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9話 お手軽なスキル入手

 俺様はアマンダたんを連れて、ヘルバリア近くの森へやってきていた。

 リサちゃん曰く、俺様の右腕は未完成なんだそうだ。俺様が一番求めている要素、戦闘能力に関して調整、試験が必要らしくてな。

 って事で、この森で戦闘実験をする事になったわけだ。


「ところでアマンダたん、どうしてそんな怒ってるの?」

「脱会書を出す時、貴方は安住の地を見つけたと言っていましたよね。でも本当は行く当てすらないなんて。どうして嘘を吐いたのですか?」


 あー、それを怒ってるのか。この子噓つき嫌いだからなぁ。


「そうでもしないとアマンダたん、納得してくれないだろ? 最悪どんな手を使ってでも引き留めようとしそうだしさぁ」

「そうですね、行く当てがないのなら、カイン君にちくってでも止めていました」

「勘弁してくれ、ママのお小言聞くより面倒くさい事になるでしょうが」

「全く……それで、右腕の調子はいかがですか?」


「いい具合だぜ。リサちゃんってば最高だわー。デザインも勇者的なデザインでかっこいいしなぁ。早く適当な奴に試し打ちしてみたいぜ。まぁそれはそれとして、旅立つ時に備えて、もう一個用意したい物があるんだよな」


 右腕を手に入れたら、次は足を手に入れたい。俺様一人ならいいんだが、アマンダたんが付いてきちまったからなぁ。


「ずっと徒歩ってのもアマンダたんが疲れるだろ。となると、次の目標は馬か、それに類する乗り物の入手だな。けどどうするか。ヘルバリアじゃ、そういうの売ってないしなぁ」

「私の事を考えてくれて、ありがとうございます」


「Wifeを気遣う亭主関白さ。ま、それはあとで考えよう。ここら辺がギルドの依頼で指定された場所だな」

「はい。この近辺で魔物が異常発生しているそうで、旅人や商人に被害が出ているそうです」

「義手を試しがてら、駆除させてもらいますか」


 魔物は魔王が魔界から呼び出した、魂を持たない紛い物の生物だ。モスキートですら自然の役に立ってんのに、魔物は花の受粉すら行わず、ただ命を破壊するだけ。命の価値を知ろうともしない、存在自体が罪みたいなゴミどもだ。


 リサちゃんの話だと、義手は倒した魔物のスキルを吸収できるらしい。連中は俺達人間が使えないスキルを多数持っているんだ。

 確かに俺様でも、毒針を吐き出したり、体から触手を生やしたりはできねぇな。けどこいつならそれが出来るようになるときたか。


 いいねぇ、夢があるぜ。ただでさえ強い俺様が、より手を付けられないくらい成長できるなんて。ロマンの塊だ。


「ちょっと下がってくれよアマンダたん、今からバイキングを始めるからさ」

「わかりました、胃もたれしないよう気を付けてください」

「漢方用意してあるから大丈夫さ。さぁて、Come,on Monster!」


 俺様が腕を突きあげると、盛大な花火が上がった。魔物を呼び寄せるスキル、【エネミーフラッシュ】だ。

 レベリングをする時に使う奴でな、カインの修業時代、よくこいつで魔物を呼んでは戦わせたっけ。懐かしいなぁ。


 そんな記憶のアルバムをめくっていたら、来たぜ魔物が。

 根っこを足代わりにして、どったんどったん走ってくる、肉食植物のモンスター。マンイーターだ。口に当たる花弁から、消化液をだらだら垂らしてやがる。そんなのが群れを成してやってきていた。


「こいつは、サラダの食べ放題だな」


 ただ、俺様は肉の方が好きなんだ。ベジタリアンじゃなくてごめんな!

 マンイーターに殴りかかり、千切っては投げ千切っては投げの大立ち回りだ。殴る蹴るに飽きたら魔法で焼いたり水責めにしたり、時には地面に埋め込んだりと。色んな方法で魔物退治を楽しませてもらったよ。


 にしても、ご機嫌な右腕だ。生身の腕より良く動く。おまけに金属製の指だからピッケル無しでギターも弾けるぜ。

 数秒で全滅して、あとに残るは魔物だった残骸のみ。これで能力を奪う条件は揃ったはずだが……。


【スキルを獲得しました】


 不意に、頭の中にアナウンスが聞こえてきた。


【スキル:消化液、スキル:触手、スキル:獲物サーチ。以上三種獲得、記録しました】

「おお、使えるようになるとこうなるのか」


 手のひらを広げると、ホログラムが浮かび上がる。使えるようになったスキルと、使用条件、効果の説明か。へぇ、こいつは分かりやすくていいなぁ。


「かなり緩い条件で入手できるようですね」

「そうだなぁ。へへ……」

「どうされました?」


「いんや、ちょっと新鮮な気分になっただけさ。俺様一人で片づける、手は出すなよ」

「かしこまりました。貴方の気の向くまま、ご自由に」

「ありがとなアマンダたん。んじゃあお言葉に甘えて」


 もう一回エネミーフラッシュを使う。次に出てきたのは、ゴブリンか。緑色の小鬼がこん棒やら錆びた剣やら引っ提げて、俺様に襲い掛かってくるぜ。


「サラダの次はバーベキューか! 丁度ケバブが食いたい気分だったんだ、刻んだキャベツと一緒にサンドしてやるよ!」


 早速スキルを使ってみる。ゴブリンを捕まえたいと念じるなり、【触手】が発動した。

 右腕から無数の赤いオーラがほとばしり、触手となって飛んでいく。ゴブリンを絡めとったり、鞭のように打ち据えたりと、大活躍だ。


「魔物のスキル、便利なもんだ。んじゃ、【消化液】は?」


 掌に意識を集中させると、水鉄砲のように噴出して、ゴブリンを溶かしていく。おお、これは……エキサイティング! すげぇ快感だぜ!

 隻腕になって人生暗くなるどころか、新たな楽しみが起こりすぎてたまらねぇや。ハワード・ロックの人生は、最高だぜ!

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