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3話 新しい右腕を探しますか。

 王都を離れてから二日。俺様は適当にぶらぶらと、草原を歩いていた。

 アマンダたんには安住の地を見つけたって言ったが、あれ嘘なんだよな。だって適当な理由付けとかないとあの子、絶対引き留めようとしただろうしさ。


 こっちはカインから逃げるためにとっとと教会辞めたかったんでね、手っ取り早い方法を選ばせてもらったぜ。

 行き先なんて決めてねぇけど、まー旅は気のまま風のまま、ってね。ぶらりスローライフの旅といきますか。ただ、目的くらいは考えとかねぇと長続きしねぇわな。


「となると、分かりやすいのはこいつか」


 右腕、まるまる一本くれてやったからな。隻腕の男ってのも中々いなせなもんだが、俺ちゃんに惚れた女が心配しちゃうもんなぁ。それに案外不便だしよ、服着替えるのは勿論、自家発電も一苦労だ。

 って事で、まずは俺様の義手を探しに行くとしましょうか!


「となれば、行き先も決まったな」


 魔王討伐の旅でコハクの杖が壊れた時、調達するため立ち寄った魔法都市、ヘルバリアだ。

 魔法都市の名前の通り、魔術関連の研究を行っている街だ。新たな魔法の開発は勿論、魔法道具も最先端の物が揃っていてな。確か、生身のように動かせる義肢も作っていたはずだ。

 そこで義手を調達して、ついでにかわい子ちゃんと仲良くなれればなおよしってな♪


「そーいや、ヘルバリアで口説いた子が居たっけな」


 もう一度会いたいぜ、AすれすれなBカップの控え目ちゃんだが、すっげーきゃわいい子なんだよなぁ。

 そんじゃまぁ早速、ヘルバリアへ向かいましょっかね。


 行った事のある街へ直接行ける魔法スキル、【転移】で行くのもいいんだが、そんなん情緒がねぇよな。

 徒歩でゆったり行くもよし、途中の馬車をヒッチハイクして向かうもよし。いっやー気分がエキサイトしてきたぜ。


 だけど俺ちゃん、掟破りのおっさんだからぁ……!


「走って都市に行くとしよう!」


 俺様にかかりゃあフルマラソンも短距離走に早変わりだ、普通だったら馬車で二日はかかる距離だが、俺ちゃんの健脚なら一分で着くのよねん。

 引退後は大人しい男になりたかったが、やっぱり無理だな。俺様のスローライフは、騒がしいくらいが丁度いいぜ!


 人生誰しも一度きり、心からとことん楽しまなくちゃな!


  ◇◇◇


 山を飛び谷を越えると、ヘルバリアが見えてきた。

 クリスタルを思わせる、透明感のある塔を中心に置いた綺麗な都市だ。建築物も大理石で作った真っ白な家が並んでいて、魔力の結晶である緑の球体がふわふわと浮かんでいる。


「さってと、あそこに俺ちゃんの眼鏡に合う腕は見つかるかねぇ」


 俺様が再会を熱望するあの子は腕のいい魔法具職人。できればあの子に作ってもらいたいねぇ。


「……けて……た……て……!」


 いざヘルバリア、ってところで、どこからか助けを求める声が聞こえてきた。それも……プリティなキティの声が!


「どこだどこだ? 女をいじめる奴は許さねぇぞぉ? 世界の女の味方! ハワード・ロックが助けに行くぜ!」


 木を飛びまわって現場に着くと、馬車が魔物に囲われている。この辺を縄張りにする獣、ワーウルフか。


「いや、どこかへ行って! 誰か、誰かぁ!」


 荷台に隠れて姿は見えねぇが、声からして美女なのは間違いない。俺ちゃんイヤーは声色で女の美醜を判断できるのだっ。


「はぁーいキティ! 君の愛する隻腕ナイト、ただいま参上!」


 颯爽と獣の輪に飛び込んで、ワーウルフ達の気を引いた。突如サーカスに乱入してきたオーディエンスにいきり立ってんなぁ、牙むき出しにして威嚇してるぜ。

 ま、雑魚がいくら集まろうが、この最強の賢者ハワード様に勝てるわきゃねーだろ。


「Come on Baby! Lets Lock!」


 ワーウルフどもが襲い掛かってくる。それを俺様は回転蹴りでぶっ飛ばした。

 アクロバティックな蹴り技に成す術もなくやられていく狼たち。荷台から女の子の「すごい」って声も聞こえて俺ちゃんご満悦。


 力の違いを思い知り、ワーウルフどもが去っていく。殺しちゃったら臓物ぶちまけて女の子を汚しちまうからなぁ、手加減してやったぜ。

 さてとぉ、キティのお顔を拝見するとしましょうかね。


「あ、ありがとうございます! 危ない所を本当に……!」

「オーケーオーケー落ち着いて。お礼はホテルで一発して頂ければ結構で」


 馬車の中のキティと目が合った。ありゃ、どうも見た顔だねぇ。

 ショートの茶髪に綺麗なはちみつ色の瞳、控え目ぎりぎりBカップバスト。ちょっとスレンダーな体型で、つなぎ姿がよく似合うボーイッシュなガールは!


「あ、ああーっ! 女の敵ぃ!?」

「おんやまぁ! 俺ちゃん熱望のカワイ子ちゃーん!」


 魔王討伐の旅で出会った魔法具職人、リサちゃんじゃなーい。


  ◇◇◇


「いっやー馬車に乗せてもらってありがとね。俺様走り回ったから疲れちゃってぇ」


 甘い香りのする荷台に乗っけられた俺様は、久しぶりに会ったキティ、リサ・ライアットちゃんに微笑みかけた。

 ヘルバリアに訪れた時、コハクの新しい杖を作るのに協力してくれた子だ。職人らしく勝気な子なんだが、たまーに見せる弱気な所がまた可愛いんだよねぇ。


「……助けてくれた事は、感謝してる。でもだからって貴方が私の街でしでかした事が許されたわけじゃないんだから」

「悪かったって、ちゃんと謝罪したじゃない俺様」

「女湯覗きを土下座程度で許されると思ったら大間違いだからね!」


 おっしゃる通り。半年前ヘルバリアに来た俺様は、かぐわしい女の香りに誘われて、大衆浴場の女湯覗きを敢行したのだ。

 だけどリサちゃんに見つかって、それはもう見事にボッコボコにされちゃったのよねぇ。


「おまけに下着ドロまで仕出かして……全く、こんなスケベ親父が勇者パーティの一員なんて。しかも強い所がまたムカつくしさ」

「強いのは当たり前よ、俺様だからな。街に変わった事はないかい?」

「お陰で何ともないわ。平和その物よ。それに私達自警団が憲兵と共同で守っているしね」


 ここはアザレア王国の重要都市って事もあり、魔王軍に集中的に狙われていた場所だ。

 リサちゃんは自警団に入っていてね、魔法具職人として働く傍ら、自警団の隊長として最前線に立って街を守っていたいい子なんだよ。レベル37と腕前もそれなりに高いしな。

 そんな子が住むこの都市に、四万もの軍勢が襲ってきやがってな、それを俺様とカインが守ったんだ。


「あんたとカインが戦ってくれたから、街は無事だったし、それは……感謝してる」

「そうだろうそうだろう。もっと感謝してくれたまえ、ついでに夜のベッドで深いキスをしてくれるともっと嬉しいんだけどなぁ」

「ふんっ!」


「おっと回避! 乗馬鞭で殴らないでくれよ、俺様されるよりする方が好きなんだ」

「だまらっしゃい。……ところで、さ。どうしたの? 右腕……」


「いやなに、右腕が俺様に愛想尽かしたみたいでさ、三行半突きつけてどっか行っちまったんだ。おかげで何かと不便でね、耳垢も上手くほじれなくてよ。ヘルバリアなら具合のいい義手を作れる職人さんがいらっしゃいますし、ぜひ作ってもらおうと思ってな」


「それって、私の事?」

「正解。頼めるかい? こいつはナンパじゃない、君の職人としての腕前を見込んでの注文だ。「職人の加護」を持つ君なら、俺様も納得できる最高の義手を作ってくれるだろ?」

「……真面目な依頼なら、ちゃんと引き受けるわよ。貴方が唸るような義手を作ってあげる」

「感謝するぜ。おっ、門が見えてきたな」


 久しぶりのヘルバリアだ、ついでに観光するのも悪かねぇな。


  ◇◇◇


 馬車に揺られながら、俺様はヘルバリアを眺めていた。

 ヘルバリアの中央に建っている塔は魔力を増幅させるブースターだ。この都市に入るだけで魔力を消費せず魔法を使えるようになるから、自身の消耗を気にせず魔法の研究に没頭できるんだなこれが。

 んでもって、最新の魔法や魔法道具を求めて、沢山の魔法使いが集まっている。かわいい魔女ちゃんもたくさんいて、うーん。誰を食べちゃおうか目移りしちゃうねぇ。


「こら、変な気起こすんじゃないわよ。恥かくの私なんだから」

「あんれまぁ、ヤキモチやいちゃってんの? いっやー俺ちゃんも捨てたもんじゃないわねぇ♡」

「馬鹿な事言ってんじゃないわよ。ほら、私の家着いたから。来なさい」


 リサちゃんの家は工房も兼ねている。お邪魔すると、沢山の魔法具の試作品が並ぶアトリエが広がっていた。

 リサちゃんは水を飲むと、金槌片手に歩み寄ってきた。


「それで、ご注文は? 具体的にどんな腕が欲しいの?」

「そうさなぁ」


 傷口に触れ、考える。

 ふと思い浮かぶのは、カインの泣き顔だ。あいつは俺の大事な相棒でな、あいつの涙だけは、忘れようにも忘れられねぇ。

 となれば、答えは決まってる。


「強い腕だ。俺様の力を十全以上に発揮できる、最強の腕を作ってほしい。出来れば見た奴が、もう大丈夫だって安心するような、ヒロイックな腕をな」

「無茶な注文してくれるわね、魔王が居なくなったのに、強さを求める必要なんてないじゃない」

「いやぁ、これがあるのさ」


 俺様はよ、大事な奴が泣いているのを見るのが、凄く嫌なんだよ。

 だから俺様は最強で居続けなきゃならねぇ。俺様の大事な連中が、笑って過ごして居られるように。俺様に期待してくれる奴らの中の俺様が、最高の俺様であり続けるために。

 ハワード・ロックは最強の賢者であり続けないといけないんだ。


「それにほれ、強い方が女の子とお近づきになりやすいじゃなぁい? やっぱ男は腕っぷしが強くないとモテねぇからなぁ♡」

「……あっそ。良くも悪くもブレないわねあんた」

「自分磨きに余念がないだけさ」

「はいはい。それじゃ、上脱いで。体の寸法取るから」

「ついでに下も脱いじゃおうか?」

「その粗末な魔法具引っこ抜いてやろうか?」

「失礼な、俺様のハワードは伝説の聖剣よ?」


 なんて事言ったら金槌で殴られた。額にケツの穴増設してくれなんて頼んでないぞ。

 とりあえず半裸になると、リサちゃんは驚いた顔になった。


「やっぱ、凄い肉体してるわね……筋肉ガチガチじゃない」

「まぁな、ドワーフでもこんな肉体美を持つ彫刻は作れないだろうさ」


 俺様の体はオリハルコンのように鍛え上げられ、筋骨隆々ムキムキよ。どんな女の子でもお姫様抱っこが出来るよう、毎日ハードな筋トレしてんだよねぇ。


「ちょっと触ってみていい? ちょっとだけ、ちょっとだけだから」

「ちょっとと言わず、どうぞ好きなだけお触りください」


 女の子の頼みには全力で応える、それがハワード・ロックの流儀だ。男の頼みは受けないけどね。


「ひゃう!? 何お尻触ってんの!?」

「そこに女体があるからです」


 ちゃんと理由を答えたのに、アッパーで殴られた。俺様セクハラされてるのに理不尽だわぁ。

 俺ちゃんのマッスルボデーを堪能した後、リサちゃんは改めて俺様の体を測り始めた。左腕の長さや肩幅、それと傷口の具合。俺様の新たな腕を作る為のデータを集めていく。


「うん、これでよし。まずは日常生活用の義手を用意しとくわね、片腕のままじゃ不便でしょう?」

「サービスいいねぇ、お願いしちゃおうかな」

「じゃあ待ってて、十分もあればできるから」

「あんれま速いのね」


 って事で見学していると、ものの数分で作ってくれたぜ、マネキンの腕。

 ベルトで留めて、傷口につなげると、マネキンの腕を思い通りに動かせた。へぇ、即席でもちゃんとしてるねぇ。

 リサちゃんの職人としての腕前は超一流だ。即興品でも手を抜かない子だし、暫くはこいつで過ごすとしますか。


「あくまで応急処置の腕だから無茶しちゃだめよ。本命の腕が出来るまで、変な事しちゃだめだからね」

「その本命の腕はどんくらいで出来そうかしら?」

「一週間かしら。貴方くらいの強者に見合うとなると、それくらいの時間が必要よ」

「ふーん? そいじゃ、暫くはここでぶらぶらするかね」

「ぶらつくのはいいけど、この街は全域禁煙よ。前来た時いきなり葉巻をふかして驚いたんだから」

「安心して頂戴、俺ちゃん葉巻はやめたから」


 片腕じゃ火をつけるのが意外と面倒でな。丁度いいと思って、本格的に禁煙する事にしたのさ。


「それでも女遊びはやめらんねぇんだよなぁ、やっぱり俺様ダメ親父♡」

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[良い点] この主人公のノリだとサイコガンつけそう (小並感) 面白いですね!
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