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パンとスープ

パンを与一君に渡すとパンをちぎってスープに浸し始めた。

たっぷりスープに浸ったパンを大きな口を開けて放り込んでいる。

口に入れた瞬間に与一君の顔がパァ~と輝く。

これは聞かなくてもわかる、美味しい時の顔だ。


「パンっ…柔らかい!このスープに浸すだけでこんなに違うのかっ…。」


最初はパンをちぎり浸して食べていた与一君だったが、途中でめんどくさくなったのかパンを全部ちぎってスープに放り込んでいた。

パンがスープを吸い与一君の器の中からスープが消え、ひたひたのパンを美味しそうに頬張る。


「あら美味しそうねぇ。私も頂こうかね。」


「いいですよ。ちょっと多めに作ったので、どうぞ。」


与一君の食べ姿を見てよしさんも食べたくなったのだろう。

よしさんにパンを渡すと私と与一君のように食べる。


「また随分と柔らかくなるもんだね。これは食べやすい。」


そのままのパンの時は不評だったけど、この食べ方だといいみたい。

食べ方次第でパンも好評に変わるとはいい発見をした。

与一君がスープとパンをおかわりをして食べている時だった。

外から聞き覚えがる男の声がした。


「おい、娘いるか?」


よしさんに私が出るからと伝え外に出る。


「あっ、やっぱりあの時のお客さんでしたか。どうかしましたか?」


「いや、少しな…。」


声から何となくわかっていたけど、先程店に来て牛乳料理を頼んだ男の人だった。

男は私の後ろをじっと見ている。


「えーっと、外は寒いので中で話しませんか?」


「あぁ。」


外に出てわかったが凄く寒い。

外にいた男はもっと寒いだろうと思い店の中で話す事を提案した。

話す前に白湯を持って来よう。


「少し待っていてくださいね。白湯を用意しますから。」


男は店の手短な場所に座り与一君をじっと見ている。

与一君はスープとパンに夢中で気が付いていない。


「小僧、それはなんだ。」


「牛の乳の汁物。」


「そっちではない。お前が持っている焦げたものの事だ。」


与一君が持っているパンが気になったらしい。


「パンだよ。」


「パン…。なぜそんなものがここにある。」


「師匠が作ったから。」


与一君は食べながら男の質問に淡々と答えていく。

男は私が白湯を持って来るまで男は静かに与一君を黙って見ていた。


「娘、俺にもあれを食わせろ。」


「…?わかりました。」


この人さっき食べてたよね?

まだ少ししか時間たってないような気がするけどもうお腹が空いたのかな。

男の言う通り味噌牛乳スープを用意した。


「おいっ、パンとやらが無いぞ。無いのか?」


「いえ、ありますけど…。口に合うかどうか。」


「合うか合わないかは俺が決める。出せ。」


パンはまだあるからいいけど…。


「わかりました。」


男にパンを渡すとパンをちぎらず豪快にスープに入れ食べ始める。

ただ黙々と食べる。

この人…私に用事があったんじゃないの?

スープ飲みに来ただけ?


暫くスープとパンを堪能した後、男が私に話しかける。


「お前は南蛮人か?」


「?違いますけど…。」


「だろうな。」


……。

知っていたならなぜ質問したの!!


「このパンの作り方はどこから知った?」


「……。」


本当はネットからだけど言えない。

おばあちゃんからというのは無理があるし。


戦国時代ということはパンが一部の人に広まっている可能性がある。

現に今この人はパンの事を知っていた。

南蛮人がもうパンをこの国に持ち込み教えた可能性が高い。

私の事も南蛮人かと聞いて来たし。


「……言いたくないのなら話さなくてもいい。馳走になったな、今持ち合わせ無い。後ろの井戸に繋いでいるそれで我慢しろ。」


男はそう言って店を出て行った。

代金の変わりに何か後ろに置いたみたいだ。

私は慌てて後ろの井戸の方に向かった。


井戸の近くにある一本の木に何かが繋がれている。

徐々に近づくにつれて暗闇からうっすら形が見え、鳴き声が聞こえた。


「モ~~。」


これは、この鳴き声は牛だ!!

代金の変わりに立派な牛一頭が繋がれていた。







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