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裏切り

 カイロンの動きにアルクは反応できなかった。

 呆然とした顔で、目の前に迫るロングソードの刃を見つめている。


 その時、彼方が動いた。

 腰に提げていた短剣を引き抜き、カイロンの攻撃を受ける。


「くっ…………」


 カイロンは一歩下がって、ロングソードを構え直す。


「もう、反論はできませんね」


 彼方は冷静な声で言った。


「ああ。エイミーは俺が殺したんだよ」


 カイロンは唇の端を吊り上げた。


「こんなに早くばれるとは思わなかったぞ」

「計画がずさんだからですよ。せめて、イリュートと同じレベルのロングソードを準備しておくべきでしたね」


「カイロン…………」


 彼方の背後にいたアルクがカイロンに声をかけた。


「お前…………こんなことをして正気なのか?」

「正気さ。お前たちを殺して、儀式を終わらせたら、金貨百枚が手に入るからな」

「金貨百枚で僕たちを売ったのか?」

「それだけあれば、当分遊んで暮らせるし、悪い選択じゃないだろ」

「…………間違った選択だったな」


 アルクはロングソードをカイロンに向ける。


「お前は終わりだ。これだけのことをしたんだから、死刑はまぬがれないぞ」

「それはどうかな」


 カイロンはロングソードをアルクに投げつけた。


 アルクは体をひねって、それをかわす。

 同時にカイロンは近くにある扉に向かって走り出した。

 扉のノブに手をかけた瞬間、カイロンの背中に短剣が突き刺さる。


「があっ!」


 苦痛に顔を歪めながらも、カイロンは扉を開ける。


「逃がさねぇよ」


 短剣を投げたウードがカイロンに近づき、別の短剣でカイロンの首筋を刺した。ウードは彼方と揉めたDランクの冒険者だ。


「ぐっ…………ごぼっ…………」


 カイロンは首から血を噴き出しながら、前のめりに倒れた。赤い血が周囲に広がっていく。


「おいっ! ウード」


 アルクがウードに駆け寄る。


「ここで殺すのはまずいぞ。拘束して裁判を受けさせないと」

「そんな状況じゃねぇだろ」


 ウードはカイロンの死を確認して、ゆらりと立ち上がる。


「先に俺たちを殺そうとしたのはカイロンだからな。それは、ここにいる全員が証明してくれるはずだ」

「たしかにそうだが…………」

「まあ、奴がギロチンで首を落とされるところを見物するのも悪くなかったがな」


 そう言って、ウードは彼方に歩み寄る。その視線がネーデの腕輪に向けられた。


「…………なるほどな。ネーデ文明のマジックアイテムを装備してたのか。カイロンの攻撃を短剣で受けた時、力負けしなかった理由はそれか」

「まあね」

「そんないいマジックアイテムを持ってたから、Fランクのくせに強気だったんだな」

「たしかに重宝してるよ。ずっと装備できるところがね」

「ふん。いいアイテムを装備してても、あっさり死ぬ奴は山のようにいるからな」

「…………だろうね」


 彼方はウードの視線を真っ直ぐに受け止める。


 ――躊躇(ちゅうちょ)なく、人を殺せるタイプか。やっぱり、ウードには注意しておいたほうがよさそうだ。


「彼方くん」


 アルクが彼方に頭を下げた。


「君のおかげで命拾いしたよ。ありがとう」

「いえ。この状況なら助け合うのは当然ですから」

「それにしても、カイロンの裏切りによく気づいたね」

「最初から気になってましたから」

「ん? 最初から?」


 アルクが首をかしげる。


「はい。アルクさんは百人目で、それ以上の冒険者の募集はしてなかったって言ってましたよね」

「あ、ああ。そうだが?」

「それなのに、冒険者の数が百人以上いたんです。この状況なら、カーリュス教の信者が紛れ込んでる可能性が高いと思って」

「…………そうか。冒険者の数なんて、僕は気にしてなかったよ」


 アルクは感心した様子で彼方を見つめる。


「これで裏切り者はいなくなったってことか」

「…………いいえ」


 彼方は首を左右に動かす。


「数えればわかることですけど、冒険者の数は百四人なんです」

「百四人?」

「はい。だから、あと三人の裏切り者がいるはずです。この中に…………」


 彼方の言葉に、冒険者たちは強張った顔を見合わせた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 生贄目的だったのは驚き緊迫感が一気に高まりましたが、彼方がカイロンの裏切りを見破ったのもこの状況で冷静なのが際立っている感じです。
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