幼少期編 02
父曰く。
魔法を使えるのは義務教育を終えて免許を取得した者だけ。学校は5年間、8歳になってから。
学校に行かないとそもそも魔法を使えるようにはならない。詳しくは学校で教わるようだ。
前世で見たアニメみたいに、自分で本を読んで取得する、みたいな裏ワザは使えないってか…。
…魔力あるんなら、使えんじゃない?そう思い父さんに聞いてみたが、魔法は魔具と呼ばれる道具がなければ使えないらしい。その魔具も、学校に行かないともらえないと…。
しかも魔法で犯罪などをすれば然るべき処罰を受けた後、免停か場合によっては免許取り消し。そうしたら専門の機関で取り直しが必要。
さらに無免許状態で魔法を使用すれば、魔力を封じる特別なアイテムを5年間装着させられる。
日常で使う魔道具も魔力を流さないと使えないので、通常の生活すら困難になる...と。
おいぃぃぃぃぃ!!!なにやってんだよファンタジー!!なんでそんなかっちりしちゃってんの!?
魔法でどかーんとか、なんつーか、「こんな幼い子供がなんかすごい魔法を…!」とかできないの!?
いや、目立つのはめんどいからパス。前もそーいうことあったし。
でも魔法を自由に扱えるのは憧れる…。んー。クラスで5番目の成績、くらいを目標にしてみようか。
「それとお前は飛行魔法に憧れてるようだが、あれは危険度も高い特殊魔法だ。だから資格が必要になるぞ。
父さんも母さんも持ってない。」
「えぇー!?くっ、くわしくおしえて!」
要するに。
飛行魔法のように特殊な資格が必要なものはいくつかある。
その資格を取得する方法だが…
「がっこう?」
「そうだ。学校には2種類あるんだ。ひとつ目はそれぞれ町村にある庶民の学校。義務教育だから学費はかからない。その分授業レベルも低いがな。
もうひとつは、国立学校。こっちは高い学費が必要だ。主に貴族が通ってるな。ここなら専門的な授業も受けられて、様々な資格を取得できる。他にも特典がいっぱいだ。」
「そっか…。」
やっぱり、お貴族様と俺ら庶民じゃあ教育格差もひどいんだな…。そんな気はしてたけど、うーん…。
俺は華族に生まれたこともある。その直前の生では孤児だったため、格差に戸惑ったものだ。上流階級の生活に慣れるまで大変だった。
上から下までいろんな人生を送ってきた。だからこそ、生まれで人生の全てが決まるってのは、やっぱ嫌だな…。昔は、それが当たり前だったはずなんだがな。
「じゃあおれは、しょみんはまなぶきかいもあたえられないのか…。」
ぼそっと呟いてしまった。父超びっくりしてる。
「お前、話の内容理解してたのか…!?すごいな!つか学ぶ機会とか、どこで覚えた?」
あれ、やっちゃった?どうやら、俺が魔法をすぐ使えなくてがっかりー。くらいにしか理解してないと思ってたらしい。
教育格差に悩む5歳児なんていねーよ!どどどうにか言い訳…!
「俺の息子は天才か!いやーはっはっはっ!!」
しかし父さんはあまり気にしてなかった。助かった…?
「安心しろ。庶民にも勉強する方法はいくらでもあるさ。貴族に比べりゃ道は遠いけどな。
例えば王立学校では特待生制度があって、優秀な子供には国が金を出してくれる。とはいえ入学までにある程度の学力が必要だから、この制度が適用されることは少ない。
そして普通の学校を卒業した後でも、意欲があれば上の学校に行ける。まあそれなりに学費がかかるから、大体働きながら通うな。
そうすりゃ優秀な奴は出世も可能だ。現に、城勤めの文官にも平民出身はわりといるらしいぞ。」
ほうほう。専門学校みたいなもんに行けるのか?それなら…よかった。ところで、
「おとーさんはべんきょうしなかった?」
たしか父さんは読み書きは最低限、計算は超苦手とか言ってた気がする。魔法は人並みに使えるとかなんとか。
「おう!めんどくせえからな!」
だっはっはっはっは!!!と、豪快に笑い飛ばす父。
うーん。わかっちゃいたけどダディ、あんた所謂脳筋だったんだな…。
よし!ひとまず魔法は頭の片隅に追いやっといて、時期になったら引っ張り出そう。
俺はこの人生で、やりたいことはまだ決まっていない。我が家は農家で、父さんと母さんが魔法を駆使して作物を育てている。
跡を継ぐのも悪くないな、とは思っている。でも…
前世で俺の願った通りならば、これが最後の転生だろう。もしくは次は皆と同じように、記憶をリセットされるはず。
だから、今回俺は一切の悔いを残したくない。日本を出たいと思ってたのがまさか世界を越えるとは予想外だが…まあ結果的によかった。なんてったってファンタジー!魔法!!王族に貴族!!王道ばんざーい!
土蜘蛛もある意味ファンタジーだったが…いや、あれはホラーだな。
俺はこの世界のことを知らなすぎる。いつ何がどうなってもいいように、選択肢は多く持ちたい。
まずは学校だ。当然、王立学校の特待生を狙う。こんな時のための前世の記憶、フル活用してやるぜ!文系はともかく理系はいいとこ行けると思う。
ひとまずはそんな感じか。在学中に将来の夢が見つかるといいなぁ。まずは卒業して魔法の免許を取るぞ!てなわけで、勉強だ!
「おとーさん、おれべんきょーしたい!おとーさんのきょーかしょとかちょーだい!」
「全部捨てちまったぜ!母さんも同じだ!」
終わった…。