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戦国食堂はじめます〜玄米にお湯をかけるだけの戦国料理…私がもっと美味しいもの作ります〜  作者: 好葉
第一章

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時次の友人(友人目線)


大徳寺にて一人縁側で月見酒をしながら待ち人を待つ男が一人いた。

その男は昨夜、梅のおにぎりが忘れられず作ってもらうように頼んだのだった。


月を見ながら昨日の出来事を思い出す。

まさか、狼の群れが向かうであろう場所にあんな娘がいるとは思いもよらなかったな。

私を何と勘違いしたのかわからないけど、会った当初の彼女はひどく怯え目に涙さえ浮かべていた。

多分、自分のせいだということはわかったので落ち着かせるために抱きしめたのだが…。

大体の女性は泣き止み、頬を染めるものだけど彼女は少し違った。


抱きしめていた私から逃げて警戒していた。

人を呼ぶと言っておきながら人を呼ぶ気配はなかったから、たぶん呼びたくはない理由があったのだろうね。

私に流されないことといいずいぶん賢い娘だ。


その後に狼の襲撃にあったが、彼女が自分の後ろにおとなしくいてくれたので無事に終わった。

軽い運動にもならなかったけどね。

振り向いたのと同時に距離をとられ、このぐらいの距離だったら一気に詰められるが怖がられることは目に見えているので動かずにただ声だけかけた。

だが、睨まれるだけでこっちに一向に来ようとはしない。

腹の虫が鳴き空腹だと告げている事がわかった。

このままでは埒が明かないし、帰って酒でも飲むか…。

面白い娘だったから少し話したいと思ったけど仕方ない、ここに来ることももう二度とないだろう。


帰ろうと背を向けると後ろから声をかけられた。

私をあんなに怖がっていたにもかかわらず、声をかけられるとは思わなかった。

そして、私に料理をふるまいたいと言う。

腹は空いているが何か食べたいというわけではないのだが…。


けれど彼女がどんな料理を作るのか気になり少し考えてから承諾した。

承諾した後の彼女は安心したのか笑みをこぼしていた。

なかなかいい顔をする。


彼女が後ろを向いた時に腕を回し目の前に刀を向けた。

戻った際に誰かに自分のことを言っては困る…。

悪いがまだ見つかるわけにはいかないんだ。

彼女はわかりましたと答え店に戻って行った。


彼女が戻って来る間に狼の後始末を近くに潜んでいる者に頼み夕暮れで染まる空を眺めていた。

すると今まで気づかなかったが彼女の家の方からいい匂いがしている事に気が付く。

なるほど…狼はこの匂いにつられていたのか。

どうりでいつも見かけない所に狼がいるはずだ。


四半時(三十分)しないぐらいで彼女が戻ってきた。

手には笹で包んだものがあり、それを私に渡す。


中身はおにぎりだそうで内心がっかりしてしまった。

お礼は言うがおにぎりという言葉だけで食べる気にはならなかった。

これは毎日私のところに来るあいつに渡そう。


おにぎりよりも彼女のえりに目がいく。

料理をしに戻ってもどうやら直さなかったらしい、えりが緩んだままだ。

男性から指摘するのはどうかと思って言わなかったが…。

作るのに夢中で気づかなかった、という事だろうか…その様子を想像すると自然に笑みが浮かぶ。


いつのまにか彼女に睨まれている事に気付く。

彼女のえりを指摘すると顔が赤くなり急いでえりを直していた。

警戒心があるようでない彼女のことが少し心配になったが、そろそろ帰らなくてはとその場を去った。


道中でどんなおにぎりを作ったか少し気になり中身を少し覗いた。

そこには普通の玄米のおにぎりとたけのこが入ったおにぎりと梅と何かが混ざったおにぎりがあった。

一つ見慣れないおにぎりがあり、それを手に取る。

普通の梅のおにぎりは中に梅をいれるのだが、このおにぎりは梅が練りこんでいる。

一つぐらい食べてみようと思い、一口頬張る。


「美味しい…。」


しばらく、ご飯を美味しいと思ったことがなく、ここ何日かは酒しか飲んでいなかった。

梅とみょうががこんなに合うとは思いもよらなかったな。

あっという間に一つ平らげてしまった。


次のおにぎりも気になり手に取り食べるがすぐになくなってしまった。

そしていつの間にか全てのおにぎりを完食していた。

自分でも驚きを隠せない。

いつの頃からか、酒の味しかわからなくなっていた私が飯をまた美味しいと思う日が来るとは思いもよらなかったからだ。


食べ終わった後に来た道を戻り、逃げた狼を探し出し一匹残らず殺した。

あの店の匂いに釣られて戻ってこないように…。

それぐらいしてもいいくらいにはあのおにぎりを気に入った。


そして、明朝に寺を抜け出し井戸の近くに米麹を置いた。

お礼でもあるがこの米麹で彼女が何を作るか少し気になったからだ。

月を見ながら今日この米麹を使って何か作っただろうかと考えていると奴が来た。


甘粕(あます) 景持(かげもち)只今戻りました。」


やっと来たか。


「入れ。」


短い返事をした後に部屋に入り、床におにぎりと竹の水筒が置かれた。


「昨夜ご所望のおにぎりでございます。そして、こちらは甘酒という酒だそうです。」


こいつが私に酒を持ってくるなんて珍しいな…。

最初に笹に包んである紐を解きおにぎりから手を付ける。

見慣れないおにぎりが一つある…これは最後に食べるとしよう。

まずはずっと忘れられなかった梅のおにぎりから食べる。

そう、この味だ…。

また一口頬張る。

その様子を見ていた景持が口を開く。


「謙信様がご飯を食べて笑う姿は初めて見ました。実は私の分も頂いて来たのでよろしければ食べますか。」


自分が笑ってることに気づかなかった。

景持が懐からもう一つ同じものを取り出した。

きっと彼女が景持のために作ったのだろう、それを私が貰うのは違う気がして断った。

その代わり一つ提案をする。


「それはきっと彼女がお前のために作ったのだろう?だったら景持が食べないと。その代わり、私と一緒に食べてくれるかい?」


今日は誰かと食べたい気分だ。

私らしくない言葉に景持は驚いたようだったがすぐに元の表情に戻る。

この男の驚いた顔は久々に見たような気がするな。

少し遅れて返事が返ってきた。


「では、お言葉に甘えて。」


景持は私の後ろの方に座り、私と同じおにぎりから食べはじめた。

まったく律儀な男だ。


「……っ。謙信様がお気に召すのもわかりますね。」


一口食べた直後に景持の目が見開き、またしても驚いているようだった。

この堅物がこうまで表情を変えるさまは見たことがない、料理の腕もなかなか面白い。


梅のおにぎりを食べ終え次のおにぎりに手を伸ばす。

これは確か中にふき味噌が入っていたな。

半分くらいまで食べ進めると昨日と同じ具が入っていた。

これはこれで美味い。

景持もいつの間にか私と同じふき味噌に手を付けていた。

食べながら景持の様子を窺う。


「なるほど…。」


何やら一人で納得している様子だ。

私の視線に気づき説明し始める。


「実は菜さんの店でいつもふき味噌を湯漬けにしながら食べていたので、おにぎりに入れるこのような食べ方もあるのだなと思いまして。」


どうりで驚かないはずだ。

つまらんな…。


「そうか…。」


驚く顔を楽しみにしていたのに残念だ。


そして最後に昨日無かったおにぎりを手にする。

どうやら、表面に味噌を塗ってあるらしい。

その味噌の表面にはしその葉が巻いてある。

どんな味がするのか楽しみだ。


一口食べてみる。

…っ味噌が少し甘い…そして香ばしいような気もする。

これは味噌をぬって焼いているのか?

この味噌の甘さと香ばしさが食べても食べても食欲をそそる。

半分くらい食べ進めた頃だろうかおにぎりの中に味噌大根がでてきた。

この味噌大根もいい味を出している。

味噌のこってりした味をしそがさっぱりと仕上げていて何個でも食べれそうだ。

気づいた時には味噌おにぎりが手から無くなっていた。

夢中で食べていたらしい。


景持も無言で食べていた。

いや…あいつは元から無口か…。

だがあいつも手からおにぎりが無くなっている事に気づき驚いているようだった。

さっきの自分もこんな感じだったのかと笑ってしまった。

こんなに笑ったのは、驚いたのはいつぶりだろうか。

景持も珍しく笑っている。


そう言えば、もう一つ酒が残ってたんだっけな。

景持が持って来たんだ、不味くは無いだろうが…。


「この酒お前が持って来たってことは相当美味しいってことかな。」


景持が即答する。


「はい、必ずお気に召すかと。」


かなり自信があるらしい。

どこの酒かわからないが楽しみだ。

時次さんの友人目線で今回は書かせていただきました。

ちょっと回想が長ったですね。

次回は友人目線の甘酒編です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 裏パート楽しみにしていました! 面白かったです✨
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