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73話 信じるゆえに

「ふんふんふーん♪ 髪のお手入れ男の嗜み~ってな」


 今日も俺様は朝からイケメンだぜ、彼女に相応しい男であるために、身だしなみはきちんとしとかねぇとな。


「髭もおっけー、服装もばっちり決まってる! んじゃあ俺様、マーリンちゃん所行ってくるからねー」

「遅くならないうちに帰ってきてくださいね」

「わーってるわーってる、そっちも頼んでおいた件よろしく」

「かしこまりました」


 アマンダたんとのやりとりを済ませてから、ルンルン気分でマーリンちゃんの所へGOってな。

 いやーやっぱ恋するといいなぁ、視界がバラ色に染まって幸せな気分になるぜ。しかも相手は超美人なエルフちゃん! 付き合ったばかりだが、可愛くって最高の彼女だぜ。


「って事で待っててねぇんマーリンちゃーん☆ るんるんるんるんるーん☆」


 恋する事が若さの秘訣ってね。新しい彼女とのデートを楽しみましょー♡


 ◇◇◇


「ねぇアマンダ、あいつを野放しにしてていいの?」

「大丈夫です。ちゃんとお目付け役を派遣していますから」

「いやそうじゃなくて、ハワードの事好きなんでしょ。なのにあの色ボ賢者ってば色んな子に目移りして浮気してさ。目の前でそんな事されて我慢できるの?」

「出来ませんよ。出来ていたら殴ったり締めたり崖から落としたりしません、きちんと嫉妬してますから」

「あのツッコミ全部嫉妬から来てんのかい。だったら止めたりしてもいいんじゃない?」

「単なる下心満載ならば止めますよ、けど今のハワードはマーリンさんを救おうと動いています、それならば私も我慢くらいします。私は、誰かを救おうと必死になるハワードの姿が、好きですから」

「はー……凄いねアマンダ、私にゃ到底できないや」

「それに、どんなに他の女性を口説いたとしても、必ず私へ戻ってきてくれる自信がありますから」

「そうなの?」

「そうです。だから今は我慢、我慢です。ハワードから街長の周辺調査を頼まれていますし、私も動こうと思います。ハワードが動く間は私のマークも薄くなりますから、今のうちに情報収集しておかないと」

「あんま無理しないでよ、悩みとかあったら聞くからさ」

「ありがとうごさいます。リサさんも、豊胸以外であれば相談に乗りますよ」

「喧嘩売ってんのかてめぇこら」

「冗談です。ハワードの義手の調整、よろしくお願いします」

「はいよ。新しいギミックが結構面倒でさー、意外と時間かかっちゃってるよ。あいつには少し悪い事しちゃってるなぁ」

「ふふ、ハワードはその程度気にしませんよ。むしろ出来上がりを楽しみにする時間が出来たと喜んでますから」

「ポジティブな奴ねぇ。けど楽しみにしてくれるなら、やりがいも出るってもんよ」

「では、行ってきます」

「うん行ってらっしゃい。気を付けてね」


  ◇◇◇


 マーリンちゃんの家に着くなり、愛しのエルフちゃんが迎えてくれた。

 戸惑うような顔がキュートだぜ、もう思わず抱きしめちゃいたいなぁ♪


「というか抱きしめちゃおーっと! こんちゃーっすマーリンちゃーん!」

「きゃっ! 賢者様、あの、皆さん見てますからっ」

「俺様、見られた方が燃えるタイプなの。それに見せつけちゃおうよ、俺様達がこんな関係なんですーってさ」


 俺様の腕の中で赤面して照れるエルフちゃん。こんな風にハグしてくれる奴はいなかったんだろうなぁ、スキンシップに慣れてないのが見え見えだぜ。


「男性にこう、触れるなんてその……初めてで……どうしたらいいのか……」

「簡単さ、俺様に身を任せりゃいい。抱き合っているだけでも気分よくなるよ、はいリラックスリラーックス。髪も撫でちゃお」

「ひゃっ、くすぐったいです」

「ならマーリンちゃんも仕返ししてきなよ、彼氏相手に遠慮する事なんかないって」


 抱き合ったままイチャコラ、こいつはたまらんぜ。うーんどうしよう、そのつもりなかったはずなのにムラっとしてきちゃったなぁ。

 よし決めた、今日はお家デートにしましょう、そうしましょ♡ 夕方まで時間をかけてそりゃもう深々とした仲になれるスポーツでも堪能しちゃおうかしら☆


―わふっ


 なんて鼻の下を伸ばしたらだ。背中にのしかかる巨大なもふもふが一頭。


「あり? がるるじゃないのよどうしたの?」

―がるるぅ♪ はふっはふっ、ぺろぺろぺろ

「ちょっと、熱心に顔舐めてこないでくれる? なついてくれるのはいいんだけど愛情表現激しすぎ……わぷっ、マジタンマ、いや本当にタンマ! 息が! 息が出来ないから!」

―ペロペロペロペーロペロペーロ♪

「あっ、ね、ねぇやめて! のしかかって嘗め回さないでじゃれつかないで! ま、まじ息できねぇから! は、はふっ! もふもふに溺れて死ぬ! もふ死するぅぅぅっ!?」

―ペロペロペロペロペロペロペロペロロロロロロロロロ

「あ、アマンダたんの差し金だなてめぇ! くっそぉぉぉぉぉっ!」


 がるるの嘗め回しにより俺ちゃん、窒息寸前まで追い込まれましたとさ。ホーリーシットだぜ。


  ◇◇◇


「あの、大丈夫ですか?」

「あーうん平気平気。俺様頑丈だから、なっがるる?」

―わふっ♪


 がるるがたっぷりキスしてくれたおかげで上半身がぬるぬるだ、とりあえず炎魔法で乾かしとくかね。


「がるるとも暫くスキンシップしてなかったし、一緒に来るか。もふもふの足が居るのも便利だしな。ところでマーリンちゃん、俺様のために用意してくれた物があるんだって?」

「ええ、その、賢者様朝ごはんは」

「まだ食べてないよ、そう言ってくれるって事は?」

「は、はい……上手じゃないんですけど、作ってみました。よろしければ、その」

「勿論頂くさ」


 出してくれたのはパンにベーコンエッグ、そしてサラダと簡単な物だ。だけどマーリンちゃんが苦手な料理を頑張ってくれた、そいつが最高のドレッシングだぜ。


「なんだか、楽しいです。こうして一緒に食べてくれる人、今まで居ませんでしたから」

「一人で食ってりゃそりゃつまらねぇよなぁ。けど安心しな、俺様がいる限り君に寂しい想いはさせやしないさ。でもってごちそうさん、美味かったよ。お礼に皿洗いしないとな、家事の分担カップルの基本よ」

「そんな、申し訳ないです。左腕だけなのに」

「気にすんなって、なんなら見てな」


 魔法で皿を浮かせて、残った左腕でお皿をキュキュっと洗いましょう♪ 俺様にかかりゃあ皿洗いなんて楽勝よ。


「洗い終わったらまた魔法で皿を乾かして~~~~はい完了。見事なもんだろ」

「本当です、ただのお皿洗いが凄く楽しそうに見えました」

「一流の魔法使いは皿洗いすらエンターテイメントにできるのさ。もっと尊敬したまえ、ふぉっふぉっふぉ☆」

「ふふっ、なんですかその笑い方」

「賢者らしく威厳を込めてみたんだけど、ダメかね?」

「全然威厳ないですよ、陽気なおじいさんみたいで……あ、すいません失礼なことを!」

「別に失礼でもなんでもないでしょうよ、俺様達付き合ってんだし、些細な事は気にしない。いいね」


 頭をなでなでして慰める。気兼ねない会話もできるくらいには慣れてくれたようだね。


「がるるも来ているんなら好都合だ、レイクシティの隅々まで探索してみよう。ガンダルフの足は世界一だ、そいつを体験しないと人生損するぜ」

「じゃあ、一緒に乗ってもいいですか?」

「No problem! ってなわけだがるる、いっちょ頼むぜ」

―がるるっ!


 快く引き受けてくれたか、気前いいぜ。美女一名様、もふもふ旅行にご招待ってな。

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