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戦国食堂はじめます〜玄米にお湯をかけるだけの戦国料理…私がもっと美味しいもの作ります〜  作者: 好葉
第一章

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話題のおにぎり

その声の正体は先ほど怒られていた三郎さんだった。

少し離れた所で仕事仲間とお昼を共に食べているみたいだ。


三郎さんの右手には私が作った味噌おにぎりが握られていた。

周りにいた仕事仲間達も三郎さんのおにぎりに興味深々。

皆、輪になって三郎さんのおにぎりを見ている。


喜んでくれるのは嬉しいけど少しオーバーリアクションではないだろうか。

三郎さんのおにぎり一口欲しいと言う人がいたが三郎さんは断固拒否している。

おにぎりを取られそうになると慌てて口の中にほうり込んでいるのが見えた。

食べ終わると急いでこちらに駆け寄って来て、キラキラした目でやすさんを見る。


「親方!次も俺に任せてくだせい!今度は必ず届けてみせます。」


三郎さんが土下座しながらやすさんに頼み込んでいる。

これは…おにぎり目当てかな。

気に入ってくれたならなによりだ。

やすさんは私の方をチラリと見て困った顔をしながら私に話しかける。


「菜ちゃんさえよければだが…これからまた作っちゃくれないか?仕事場も少し遠くなって昼は店にいけなくなるしなぁ。」


右隣に座っている時次さんも軽く頭を下げた。


「私からもお願いします。菜さんの料理が食べれないのは少し寂しいですから。」


注文は受けるけど…お願いだから土下座をしている三郎さんを何とかして欲しい…。


「作るので土下座を止めてください!」


そう言うと三郎さんは爽やかスマイルで顔を上げた。

土下座をやめたことにホッと胸をなでおろす。


「菜さん、ありがとうございます!もしかして…あのおにぎりは菜さんが作ったんですか…?」


三郎さんが戸惑いながら質問してきた。

私が答えようとするとやすさんに割り込まれた。


「おおよ!!この美味いおにぎりはここにいる嬢ちゃんが作ったんだ。そして三郎…お前はまだお嬢ちゃんの名前で呼ぶのは早すぎるぞ。」


やすさんが私の肩をバンッと大きく叩いた。

肩がジンジンしてとても痛い…やすさんもうちょっと加減して欲しい…。


私の名前を呼ぶにはやすさんの許可が必要らしく、時次さん以外全員禁止されてた。

横で時次さんがやすさんの言葉に強く頷いている。

他愛のない話をしているといつの間にか三郎さんの近くにいた仲間の人達も集まって来た。

一人の男性が声をあげる。


「あの~、俺もおにぎり運びたいです!」


「おっ、俺も!!」


次々と声が上がり始めた。

そんなにおにぎりが食べたいのだろうか。

あまりの勢いに困っているとやすさんが止めにはいった。


「お前ら落ち着けっ!おにぎりだけが目当てじゃないだろう…。菜ちゃんがかわいいからってそんなに寄ってたかるんじゃねぇ。困っちまってるだろう!」


かわいいって歳でもそろそろないと思うんだけどなぁ…。

お世辞には慣れてきてはいるが皆の前で言われるとさすがに恥ずかしいものがある。

横目でまたチラリと時次さんを見ると三郎さん達をとても冷ややかな目をして見ていた。

無言の圧力とはまさにこのことだろう。


怖い…見なかった事にしよう…。


ある人が時次さんの顔を見てサッと顔が青くなりこちらから目を逸らす。

そして次から次へとそれは伝染していった。

やすさんだけがそれに気づかず、静かになった三郎さん達を不思議そうな目で見ていた。


「あぁ?随分大人しくなったじゃねぇか。」


怖いよね…わかるよその気持ち…。

私も怖くて横向けず、ただ苦笑いをしていた。


そして、結局この現場にいる人達全員分のおにぎりを明日から作ることになったのだった。

店では中々売れなかったので嬉しいかぎりだ。

ルンルンで店に戻り仕事を開始したが、やっぱり今日のおにぎりの売れ行きはいまひとつだった。

でも今日はやすさんに注文を貰えたのでよしとしよう。


夕方、時次さんが注文のものを受け取りに来た時に壺を貰った。

壺の中は何かの液体が入っており、ほんのりと味噌の匂いと私がよく知っている匂いがした。


「時次さん…これって…。」


「はい、味噌の上澄みを集めたものです。」


「これ…頂いてもいいんですか?!」


「えぇ、かまいません。」


これは、お醤油もどきだ…!!


少し失礼して、壺の中にある液を指に付け舐めてみた。

私が想像していたお醤油より大豆の味がしっかりしている。

時次さんは苦笑いしながら用意した人物について話し始めた。


「私の友人からです。この前の菜さんのお話を少し話したのですが、しょうゆ…となるものにとても興味がわいたらしく用意をしたとの事でした。良かったら、使って下さい。」


「とっても嬉しいです!!でも…どうやってこんなに集めたんですか?」


「………それは聞かない方がいいです…。」


時次さんが私から目を逸らし、疲れた顔をした。

聞かない方がよさそうな雰囲気だ。


「わかりました。では使わせて頂きます。」


鰹節もだがこのお醤油も好きに使ってかまわないとのこと。

以前からずっと欲しかったのでありがたく頂戴したのだった。


近頃はやすさんも夕方に注文をするようになり、さばの梅味噌を注文して帰って行った。

やすさんはさばの味噌煮の方が好きだと言っていたのになぁ~。


「う~ん、まぁ、いいか。」





このおにぎりを売って五日目あたりのこと。

おにぎりを買う人が一気に増えた。

旅人のお客さんもだが特に地元のお客さんが割合的には多いと思う。

不思議に思っていると一人のお客さんに話しかけられた。


「噂でここのおにぎりが一番美味いって聞いてよう。日によって味が変わるから毎日でも食べれるって知り合いの奴に聞いて来てみたって訳よ。そしたら、美味いのなんのって。作ってる人もとびきり美人だと聞いたんだが…いや~来てよかった。」


おにぎりを褒められるのはとても嬉しいが、美人かぁ…誰でしょうね…ははは。

一体誰がこんなことを言ったのだろうか。

この話をする人が何人かいたので、誰に聞いたか聞いてみると犯人は三郎さんだった。


おにぎりが話題になるのは嬉しいがそれと同じくらい自分が話題になるのは嫌だ。

どうしても最後に私の話になるので満面の笑みから苦笑いに変わってしまう。

売れることはいいことなんだけどね。


その日の昼過ぎ辺りに久々にある人の顔を見た。

朝に梅干しを貰って以来だろうか…。


「久しぶりだね…。」


「どうも……。」

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