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一致団結3

和尚は嫌な奴だったが、約束を守り三人をこれ以上傷付ける事は無かった。

そして和尚の部屋に行き二人で話す事となった。


「お久しぶりですね。娘さん。まさかあの時の娘さんだとは思いませんでしたよ。私は確かにあの蒸し料理を作る娘を連れてくるように言ったのですが、何故か来たのは男性一人に小僧が二人と聞いていたので。」


和尚は笑みを崩さずに話を続ける。

ここで色んな情報を引き出しておかなくちゃ。


「確かに私のお店にお坊さんは来ましたが、男性を探しているようだったので。」


「ほう、それは失礼な事をしましたね。あなたがここにいると言う事はあの菓子もあなたが作ったという事でしょう?」


「違います。三人で作りました。」


「…そう言う事にしておきましょうか。」


この人顔は笑っているのに目が笑ってない。

その表情に恐怖を感じた。


「もう一つあなたに聞きたい事があったのです。あの蒸し料理の作り方は何処で知ったのですか?」


馬鹿正直に未来から来たので知ってましたとは言えない。

いつもの言い訳を使おうと思った時、和尚が勝手に話始めた。


「あの蒸し料理、実は私も知っているのですよ。」


「えっ!」


その言葉に驚いた。

惣菜まんってこの時代からあったの!


「食べた事は無いですが書物で読んだ事があります。あれに本当は肉などのも入れるのでしょう?何故ただの小娘が私でさえ最近知った蒸し料理を作れるのですか?あれは…海を渡った場所にある料理だというのに…。」


そうだ…私が作った惣菜まんは中華料理の中に入る。

中国の歴史は四千年もあると言われているのだ。

それは料理も一緒なわけで、この時代に知られていてもおかしくはない。


「海を渡った料理だったんですね。それは私も驚きました。私も最近、あなたのような方に教えて頂いたものでしたので知りませんでした。」


この人が最近知ったのなら私も誰かから教えて貰ったと言うしかない。

和尚が私の目を暫く見つめたので、私も黙ってその黒い目を見つめた。


「私と…同じですか。わかりました。もういいです。おいっ、連れていけ。」


和尚がそう言うと私はあの物置小屋に戻ってしまった。

そこには専寿(せんじゅ)さんと専永(せんえい)君もいた。


「専寿さん(せんじゅ)さん、専永(せんえい)君は大丈夫ですか?」


専寿(せんじゅ)さんの腕の中にはスヤスヤと眠る専永(せんえい)君の姿があった。


「えぇ、今は疲れて眠っていますが、大丈夫でしょう。それより貴方は?」


「私も大丈夫です。」


「そうですか。私達は大丈夫ですから…。」


専寿(せんじゅ)さんは私の方を見ようとしない与一君を目で指した。

心配させたよね。


「与一君?」


「………。」


「心配したよね。ごめん。」


そう言って私は力一杯与一君を抱きしめた。

その小さな背中を見ていたら何だかそうしたくなった。

与一君は終始無言のまま。

それでも私は抱きしめ続けた。

暫くすると勢いよく扉が開いた。


「お~い、飯の時間だぞ~。専寿(せんじゅ)、お前やっぱり捕まったか。」


「うん、弟も一緒にね。玄道(げんどう)が当番になったんだね。」


「お前の弟が捕まったからな。」


この人はいつも豆腐料理を持って来る人だ。

お世話になっていたのに今名前を知った。


「ほら、飯だ。さっさと食べろ。」


玄道(げんどう)さんは私と与一君の前にご飯を置いた。

でも、専寿(せんじゅ)さんと専永(せんえい)君のご飯は無い。


専寿(せんじゅ)、お前らには無いぞ。罰だそうだ。良かったなこれぐらいですんで。」


「本当に。」


二人はそう話しているが、全然良くない。

私のを少しでもあげようと思っていると、玄道(げんどう)さんに釘を刺されてしまった。


菜蔵(さいぞう)、お前らの分はお前らで食えよ。専寿(せんじゅ)らにも食わしたって知れたら今度は俺が捕まる。」


「私達の事は気にせずお食べになってください。」


玄道(げんどう)さんと専寿(せんじゅ)さんにそう言われたら食べるしかない。

私と与一君は静かにご飯を食べた。


夜中、誰かが部屋に忍び込んで来たと思ったら、床に何かを置いて直ぐに何処かに行ってしました。

床に置いてあったのは…饅頭?

私が作ったような饅頭が置いてあった。

専寿(せんじゅ)さんがクスリと笑う。


「きっと玄道(げんどう)です。」


「よくわかりましたね。私、暗くてわかりませんでした。」


「美味しそうな匂いがしたのですぐわかりました。」


そう言われて納得した。

確かに玄道(げんどう)さんは美味しい匂いがしていた。

饅頭を暗闇で食べているとまた一人来て床に置いていった。


「今度は…塗り薬?」


これはきっと専永(せんえい)君にだろう。

青く腫れ上がってたのでこれで少しでも良くなるといいな。

そしてまた暫くすると床に何か置かれた。


「これは…何だろう?」


何かの本みたいだけど…。

専寿(せんじゅ)さんに渡し尋ねる。


「あぁ、これはお経ですね。私が普段使っているものです。」


その後も色々なものが部屋に届けられた。

その中には何に使うか分からない物まであった。


「菜さん、同志は居ませんでしたが、仲間はいたようですね。まだ希望はあります。」


「そうみたいですね。」


私達は暗闇で静かに笑った。


次回もお楽しみに~

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