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リフトン伯爵2

「ギルマール大臣を覚えているか?」


 リフトン伯爵の質問に彼方はうなずく。


「はい。王宮で僕に『真実の水晶』の儀式をやらせた大臣ですね。もちろん、覚えてます」

「では、ギルマール大臣が、あの後、どうなったかは知っているか?」

「いえ。知りません」

「…………ふむ。ギルマール大臣は、あの失態で信用を大きく失った。魔神ザルドゥを倒した英雄を詐欺師扱いしてたのだからな。大臣の魔力を見る能力にも疑問符がついた」

「僕に魔力がないのは事実ですよ」

「あぁ。異界人の特別な能力のようだな。そしてギルマール大臣は、それを利用しようとしている」

「利用ですか?」


 彼方は首を傾ける。


「そうだ。氷室男爵は、この世界にはない異界の能力で真実の水晶の儀式をごまかしたとな」

「…………それを信じる人がいるんですか?」

「そのほうが都合がいいからな」


 リフトン伯爵は緑色の瞳で彼方を見つめる。


「ギルマール大臣はオリトール公爵の親族でな。彼らと関わっている貴族たちと協力してゼノス王に進言した。氷室男爵に魔神ザルドゥを倒せる能力が本当にあるのか、調べる必要があると」

「ゼノス王は彼らの進言を受け入れたわけですか」

「君の能力を知っておきたい気持ちもあるのだろう。どっちにしてもな」


 リフトン伯爵は、ふっと息を吐いた。


「魔神ザルドゥを倒した君はジウス大陸最強の人間…………いや、最強の生物と言っても過言ではない。当然、警戒するべき存在だろう」

「…………あなたは僕を警戒しないんですか?」

「君のことは娘から聞いていたからな。悪意のある人物ではないし、多くの金や権力を求めることもない。ならば、敵にするより、味方になったほうがいい」


 一瞬、リフトン伯爵はティアナールを見た。


「とにかく、数日中に王都から知らせがくるはずだ。いろいろと準備しておいたほうがいいだろう」

「そう…………ですね」


 彼方はリフトン伯爵に頭を下げた。


「重要な情報を教えていただき、ありがとうございます」

「気にする必要はない。娘の婿を助けるのは親として当たり前だからな」


 その言葉に彼方の頬がぴくぴくと痙攣した。


 ◇


 数日後、リフトン伯爵の情報通り、ゼノス王から彼方に呼び出しがあった。

 彼方はティアナール、ミケ、香鈴、レーネ、エルメア、ニーアとともに飛行船で王都に向かった。ゴーレム村の近くで飛行船を下り、ティアナール、ミケ、香鈴、レーネの五人で地上を移動する。


 先頭を歩きながら、彼方は口を開いた。


「とりあえず、王都に着いたら、七原さんとミケは買い物を頼むよ。レーネは…………」

「サダル国とカーリュス教の情報収集でしょ。わかってる」


 レーネは軽く彼方の肩を叩く。


「なじみの情報屋もいるし、いろいろ調べておくから」

「うん。ミュリックも人間に化けて風俗街にいると思うから、情報の共有もしておいて」

「それよりも、ゼノス王との会見は大丈夫? 王様や貴族の前で能力見せていいの?」

「大丈夫だよ。適当にウソを混ぜて話すから」

「それでごまかせるならいいけど」


「なぁ、彼方」


 ティアナールが彼方に声をかけた。


「私はお前の部下として、王宮に同行していいんだな?」

「うん。王宮や貴族のことはティアナールさんが詳しいだろうから、いろいろ教えて欲しいんだ」

「まかせておけ」


 ティアナールは胸を張った。


「オリトール公爵の顔もわかるし、派閥もある程度ならわかるぞ」

「それは有り難いです。先に敵意のある相手がわかってると、表情や仕草のチェックがしやすくなるし」


 彼方は王都のある東の方向に視線を向ける。


 ――四天王のゲルガは残ってるし、カーリュス教やサダル国の動向も気になる。これ以上敵は増やしたくないのになあ。


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