79話 だめだこのコンビ
ぎらつく太陽、焼けるような砂の大地。いやぁ、やっぱ砂漠ってのは熱いぜ。
エルマーのラブコールに応え、ガーベラ聖国の中部に位置する広大な砂漠、ライブル砂漠に来ている。そのど真ん中にサンドヴィレッジが存在しているのさ。
「砂漠にある村」、そんだけ聞くと野暮ったいイメージしかわかない場所だが……俺様ここ大好きだわ♡
「砂漠のど真ん中にある温泉地……なんたる眼福なのでしょう♪」
宿の屋根からサンドヴィレッジを一望しているが、あちこちに温泉施設のあるサイコーのロケーションだぜ。
この砂漠には地の聖獣ミトラスが住んでいる。そいつの影響なのか、ライブル砂漠のど真ん中には水脈に加えて、膨大な温泉脈が走っているのだ。
だから名前に反してトロピカルな景色の広がるリゾート地となっていてなぁ、観光客がわんさかいてハッピーな場所なんだこれが。
「しかも俺様的にうれしいのが……露天風呂があるって所なんだよなぁ♪」
俺様は裸眼で天体観測ができるくらい目がいいんだ。ここからだと……美しき妖精達が生まれたままの姿で湯あみをする姿をじっくり堪能できるわけである♡ 爆乳美乳ぺちゃぱいと選り取り見取りの見放題だぜ♡
「うへへ、合法的に覗きが許されるとか……ここは天国か!?」
『地獄に落ちろ妖怪ハレンチ賢者!』
突然脳天に斧とハンマー直撃! 目から火花が飛んじまった。
「全く、どこにも居ないと思えば……案の定スケベしおってからに」
「エルマーも何を考えているのやら……ハワードをここへ連れてくるなんて、ライオンに豚を与えるがごとき暴挙ですよ」
「いやいや、これはレディ達が暴漢に遭ってないか監視するための防衛行為なのだよ」
「鼻血垂らして言うセリフじゃないでしょーが」
「これはあれだ、タバスコ。それにしても、しかし……♡」
砂漠で注意すべきなのは直射日光だ、何しろ他の地域よりも日焼けや日射病の危険がデンジャーだからな。
な・の・で、俺様直々のアドヴァイスで適した服装をチョイスしたわけであるが♪
「ねぇ、なんか矛盾してない? こんな露出度の高い服着てたら逆に日焼けすると思うんだけど……つーかこれじゃ私ら痴女じゃん……」
「まぁ、マントがありますし、多少はマシですが……ハワード、本当にこれが砂漠に適した服装なのですか?」
二人が着てるのは砂漠の踊り子衣装。布面積が少ないセクスィーなコスチュームに俺様のハートもずっきゅんよ♡
「当然! いいか、砂漠の服装で大事なのは肌と服に隙間を生んで日陰を作る事だ。そこで! マントで日陰を作ったら熱がこもらないよう薄着になるのが一番効果的なのだよ!」
「……私ら以外にこんな服着てる女一人も居ないんだけど?」
「ですが、ここへ来る前の砂嵐で服がじゃりじゃりですし、他に着る服がありませんからね」
ありがとう自然災害、お陰で最高のハーレムパーティが出来上がったぜ☆
「砂漠化最高! リゾート万歳! いっそ世界中を砂漠に変えちまおうかなー」
「やめんか! 世界を滅ぼす気かあんた!」
「エロで世界が砂漠化したらギャグとしても笑えませんよ」
「ガチで怒らないでくれよ、実現できるけどやらないから。というより温泉行こうぜ温泉! ここへ来て何もしないとかありえんだろ?」
「ええそうね、あんたが覗きを働かなければの話だけど」
「万一覗いたらお仕置きですからね」
「しないしない、俺様は覗きしないから」
忘れたようだな、俺様には【影魔法】【擬態】【透明化】【分身】のドスケベスキルがある事を。
それらを駆使すりゃメモリアルオーブを利用して盗撮し放題よ♪ いやぁザナドゥの連中ってば俺様に最高のプレゼントをしてくれたなぁ☆
―がぶっ
「あ? どしたのがるる、頭にかじりついて」
「貴方がドスケベスキルを揃えているのを忘れるわけないでしょう?」
「だからあんたはがるると入りなさい。幸いここ、ペット同伴可だから」
「いいですかがるる、ハワードがスキルを使おうとしたら容赦なく噛み砕きなさい」
―がるるっ
「そりゃないでしょーよ! 四十代男子の楽しみ奪うとか鬼かお前ら!」
「あんたがザナドゥからパクったスキルをろくでもない事に使おうとするからでしょうが!」
結局、がるるに監視されて俺様の野望は潰えましたとさ。ホーリーシット!
◇◇◇
女体を拝むのは適わなかったが、アマンダたんもリサちゃんも超が付く美女だ。
セクスィーな衣装をまとった美女を侍らせ闊歩するなんて男の夢を実現してんだ、俺様マジで幸せ者よぉ♪
リゾート地なのもあって人通りが多い分、男どもの羨ましそうな視線が目立つぜ。いやぁ優越感優越感♡
「テンション高すぎない?」
「こうした場所が大好きな人ですから。ハワード、くれぐれもカジノには入らないようにしてくださいね」
「そうそう! あんたがギャンブルやったら絶対負けるんだから。旅費無くなるのは勘弁してよね」
「ふっふっふ、その点は問題nothing。すでに入って金増やしてきたから♪」
二人に渡すはリバウンドした魔法袋。それを見て二人は目をむいていた。
「……なんで? なんで勝ってるの? あんたババ抜きですら私に負けるくらい賭け事に弱いじゃない!?」
「まさかイカサマをしたのですか?」
「その通り。違法上等の裏カジノを見っけてな、そこでちこーっと小細工してやったのさ」
いっつも負けてばかりじゃつまらねぇしな、たまには豪快に勝ちたいじゃん。
「あんたさぁ、そんなの出来るなら最初からやりゃいいじゃない」
「遊びに魔法を持ち込むのは主義じゃないのさ。大勝ちで気分いいし、ぱーっと使おうぜ」
ってことで美女二人とバイキングへGO。好きなもんを好きなだけ食う贅沢、心が満たされるぜぇ。
けどなーんか忘れているような……なんだっけ?
「なぁ、お前あのダンジョン挑んだ?」
「ああ入ってみた。けどなんだよあれ、難しすぎるぞ」
ふと耳に冒険者の雑談が入ってきた。なんともなしに聞いていると、
「あのダンジョン、最近見つかったばかりでお宝探し放題だろ? 奥にはレアアイテムがあるみたいだし、ほかの奴らにとられるぞ」
「けどなぁ……厄介な罠が目白押しでどうしようもないじゃないか。俺達のレベルじゃとてもなぁ……」
「……ふーん、難攻不落の新ダンジョンか」
「行ってみるのですか?」
「気分も乗ってるし、暇つぶしに攻略してみるか」
ってことで冒険者にチップを渡し、場所を聞き出した。
がるるを走らせると、ちょっとしたお祭り騒ぎが目に入る。ダンジョンでレアアイテムをゲットしようと冒険者が殺到していた。
冒険者目当てに行商人も露店を開いているし、小規模の集落ができてんな。
んで肝心のダンジョンは、地下へ続く階段が見えている。蟻の巣みたいに地下に張り巡らされているんだな。
「ふーむ……罠まみれのダンジョンか」
「さすがの賢者様も警戒してるようね」
「いいや違う、俺様が気にしているのは別の事だ」
俺様がダンジョン探索に興味を持った理由もそれだ。
「このダンジョンにエロトラップはあるのか、重要なのはそこだ」
「はい心頭滅却しましょうね」
真面目な顔して言ったのに、アマンダたんが熱湯ぶっかけてきやがった。あまりの熱さに俺様悶絶よ。
「アホかあんたは! 頭にサキュバスでも住み着いてんじゃないの!?」
「エロトラップダンジョンは男のロマンだ! 襲い来る触手に弄ばれ、淫紋に悶絶し、拘束されてあれやこれや悪戯される美女の艶やかな姿! まさしく男にとって最高の極楽浄土なんだよ!」
「あんたを極楽浄土に送り込んだろかクソ賢者!」
「けどなリサちゃん、君だってエロトラップダンジョンには興味が出るはずだ!」
「んな女の地獄みたいな場所に興味がわくか!」
「爆乳化トラップ、あるよ」
…………
「しょーがないわねーそこまで言うなら私もエロトラップがないか確認してやろーじゃない」
「分かってくれたか同志よ。ではいざ行かん! 男の夢のエロダンジョン!」
「夢の爆乳目指して、今こそ挑まんエロダンジョン!」
『あ・そーれエッロダンジョン! あ・そーれエッロダンジョン!』
ガン! ゴン!
「目は覚めましたか?」
『はいごめんなさいお母さん』
「誰がお母さんですか」
アマンダたんのげんこつで俺ちゃんとリサちゃんにたんこぶが出来ちゃった。がるるが呆れたようにため息ついてやがる。
「はぁ……EのあんたにゃB(ほんとはA)の苦悩は分からないか……もうね、痴態晒してもいいから大きくしたいのよ、貧乳の苦悩が巨乳に分かってたまるかい……!」
「大きくても苦労の方が多いのですよ。それに最近、Eの下線部がなくなって困っていますし……」
「……は? いや確かに温泉で揉んだらなんか違和感あったけど……は?」
「リサちゃん、目が怖い」
「……なんでじゃあ!? なんで私はAすれすれのBのままなのに、なんで元からでかいアマンダに無駄なバフかかってんのよぉ! くっそぉ、このファッキンシスターめぇ!」
「Fだけにってか? ナイスジョーク」
血涙流すほど悔しいのか、リサちゃんはそのままでも魅力的なんだけどなぁ。
「まぁともかく、とっとと探索するか。十秒で終わらせるから待ってなよ」
「どうするつもりですか?」
「見てりゃわかる」
まずは【転移】で入ってる冒険者を追い出して、ダンジョンの入り口を掴む。あとは、
「おりゃっ」
っとダンジョンを引っこ抜く。砂漠が爆発して冒険者どもがあ然としてんな。
最深部にレアアイテムがあるとか言ってたから、【獲物サーチ】で探って、そこの壁に穴を開ければ、宝箱とごたいめーん、ってな。
宣言通り十秒で探索終了。美味しい所は頂いたぜ。
「ただまぁ、独り占めしちゃわるいしな」
【魔導砲】を接射してダンジョンを壊し、瓦礫の山にする。これなら厄介なトラップも魔物も全滅だ。
「お宝は自分で掘り返して見つけな。んじゃ、Adios adventure,s」
我に返った冒険者どもが群がって、お宝目当てに瓦礫を掘り始めた。なぜかそこにゃあリサちゃんの姿も交じってる。
「爆乳化トラップ……欠片でもいい、見つけ出して直せば私も理想のHカップに……!」
「やめときなさい」
つーか夢見すぎだ。




