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逢い引き?

昨日の話を思い出しながら、仕事をこなす。

いつも通りの日々がこんなに嬉しいなんて。

でもこの生活もあと少し…。


「菜、うどん一杯頼むよ。」


「は~い。」


よしさんの元気な声と笑顔を見ながら思う。

あの事を言わなくちゃと…。

でもまだ言えない。

言いたくないって言うのが本音だろうな。


「でも言わなくちゃ。」


「ん?何か言ったかい?」


「…何も言ってませんよ。はい、うどんできました!」


また言うタイミングを失った。

笑顔でよしさんにうどんを渡した。


「あいよ。」


このままじゃダメなのは私がよくわかってる。

だけど言えないのだ。

朝からこの調子の自分が嫌になる。


「はぁ~~。」


「あらまぁ、あんたでもそんなに大きなため息つくのね。」


私のため息を笑うその人は最近赤ちゃんを産んだ初さんだ。


「初さん、赤ちゃんは?」


「寝てるよ。あんたさ、気分転換でもして来たら?」


「仕事がありますから。」


「…そうかい。ほどほどにね。」


初さんは困った顔をしていた。

初さんは暫く私が働いている姿を見た後に奥に戻った。

それからよしさんがニヤニヤしながら私の元に近づいた。


「菜、あんたにお客さん。いつの間にあんないい男見つけたのさ。」


「いい男??」


「とぼけちゃって。」


とぼけた訳では無いのだけど…。

とにかく私に用事があるというお客さんに会ってみる事にした。

表に出ると見た事がある華やかな顔をした男が一人いた。


「久しぶり~。いい店だね。」


「五郎さん、どうしたんですか?こんな所まで来て。」


五郎さんに会うのはあの助けられたあの夜以来だ。

お礼を言わないといけないな。

それに皆の現状も気になる。


「逢い引き?」


「サヨウナラ。」


お礼は…言わなくてもいいか。

わざとらしくウインクをする五郎さんに背を向ける。


「ごめん、ごめん。冗談だから、ね?話聞いてよ。」


「はぁ~、ちょっと待って下さい。今、店の人に相談してきますから。」


全くこの人はいつもこんな感じなんだから。

ひとまず、よしさんに相談をしないと。


「まぁ!逢い引き?」


「そうなの?逢い引きなんて懐かしいわぁ。」


よしさんと初さん二人揃って何かを懐かしむように遠い目をしている。

早急に誤解を解かないと。


「違います。少し話をしてくるだけです。すぐ戻って来ますから。」


「そんな事言って。あと少しで店も閉めるし、ゆっくり話しておいで。」


五郎さん達の今の現状や太郎さんの事も気になるし、子供達の元気な顔も見たい。

話したい事もお礼も言いたい。

そう思うと話は私が思った以上に長くなりそうだ。


「お言葉に甘えて、行ってきます。でも断じて逢い引きなんかではないですから。」


「「はい、はい。」」


よしさんは初さんと笑いながら返事を繰り返す。

だからそんなんじゃないんだけどなぁ。

説明するのを諦め私は五郎さんの元へ向かった。



次回もお楽しみに~

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