クリーム定食
最初の一つ以外は爆発をまぬがれることが出来た。
成功したのを与一君に、少し爆発してしまったのを私が試食。
ソースをかけてと言いたいところだけど無いのでここは醤油で食べる。
「与一君もはいどうぞ。」
「うん。なんか栗に似てる。」
もしかして、栗の外側のイガの部分の事かな。
まぁ色も茶色だし、パン粉が立っているからそう見えるのかも。
サクッと口から音が漏れ出す。
「……!!パンなのにっ、牛の乳なのにっ!!旨い!」
与一君は興奮気味に喋る。
口の中でも衣がサクっと言う合図で中からとろ~りとクリームが流れ出す。
まろやかクリームとサクサク衣が混じり合っている。
「うん…美味しいね~。」
これは合格だ。
パンがあんまり好きじゃない与一君にも太鼓判を貰い、味噌牛乳スープとクリームコロッケを皿にのせて持って行く。
「お待たせしました。クリーム定食です。どちらも熱いので気を付けてお召し上がりください。特にこのクリームコロッケは中がとても熱いので火傷にご注意してくださいね。」
男は料理を見て楽しそうに笑う。
「本当に作って来るとはなぁ。くくくっ。」
最初に手に取ったのは味噌牛乳スープだった。
「ほんらいの白さとは違うが…一目で牛の乳が入っているとわかるな。ふむ…中に入っているのはきのこと芋と…肉か…。」
箸で中に入っている具を確認し、匂いを嗅ぎ始めた。
「乳の匂いの中にほのかだが味噌の匂いが混ざっているな。」
「はい、味噌が入っています。」
男は一通り確認した後、器に口を付けてスープを飲む。
「ほう…。」
スープを一口飲み、声を漏らしたかと思えば今度はスープの中に入っている具材を食べ始めた。
きのこ、鳥肉に続いてじゃがいも代わりにいれた里芋。
里芋の中が少し熱かったらしく口を薄く開き冷たい空気を入れている。
開いた口から白い蒸気が消えていく。
「…中々合うものなのだな。牛の乳と味噌もそうだが特に芋がいい。」
スープを半分くらい食べ進めた後にクリームコロッケに手を出した。
「これは見ても牛の乳が入ってるかわからないな。匂いも香ばしい匂いだけ。…中か……。」
クリームコロッケもスープ同様に観察し匂いを嗅いでいる。
「そうです、中に入っています。熱いので気を付けてくださいね。」
そう忠告したのだが男は一口でクリームコロッケを食べてしまった。
サクッ…っっっっハフ、ハフ。
やはり熱かったようで上を向き、口を大きめに開いて熱さを誤魔化そうとしていた。
私も急いでお水を男の元に持って行った。
水を受け取るなり一気に飲み干しす。
「……っはぁ~。熱いが旨い!」
男の口から旨いを聞きホッとした。
「それはよかったです。」
「この皮の歯ごたえも、熱すぎる白いのも旨い。これはもはや牛の乳であって牛の乳ではないな。」
男は今度は慎重にクリームコロッケをかじる。
咀嚼もゆっくりしてクリームを味わっているみたい。
その後、男は味噌牛乳スープ二杯とクリームコロッケ全てを平らげた。
まさか、クリームコロッケを全部食べるとは思わなかったな。
白湯を飲みお腹を落ち着かせていた男がいきなり話す。
「女、牛の乳は売ってない。」
「えっ?」
売っていない?どういう事…。
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次回は12月22日に投稿します。