彼方の悩み(お知らせつき)
後書きに別作品の情報あります。
彼方は王宮から数百メートル離れたボリエ伯爵の別邸の一室にいた。
隣にはミケがいて、白いカップに入ったミルクを飲んでいる。
「なかなかの一品にゃ」
ミケは鼻の下にミルクをつけて、満足げにうなずく。
「この濃くのある味わいは……二百四十八年物だにゃ」
「ワインじゃないんだから。五十年以上前のミルクは飲めないよ」
彼方はミケに突っ込みを入れる。
「で、ミケはボリエ伯爵との会見にも参加するの?」
「うむにゃ。彼方のお嫁さんを増やさないための作戦なのにゃ」
「……いや。その手の話は全部断るつもりだから」
「それはわからないにゃ。彼方はえっちだからにゃ。しっぽのきれいな女だったら、誘惑に負けてしまうかもしれないにゃ」
「しっぽがきれいでも、変な気持ちにならないよ」
彼方は頭をかきながら、ため息をつく。
その時、扉が開いて、四十代の金髪の男――ボリエ伯爵が部屋に入ってきた。
満面の笑みを浮かべて、ボリエ伯爵は彼方に近づく。
「ヨム国の英雄、氷室男爵を我が別邸に招くことができて光栄です」
ボリエ伯爵は彼方の手を両手で握り締める。
「ぜひ、今日は魔神ザルドゥの話を聞かせていただきたいですな。吟遊詩人の歌では倒し方がばらばらで真実がわかりませんでしたから」
「あ……いえ」
彼方の頬がぴくぴくと動いた。
「あの時は運がよかっただけですから」
「ご謙遜を。あなたは魔神ザルドゥだけではなく、サダル国のナグチ将軍も倒していますし、ウロナ村ではSランクの魔法戦士ユリエス様といっしょにボーンドラゴンも倒したとか」
「詳しいんですね」
「いろいろと調べさせてもらいましたから。あ、昼食のデザートは最高に甘いフルーツケーキを用意しております」
「……はぁ。ありがとうございます」
彼方はボリエ伯爵に頭を下げる。
「それで、我が娘リリエッタですが、支度に時間がかかっておりまして。いやぁ、化粧に服選びと女はいろいろと大変ですからなぁ」
「あ、その……娘さんとの婚約のことですけど」
「わかっております。まだ、結婚は考えてないんですよね?」
「え、ええ。そうなんです。僕は異界人で、この世界のことをあまり知らないし、領主として勉強しなくてはいけないこともたくさんあるので」
「ならば、結婚はするべきですぞ」
ボリエ伯爵は彼方に顔を近づける。
「妻は夫を助ける存在です。我が娘リリエッタは器量が良いだけではなく、大変賢い女です。きっと氷室男爵のお役に立つでしょう。昼も夜も」
「いっ、いや。とにかく、僕は……」
「まあまあ。まずはリリエッタと会ってやってください。きっと、氷室男爵も気に入っていただけるはずです」
コンコンと扉がノックされた。
「おっ! どうやら、リリエッタの支度が整ったようです。入ってきていいぞ」
扉が開き、二十代前半のドレス姿の女が姿を見せた。
――この人がリリエッタさんか。たしかに綺麗な人だな。頭もよさそうだ。
「初めまして。コリンヌです」
「えっ? リリエッタさんじゃないんですか?」
「あぁ。コリンヌは私の三人目の妻ですよ」
ボリエ伯爵が彼方の疑問に答えた。
「ほら、リリエッタ。氷室男爵に挨拶しなさい」
その言葉に反応して、コリンヌの背後から、小さな女の子が姿を見せた。
女の子はピンク色のドレスを着ていて、金色の髪を二つ結びにしていた。目は青色で肌は白い。
女の子は真っ直ぐに結んでいた唇を開いた。
「リリエッタです。五歳です!」
女の子――リリエッタの年齢を聞いて、彼方は、がっくりと肩を落とした。
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