一致団結2
専寿さんは急いで私達の縄をほどいてくれた。
「私の仲間の話によると今日の夜に権左衛門様がここに来るらしいです。それと和尚様も朝からお金の準備をしていたようです。さぁ、逃げましょう。」
「はい!」
私達は専寿さんの後を追った。
長い廊下を人目を避けながら通るのは大変で、何度も人がいない部屋に入りやり過ごす事を繰り返しながら前に進んだ。
「今日の裏門の番は専永ですから門の所まで行けば………。っ専永!!」
長い廊下を曲がった所で専永君が無残な姿で転がっていた。
専寿さんが専永君に近づき声を掛けるが動かない。
なんて…酷い事を…。
「大きな声がすると思ったら専寿じゃないか~。どうしたんだ?そんな怖い顔して~。」
専永君をこんな目に合わせたのはこの人だ。
いきなり出て来た僧侶さんの手には長い木の棒が握られていた。
きっとあの棒で専永君を叩いたに違いない。
「あなたの仕業ですね…。という事は先ほどの話も嘘ですか。」
「私はただ躾をしていただけですよ。それに嘘を付いていたのはお前の方だろ。お前にも躾が必要だっ!」
わざとらしい笑みを浮かべた僧侶さんの口調がいきなり荒くなり、持っていた木の棒を専寿さん目掛けて叩きつけた。
専寿さんは傷ついた専永さんを強く抱きしめ、背中で棒を受け止めた。
その衝撃的な瞬間に私はすぐに止めることが出来なかった。
「やっ…やめてくださいっ!」
そう言って専寿さんの上に覆いかぶさるが痛みはいつになっても襲ってこない。
恐る恐る上を見上げると、棒は私に当たる前にある人の手によって止まっていた。
「おや、おや、廊下で何をやっているのですか。喧嘩は良くない。私の部屋で話を聞きましょう。」
「和尚様…。」
この人が和尚!!
この人と専寿さんを叩いてる人…知ってるかも。
最初に惣菜まんを渡した二人だ。
私達の逃亡はきっと仕組まれた事だったんだ。
「もし、断ったら?」
「後ろの彼がどうなっても?」
後ろを振り向くと与一君が捕まっていた。
このままじゃ…全員ただではすまないだろう。
「師匠っ!僕の事はいいから逃げてっ!」
そんな事出来るはずない。
私は真直ぐ和尚さんを見た。
「だそうなので、このまま私は逃げます。」
「なんだと。」
「ですが…もし、この三人をこれ以上傷付けないと約束するなら、私はあなたの指示に従います。」
和尚は少し考えた後に微笑んだ。
「わかった。約束しよう。」
次回もお楽しみに〜