豆腐の奇跡4
いつからだろう…。
専永君以外の僧侶さん達が来るようになったのは。
「菜蔵、この前教えて貰った揚げ出し豆腐?だったか。作ってみたんだ。食ってみてくれ。」
「いいんですか!」
「あぁ、お前しかその揚げ出し豆腐とやらの味を知っているのいないからなぁ。だから合ってるか味を教えろ。小僧、お前も食ってみろ。」
こうしてご飯以外の時間に食べる事が多くなった。
今回は揚げ出し豆腐らしい。
揚げ出し豆腐の上には大根おろしがのっている。
「美味しそうですね~。頂きます。」
肉厚の揚げ出し豆腐にかぶりつく。
揚げが汁をしっかり吸っていたらしく、ひとかじりすれば汁がジュアリ。
大根おろしも汁を深く吸っていてフワッと揚げ豆腐を優しく包みこんでいる。
「ん~っ!これはたまらないですね~。」
「味はどうだ?お前が言ったとおり干しきのこので出汁を取って、塩を加えて味を整えたんだ。」
おっと、あまりの美味しさに僧侶さんの事を忘れかけていた。
しっかり感想を伝えないと。
「美味しいです!出汁がすっごくいいですね!」
「ふっ、まぁな。二日間煮込んだからな。」
僧侶さんは嬉しそうに鼻をこする。
「よし、菜蔵のお墨付きだ。これでこの出汁を皆に飲ませられる。」
「そこは揚げ出し豆腐では?」
「阿保。お前、豆腐は寺の中でも限られた人しか食べられないんだぞ。これだってこっそりくすねてきたんだ。」
「えっ…そうなんですか。」
お寺の人達は皆食べてると思ってた。
だって捕まっている私達のご飯には毎日ではなかったけど出ていたから。
その時ふっとあの僧侶さんの事を思い出した。
あの僧侶さん怒りながら「お前達に食わせるには勿体ない料理を出してやっておるのだぞ。」って言ってた。
「何で私達のご飯に豆腐なんて入っているのでしょうか。」
「さぁな。あぁ、でも太らせたいとか何とか言ってたな~。」
「ふとっ…。」
太らせて食べるつもりだろうか。
だとしてもこんな精進料理食べていたら逆に痩せるよ。
「太らせてどうするんですかね。ははは~。」
「…さぁね。俺はそろそろ行くよ。」
僧侶さんが部屋から出てく前に言わないと。
「あの…もし出来たらでいいんですけど、その出汁に饂飩粉を少し入れてあげて下さい。それでもし残ってたら夜餉で使った野菜の切れ端とか入れてあげて下さい。」
「暇だったらな。」
そう言って僧侶は出て行った。
今の私には皆に料理を振舞う事が出来ない。
だから代わりに美味しく食べれるように作り方を教えた。
その日の夜、僧侶達は野菜が少しだけ入った温かい汁を一つの茶碗で回しながら飲んだとさ。
次回もお楽しみに!
寒い日も暑い日もやっぱり豆腐ですね~