01:大嫌いな婚約者
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クラリッサは恵まれているとよく言われる。
裕福な商家の長女として生まれたクラリッサ。
父が選んだ妻は容姿に恵まれ、クラリッサもそれを受け継いだ。
母譲りの金の髪はクラリッサの自慢でもある。整った鼻筋、伏せなくてもわかる長いまつ毛、その奥の空のように澄んだ水色の瞳。クラリッサは自分が美しいのだろうことは自覚している。
しかし、このシミのない肌や、艶のある髪は、持って生まれたというよりは、父の財力の賜物であると知っている。
そして、クラリッサが恵まれていると言われるのは、それだけが理由ではない。むしろ、最近はこちらに対して言われることのほうが多いくらいだ。
クラリッサには婚約者がいる。
クラリッサの婚約者は、美しい顔立ち、優雅な佇まい、穏やかな微笑み。
常に彼女のことを気にかけ、優しい言葉をかけてくれる。さぞ女性から秋波を送られているはずなのに、クラリッサ以外の女性になびく様子もない。
そう、まさに理想的な婚約者だ。
「ふう」
クラリッサは婚約者を思ってため息を吐いた。
別に恋しくてではない。
そう、彼女は――王子様系男子が大の苦手だったのだ。