表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/151

お菓子作り

次の日、お昼過ぎまでにクッキーを作る材料を用意し、与一君を待つばかり。


「与一君だったけ?まだ来ないのかい。」


よしさんには私がお菓子作りしている間のお店をお願いしてある。


「まだ来てないですね。私、外見て来ます。」


与一君の性格だと…もしかしたら…。

外に出て裏口の周りを探すも見つからない。

諦めて店の中に戻ろうとした時、裏口の横に薪と同化した与一君を見つけた。

近すぎて気付かなかった。

与一君の前にしゃがむ。


「クッキー、一緒に作ろうか。」


少し遅れてゆっくり頷く。

与一君に手を差し伸べると恐る恐る手を握ってくれた。

私が思った以上に可愛い手をしている。

一緒に手を洗ってから料理場に入ると与一君はキョロキョロ周りを見ていた。


「何か珍しいものでもあった?」


「ない…。」


うっ、即答。

まぁ確かに普通の調理場だ。

気を取り直して使う材料の説明からしていく。


「今日使うのは、饂飩粉、卵、蜂蜜、油、梅ジャム、くるみだよ。」


与一くんは材料を無言で一個一個見るが、くるみを見て動かなくなってしまった。


「くるみがどうかしたかな?」


「白い…。」


あぁ、もしかして渋皮を剥いたくるみを初めて見たのかな。


「渋皮を取ったからね。」


「どうして。」


「私の好みになってしまうんだけどね。渋皮って少し苦く感じるから、無い方が好きなんだ。その苦いのが好きって人もいるとは思うけど。」


納得してもらえたかな?

与一くんはくるみを見たままだ。


「どうやって…どうやって、取ったの?」


「くるみを炒って、皮を剥いたの。炒ると渋皮が取れやすくなるから。」


くるみに関しては納得してくれたみたいだったけど、今度は梅ジャムを見つめてる。


「これは何?」


質問攻め…。

与一君が自分で話してくれるようになりつつあるようで何よりです。

梅ジャムの質問も一通り答え、やっと料理を開始する。

与一君には出来るだけ一人でやらせてあげようと思っているが、言葉で伝えるのも限度がある。

そこで私と与一君、別々の鍋で作る事にした。


「先ずは卵、蜂蜜、油、塩を入れてかき混ぜる。卵はちょっと難しいけど出来るかな?」


卵を平たい所でコンコンと軽く叩き、ひびがはいった所に親指を入れて割る。

私が最初にお手本を見せると与一君も続けて卵を割ってみる。


与一君も軽く卵を叩いてみるが、慎重になりすぎて卵にひびが入っていない。

今度は強く叩いた事で、ひびが入り過ぎて今にも中身が出てきそうになっている。

鍋を与一君の手前に持っていきギリギリ鍋の中に入れる事に成功した。


余り手も口も出さないようにしたいんだけど、つい出してしまいそうになってしまう。

今なら、お母さんの気持ちがよくわかる。

お母さんは料理が余り得意じゃないのに口を出してくるので、何度か喧嘩してしまった時があった。

お母さんの言っている事を無視して作ると何故かいつも失敗してしまい後々後悔してしまったりと色々あったけ。


今ならお母さんに素直に謝れるかもな…。

思い出に浸っている内に与一君は残りの材料も入れ、混ぜ終わっていた。


「次はこの饂飩粉をこの中に入れて混ぜていきます。」


「うん。」


ゴムへらとかで普通は混ぜるんだろうけど、無いのでその形に近い木ベラで混ぜる。

自分のを混ぜながら与一君の鍋の中を見る。

そろそろかな。


「よし、最後は手でしっかりまとめていくよ。耳たぶぐらいの柔らかさが目安かな。」


「耳たぶ…。」


与一君は自分の耳たぶを触り、柔らかさを確認していた。

その様子を見て可愛いなと思っていたら、私の耳たぶに与一君の手が伸びてきてもみもみしている。


「こっちの方が柔らかい…。どっち…?」


そう言いながら与一君は一向に私の耳たぶをもむのを止めない。


「与一君の耳たぶの柔らかさでいいと思うよ。」


私がそう言うとやっと耳たぶから手を引いてくれた。

可愛かったけどびっくりしたな。


井戸でもう一度手を洗い、生地を手でまとめる。

与一君を見ると真剣な顔で生地を捏ねていた。

苦戦しつつもなんとか生地をまとめることに成功。

そして次はクッキーといえばお待ちかねの好きな形を作る作業。


「次は好きな形を作ってみて。形は何でもいいんだけど、厚さだけ気を付けて欲しいんだ。大体このぐらい。」


厚さ三mmぐらいの丸いクッキーを作って与一君に見せる。


「どんなのでも…?」


「うん、動物の形でも、お花でもいいよ。大きすぎなければ大丈夫。」


与一君は黙々と色んな形を楽しそうに作っていった。

与一君にはプレーンのクッキーをお願いして、私はくるみと梅ジャムのクッキーを作っていく。

私の生地を二つに分けて片方をくるみ入り、もう片方は何も入れない。

二つの生地が出来たら私も好きな形にしていく。


くるみ入りのクッキーはシンプルに丸いクッキーにした。

梅ジャムクッキーも丸いクッキーだけど、真ん中だけ少しへこませてある。

焼いた後で梅ジャムをへこんだ所に入れる予定。


私は単純な形を作っていたから早めに終わったけど、与一君は隣で生地とまだにらめっこしていた。

与一君が作った形を一個一個みていくと中々面白かった。

お花にかなづち…細長いのが数個、その隣に長方形の何かが…。


「与一君、この細長いのは何かな?」


気になって質問してみる。

答える保証はないけど、今日だったら答えてくれるかもしれない。

私が呼び差したクッキーをチラリと見る。


「おっとうの道具。」


なるほど、お父さんの道具か。

お父さんの事が好きなのが伝わってくるな~。


「じゃあ、こっちのは何かな。」


謎の長方形のクッキーを聞いてみる。


「この前…食べたやつ…。」


この前食べたのってもしかして…。


「玉子のお寿司の事かな。」


「うん。たぶんそれ。」


まさか、食べ物で食べ物の形を作るとはね。

子供の発想は大人にはわからない、いい意味で。

与一君も終わったみたいだし、今度は焼きに入る…のだが…。





タイトルですが分かりやすいように少し変えさせて頂きました。

そしてブックマークありがとうございます!

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] クッキーというにはバターとかの油分が足りなそうですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ