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私の道

この楽しい日々が現代に帰るまで続くと思っていた。

ずっと料理が出来ると思ってた。

京の皆と居れると思ってた。


でも…このまま料理をしていれば………よしさん達に迷惑を掛けてしまう。

迷惑どころかここは戦国の世界だ。

死ぬって可能性だって拭えない。


「この温かい場所にいたいな…。」


居場所が無くなってしまうと考えると不安で仕方ないけれど、もうここには居られない。

大切な人、大切な場所を守る為に私はこの町を去ろう。

何処に行くかは決まってないけれど、それは後からゆっくり考えよう。


「心は決まったけど…。寂しいなぁ。」


夜空を見上げ月の姿を探すと雲に隠れて中々出てきてくれない。

月が見たいのにこんな時に限って見えないなんて。


「菜さん。今お話しをしても大丈夫ですか?」


「時次さん…。」


この人はいつも私が苦しんでいる時に来てくれる。

さっき私から突き放したのに。


「私も話したいと思ってました。…私この町を出て行こうと思っているんです。」


「…どこか行く宛ては決まったのですか?」


「いいえ、まだです。何処かいい場所が無いか時次さんに相談しようと思って…。」


「そうですか。でしたら越後(えちご)などどうでしょうか。私の奉公場所でもあるので案内も出来ます。それに住む場所も働き口も紹介出来ますよ。いかがでしょうか?」


えちご…聞いた事あるような、無いような?

働く場所も済む場所も紹介してもらえるなんてこんな良い話は無いだろう。

それに時次さんの紹介なので信頼も出来る。


「返事は後でも構いまー。」


もう意思は決まっている。

時次さんに深く頭を下げた。


「…越後までよろしくお願いします。」


「行く日付などは後日決まり次第お話します。」


「わかりました。ありがとうございます。」


行く場所も決まってしまった。

こんなにあっさり…。

よしさんにも話さないとなぁ。


「突然来て、突然出て行く…なんて私って恩知らずですよね。」


「よしさんはお優しい方です。きっと許して下さいます。」


時次さんは私が何を考えているか悟ってくれ、私の両手を拾い強く優しく握ってくれた。

それだけで頑張ろうと思うなんて、私って単純だな。

時次さんの言葉に静かに頷き、暖かさを噛み締めた。


「姿が見えないと思ったらここで逢い引きとはな…。感心だ。」


「っっ和尚様!!ちっ、違います。」


和尚様に時次さんに手を握られているところを見られてしまった。

時次さんは握られたままの手をゆっくりと離した。

どうやらそろそろお餅パーティーは終わりのようで和尚様はそれを伝えに私達を探していたらしい。

和尚様は私達を専寿さんに託すとあっという間に去って行った。


「和尚様に代わりまして門まで私がお送りいたします。」


「ありがとうございます。」


「お礼を言うのは私達の方です。今日は素晴らしいお餅料理の数々ありがとうございます。今日の夜の事は一生忘れないでしょう。」


「ふふふっ。やっぱり兄弟ですね。永専君も同じような事を言っていましたよ。」


専寿さんは驚きつつ、嬉しそうに笑顔で笑っていた。


「永専がですか?そうですか。…そうですか。」


「今度、今日の料理の絵を描いてくれるみたいです。」


「それは…楽しみですね。」


「はい、私も楽しみです。」


専寿さんと和やかにお別れをし、私は私の大切な家に帰った。




次回もお楽しみに~

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