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豆腐の奇跡1

私と与一君は豆腐の可能性に盛り上がり、それは翌朝まで続いた。

あの男の子が来るのを今か、今かと待つ。

私達のお目当てはお豆腐だ!!

足音が扉の前で止まる。


「朝餉です。」


男の子が置いた料理を前のめりで与一君と確認する。

豆腐…豆腐…。

な…ない…。


「与一君…せっかく持って来て貰ったのにそんな顔しちゃ駄目だよ…。ありがたく、食べよう。」


「…師匠だって同じ顔してるのに…。」


私達の朝ご飯は静かなものとなった。


「朝ご飯、ありがとうね。」


「………。」


男の子はちょっと戸惑いながら頭だけをペコリと下げた。

そして私と与一君は豆腐についてまた語りあった。

夕暮れになると私達の部屋は緊張感に包まれる。


「…師匠、足音が…。」


「うん、お豆腐入ってるといいね。」


男の子が部屋に入って来た。

私達が扉の前で待ち構えていたので男の子がわかりやすく怖がる。


「あっごめん、ごめん。ご飯が楽しみで。」


今この子にはお腹を凄く空かせた人に見えてるだろうなぁ。


「夕餉です…。」


与一君が料理を置いた瞬間、確認する。

もう、気になる事があると周りの事が見えなくなるんだから。

与一君が動いた瞬間、男の子がビクッと動き、驚いているのがわかった。


「…ない。」


与一君が呟く。

私も確認してみるが、確かに今日の夕餉にはお豆腐は入っていないみたい。


「明日があるよ。ほら、食べよう。」


お寺の料理だけあって凄く質素だ。

全体的に薄味過ぎる。

いや…もう素材の味なんじゃないか?と疑ってしまう。


最初の日は我慢出来たけど、二日目にして体がしょっぱい物を体が欲している。

塩、味噌、醤油をこの山菜達にかけたい。


「はぁ…。」


与一君がため息をこぼす。

豆腐がないのと私と同じく味に対してのため息だろう。

最近、私のせいで濃い味を覚えてしまったからなぁ。


「あっ…あの…何が…ないのでしょうか…。」


「気にしないで!」


こんな状況でご飯が出て来るだけありがたいと思わないと。

豆腐が出ないんですか?何て口が裂けても言えない。


「…豆腐って出ないの?」


「ちょっと、与一君!」


言っちゃったよ~。

男の子は与一君の質問に首を傾げた。


「豆腐…ですか?明日の夕餉に出ると思います。たぶん…。」


「だって、師匠!」


与一君はキラキラした目で私を見る。

あれ?こんな子だったけ?

最初の頃は全然喋ってくれない子だったのに。


「明日の楽しみが出来たね。」


「うん!」


こんな状況なのにこんなに喜んで。

何だか私も笑ってしまう。

食べ終わった私達を縛りながら男の子から質問をしてきた。


「なぜ…笑ってるんですか?」


私も与一君も答えは一つだった。


「「豆腐!!」」


男の子は食べ終わったお盆を下げながら不思議そうに言う。


「変なの…。」








次回もお楽しみに!!

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