだ焼かないの?」


皿の中にはまだ液が残っている。


「もうちょっとかな。この汁が無くなったら焼こうと思ってるよ。」


「焼くとき呼んでね。絶対にだよ。」


「わかったよ。」


私に念を押し、与一君は仕事に戻った。

少し時間を置くと皿の中に残っていた液が無くなっていた。


「そろそろ焼いても良い頃かな。」


「し、師匠、待って!!」


「はい、はい、待ってるよ。」


与一君は慌てた様子で私の側に駆け寄った。

どうやら私が先に焼いてしまうと思ったらしい。

鍋に油をしき焼く準備を整える。


「焼くよ。」


「うん。」


鍋に液を吸ったパンを次々入れて焼いて行く。

茶色い焼き目が付いたらひっくり返す。


「旨そう…。」


「うん、美味しそうだね。」


この焦げ目を見るだけで口の唾液が止まらない。

もう片方も美味しそうな焦げ目が付いたら出来上がり。

皿に盛りつけて、小皿には蜂蜜を。


「何で二皿?」


与一君は頭を傾げる。


「だって与一君も食べるでしょ?やすさんと。」


「いいの。」


「もちろん。与一君も気に入ると思うし。」


与一君は分かりやすく顔を輝かせた。

一緒にやすさんの所にフレンチトーストを持って行く。


「やすさん、小腹空きませんか?」


「あぁ、ちょうど空いてきた所だ。」


フレンチトーストをやすさんに渡す。

牛小屋を見ると着々と出来上がりつつあった。


「パンを浸した料理です。」


やすさんはフレンチトーストを見て眉間にしわを寄せる。


「想像したのと違うなぁ。与一が言っていたのとだいぶ…。」


「それとは別の料理?ですが…パンは浸してますよ。浸した後焼いています。」


「はぁ~、よくわからんが旨そうだ。」


料理法は興味が無いみたい。

早く食べたいという気持ちの方が勝っているらしい。

その表情はどこか先程の与一君に似ていた。


「この蜂蜜をかけてから食べて下さい。」


「は、はちみつ…。俺はもう何も言わん。」


やすさんは頭を振る。

蜂蜜をかけるように仕向けたのは、私がただ単にこの何でもない作業がすきだから。

蜂蜜をかける瞬間は妙に心が躍る。


とろ~りとフレンチトーストに蜂蜜がかかり、フレンチトーストの魅力が最高潮に!











次回もお楽しみに!

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