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11話 聖獣ゲットだぜ

 俺達の通報を受け、リサちゃんが数名の自警団を連れてやってきた。

 ガンダルフを見てリサちゃん達は驚き、感嘆と声を上げていた。


「ガンダルフ、聖典で読んでいたけど、本物を見るのは初めてだわ。凄く綺麗……でも、こいつら何者? ただの密猟者が捕まえられるような相手じゃないわよ?」

「ああ、きちんと聞き出しておいたよ」

「私達は説得の仕方も心得ていますから」


 そりゃもう、俺様とアマンダたんで“丁寧”に“優しく”聞いてあげたよ。


「こいつらは、ザナドゥの構成員だ。使った狩猟道具も高品質の最新式だしな。ガンダルフを捕らえたトラバサミは、レベルダウンの効果を持ってたらしくてな。そいつでガンダルフを弱体化させて、反抗できないよう痛めつけたんだ」

「なんて奴らなの……早くとっ捕まえないと!」


「ああ、解決のためにリサちゃんにはバックアップを頼みたい。君はアマンダたんと一緒にガンダルフを守ってくれるかい? 事後処理も手伝ってくれるとありがたいな」

「あー……そのために私らを呼んだわけか。わかった、任せといて。あんた一人の方が手っ取り早く解決できるもんね」


「私達が責任をもって守ります。ハワードは心置きなくザナドゥをぶちのめしてきてください」

「アマンダたんの仰せのままに。待ってろガンダルフ、お前の仲間の仇は俺様が取ってやるからな」

—ぐるるるる……


 頭を撫でてやると、ガンダルフはじっと俺様を見つめてきた。ガンダルフは人間ばりに頭がいい、もしかしたら、俺様の言葉を理解しているのかもしれないな。

 これ以上、こいつを【テイム】で縛り付ける必要はないか。


「【テイム】解除」

「ちょ、ハワード!? それ解いちゃったら襲い掛かってくるんじゃ」

「No problem、騒がず見ていなお嬢ちゃん」


 スキルを解除しても、ガンダルフは動かない。やっぱり俺らが敵じゃないって理解したようだな。


「ほらな、この俺様の優しい心を理解してくれたんだよ、なー」

—がるるっ


 ガンダルフが「そうだ」と言わんばかりに頭をこすり付けてくる。くははっ、毛皮がもふもふだ、癒されるぜ。


「ガンダルフが懐いてる、人に懐くような生き物じゃないのに」

「ふふ、ハワードは規格外の人ですから」


 わかってるねぇアマンダたん。最強賢者は聖獣ですら心を許す男なのですよ。


「そんじゃあ行きますかね、野生動物をいじめるようなマザファッカは、家畜のえさとして安く卸してやるとするさ」


  ◇◇◇


「ほっほっほ、またここへ来るとは、お前さんも物好きじゃのう」

「爺さんの情報は使えるからなぁ。期待してるぜ」


 俺様は酒場にて、リサちゃん騒動で世話になった情報屋の爺さんと会っていた。情報は金の力で手に入れた方が手っ取り早いからなぁ。


「最近、密猟者の目撃情報とかあるかい? それも特段に怪しい奴だ」

「あるぞいあるぞい、恐らくお前さんの眼鏡にかなうはずじゃ」

「へえぇ? 詳しく教えてくれ」

「この数ヶ月間、不自然な馬車がおってな。ヘルバリア近くの森に入っては、街に立ち寄らずに去っていくんじゃよ」

「ほう、具体的な場所は」

「地図を出してくれるかの」


 爺さんが地図にポイントを書き込んでくれた。これで悪党どものしっぽはつかめたな。


「噂ではザナドゥの構成員らしいが、お前さんの事じゃ、どうせ行くのじゃろう?」

「まぁな、俺様に喧嘩を売ったんだ、親玉引きずり出してきちんと清算させなきゃ気が済まねぇからな」

「健闘を祈るぞ、くれぐれも気をつけてな」

「あんがとよ爺さん。マスター! この爺さんにマティーニ作ってくれ。俺様の奢りだ」


 丁度いい、雑草の根っこを、しっかり断ってやろうじゃないの。


  ◇◇◇


 爺さんが指定したポイントは、森の中にできた広場だ。

 到着して地面を調べると、真新しい車輪の痕が残っている。人の出入りがあったのは間違いなさそうだ。


「さて……と」


 車輪痕を追っていくと、不自然に途切れている場所がある。同時に、一本の木へ向かう足跡も。

 その木を調べてみるが、不自然なところはない。ここは、魔物のスキルの出番だな。

 デススネークから奪ったスキル、【ピット】を使う。探知スキルの一種で、熱源を探り、暗闇でも目が利くようになり、同時に指紋も見れるようになる優れ物だ。

 目を凝らすと、幹の一部に大量の指紋がくっついているのが見えた。


「おっ、スイッチがある」


 押したら、広場の中心に馬車が通れるくらいの大穴が開いた。こんな所に隠し扉があったのか。

 そういや、聞いた事があるな。ヘルバリアには万一に備えて、市民が脱出するための地下道があるって。

 のぞき込めば、回廊が伸びている。【ピット】のおかげで車輪の痕もくっきりと見えた。


「悪人を出品するオークションかな? そんなのに来る客なんざ俺様くらいなもんだぜ」


 そんじゃま、全員残さず落札しましょうかね。

 回廊を進んでいくと、徐々に人の気配がして、やがて広い場所にさしかかった。

 大量の馬車が停まっていて、魔物が入った檻や木箱、金庫と言った物が整然と並んでいる。でもって、いかにもな男どもが中央にたむろしていた。


「何者だ貴様?」

「見知らぬ顔だな、身分証を見せろ」


 俺様に気付いて、男どもが近づいてくる。ぶちのめす前に、情報を吐いて貰いましょうかね。


「いやぁーすんません、身分証は落としちまいまして。あ、俺っちはガンダルフ捕縛班の使いっぱしりなんすけど」

「む、ガンダルフか。遅かったではないか、予定より一時間遅れているぞ」


 どーせ末端の顔なんざいちいち覚えてねぇだろうからな、あっさりと信じてくれたぜ。


「ほんとすいませんねぇ。にしても、物々しい空気ですよねぇ。なんかあったんですか?」

「ふん、先日、ドラッグ班が捕まってな。街の警戒が強まったので、一度退却し体勢を整えるのだよ」

「我らの商売を邪魔した者には、必ず制裁を加えねばならん。だが隻腕の中年オヤジはアビスドラゴン以上の力を持つと聞く……本部に連絡し、早々に消さなければ」


 おい、こんなイケメンを捕まえて中年オヤジってのは無いんじゃない? ぶっ殺すぞ。


「だが失態したまま戻れば、我らの身も危うい……ガンダルフは生命線なのだ」

「ジャック様はガンダルフをご所望だ、連れて来れれば、この失態も挽回できよう」


 ふーん、ジャックか。ザナドゥの幹部クラスの名前だな。そいつがヘルバリア方面を管轄している奴ってわけね。

 いくつか話をしてみたが、これ以上有用な情報はなさそうだな。って事でスパンキングのお時間だナードども!


「どうせ有給休暇溜ってんだろ、バカンスでも楽しんできな!」


  ◇◇◇


 数秒持たずに連中は気絶させた。今頃夢の中でメスのオークに絞られている頃じゃねぇかな。

 全員をふんじばってから、リサちゃんに事件解決を報告、見事お縄を頂戴したぜ。


「それにしても、思った以上にザナドゥの手が回っているわね……このままだと、幹部クラスが襲ってくるんじゃ……」

「ジャックってやろーか。まぁそうだねぇ。下手すりゃ、ヘルバリアに直接攻め込んでくるかもしんねぇわなぁ」


 まぁ、そうなったらそうなったでどうにかするさ。ヘルバリアには俺様が居るからな。

 今はザナドゥよりも、ガンダルフだ。


 連中の馬車には話に聞いた通り、防腐処理をしたガンダルフの死体が積まれていた。酷い暴行を受けた後があり、連中が言う事を聞かせようと虐待したのが分かった。

 残されたガンダルフに許しを得てから、森の奥の人が来ない場所に埋葬する。一応、俺様は元僧侶だ。きちんとした墓標を立て、安らかに眠れるよう祈りを捧げた。


「俺達にできるのはこれくらいだ。きちんと供養したから、苦しまずに天国へ行けるはずだぜ」

—くぅーん……


 ガンダルフはお礼を言うようにすり寄ってくる。もふもふの毛皮がたまらないぜ。


「お前はちゃんと故郷に戻してやるよ。バラルガ山脈は一度観光で行った事がある、【転移】ですぐに連れて行けるぜ」

—わふっわふっ! ごろごろごろ♡


 転移を使おうとしたら、ガンダルフにのしかかられた。体をこすり付けて、顔をべろべろ舐められて……なんだぁこりゃ。


「おいおい、どうしたよ? 故郷に戻らないのか?」

—ばうっ! ばうっ!


「あの、ハワード。もしかしてガンダルフは、貴方を主人と認めたのでは?」

「あんだって?」

「聖典では、ガンダルフは主と認めた者に絶対の忠誠を誓うと言います。貴方はガンダルフのために尽力しましたから、その恩義に報おうとしているのかもしれません」

「あー……そうなの?」

—わふっ♪


「おうおう、ご機嫌な返事してくれるじゃないの。俺様についてきちまったら、故郷に戻れなくなるぞ? それでもいいのか?」

―ばうっ!


「……子供のくせして、仲間よりも俺様を取るっていうのかい?」

―ばうっ!


「マジかよ、そこまで俺様に惚れ込んでくれたのか。こりゃあ嬉しいねぇ。なら断る理由はねぇな。言っとくが、俺様は汚い大人だぜ? お前が帰らないってんなら、絶対帰さないからな」

―わぉーん!


 覚悟の上だってか。へへ、流石ガンダルフ、肝が据わってらぁ。

 ガンダルフが足になってくれりゃあ、旅立つ時すげぇ助かるぜ。となると盗難防止をしとかないとな。


「冒険者ギルドに申請すれば、パートナーアニマルとして登録出来るはずよ。でも、ガンダルフは絶滅危惧種よね? 聖獣を登録した例なんてないし、出来るかな……」

「保護目的で一時登録するって言っとけばなんとかなるんじゃね? 俺様世界を救った賢者様だし、肩書でごり押すとするさ」


 ギルドに馬などの動物を登録しておけば、盗まれそうになった時、防御魔法が発動して守ってくれるんだよ。

 ガンダルフをギルドに連れて行ったら、案の定登録に手間取っちまった。でもどうにか申請が通って、はれてガンダルフは俺様のパートナーとなった。

 右足にアンクルを付ける。このアンクルがガンダルフを守る貞操帯なのさ。


「足輪の方が苦しくなくていいだろ? お前さんメスみたいだし、おしゃれには気を遣わないとな」

「……これで彼女は私達のパートナー……ガンダルフがパートナー……!」

「アマンダたん?」

「……うっわーい☆」


 アマンダたんは歓喜の雄たけびと共に飛びついて、ガンダルフを撫でまわした。


「ふわふわもふもふくんかくんかすーはーすーはーなでなでもこもこきゃーもうかんわいいー! 夢じゃないよね、夢じゃないよねいやっほーい!」

「どうしたのアマンダ、急に壊れたんだけど」

「なぁに、アマンダたんは極度のもふもふマニアなだけだよ」


 ずっと我慢していた分、もふもふ欲求がエクスプロージョンしているみたいだな。表情がゆるゆるになってだらしない事になってるぜ。


—がうっ!


 んでもってしつこさに怒ったか、ガンダルフがアマンダたんの頭に噛みついて、もふもふタイムは強制終了しましたとさ。

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