殿下の愛人は男性宰相候補
前作「殿下の愛人は男性近衛兵」もよろしくお願いします。
「殿下?その書類が終わったら休憩にしましょう。ご褒美を準備していますよ?」
「アレか!アレをもらえるのか!?」
「はい!今回は新作を数種類ご準備しておりますよ。」
私はウェルトン公爵令嬢ユリアーナと申します。
先日、レオハルト殿下の近衛兵マルクス様との思い出すのも恥ずかしい誤解を解いたばかりなのに、またもや城内によからぬ噂がたっています。
執務室でレオ様が側近であり次期宰相候補のギルバート様と如何わしい行為をしているという噂が!!
「ギルバート様が周りを警戒しながら執務室に入っていかれて、その時に何か箱を持っているのを見ましたわ」
「その後、少ししたら殿下が口を押さえて悶絶している声が聞こえて来たのです」
「この前なんて、もう無理!お腹いっぱい!って大声で叫ばれて何事かと思いましたわ!」
はぁ………これは……確定ですわ!今度こそ噂は真実のようです。お世話をしている人達の生の証言なのです!悲しいですわ!悔しいですわ!
しかし!時間が経って冷静になってみると前回も同じように証言を集めて突撃した結果勘違いで、社交シーズン中の話のネタにされ恥ずかしい思いをしたのです。
ここは自分で確認するしかないと思い。先程から執務室の扉の前で聞き耳をたてています。
扉の前ではマルクス様が護衛として立っておりますが、見て見ぬ振りを決め込んでくれたようです。
「さぁ殿下、どれがいいですか?今日はいろいろと準備したので好きな物を選んでください」
「じゃ……そっちの黒くて大きいやつを……」
「こっちでいいんですか?この白くて小さいのを複数って手もありますよ?」
「うっ!確かに……それは悩むな……」
「確かにじゃないですわああああああああ」
扉を乱暴に開け放ち大声で叫んでしまいました。
「今回は言い逃れできませんわよ!婚約者の私というものがありながら!昼は執務で忙しいから来るな?そうやって私を避けてギルバート様と如何わしい事をしていたのですね!前にも言いましたわよね?愛人関係はちゃんと相談してくださいとあれほど……え?」
私が興奮して喋っている口の中に何かを放り込まれました。
「ん?これは………チョコレート?」
「クックックッ……」
扉からマルクス様がこちらを見て声を殺しながら笑っています。そしていつの間にか私の側に来ていたレオ様が笑みを浮かべて私を見つめています。
これは、まさか、また、勘違い!?!?
「殿下、私から説明させてもらってよろしいでしょうか?」
レオ様の後ろに立っていたギルバート様が語り始めました。
「私は、お菓子作りが趣味でして、殿下の執務の休憩中にケーキやクッキーを差し入れに持ってきていたのです」
「それを食べた僕がギルバートのケーキを気に入ってしまってね、ユリアーナとの結婚式の為のケーキを試作して貰って、休憩中に試食会をしていたんだ。」
「け………けっこん………しき……」
私はこんなにもレオ様に愛されていたのに、くだらない噂と嫉妬で勘違いして暴走して、情けなくて涙が出てきました。
「あぁ、ユリアーナ泣かないで、ごめんよ、君を喜ばせようと思って隠していたのに、逆に寂しい思いをさせて傷つけてしまっていたんだね」
そう優しく語りかけながらレオ様に引き寄せられギュッと抱きしめられました。
私は噂が勘違いだった事、そしてレオ様に愛されている事を確認でき満足し、変な噂が立たないように使用人にも一度、ギルバート様のケーキを振る舞う事をアドバイスして帰宅しました。
後日振る舞われたケーキのあまりの美味しさに、使用人全員が口を押さえ悶絶したという。
そして私の知らない所で、「結婚式の為のケーキ試食会」が定期開催されたのであった。
「今回も………んっ………なんとか………あっ!………誤魔化せたね……んんっ!」
「おいおいギルバート!ハルトに何してんだよ?」
「え?この前の件のお仕置きですよ?」
「ってお前まさか………どっち入れてるんだ?」
「両方ですよ。」
「……………え?」
「だから白と黒、両方です。」
「これ見てると…お仕置きって言うよりご褒美だな…」
「もう許して!お腹いっぱいなの!無理!」
「うるさいくなってきたので口塞いでください」
「あぁ!わかったよっと!」
「っ!んんっ!んんんんんんんんんんんんん!!」