表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】異世界カード無双 魔神殺しのFランク冒険者  作者: 桑野和明(久乃川あずき)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

261/338

ナグチ将軍とカルミーラ師団長

 ウロナ村の南西にある砦の一室で、ナグチ将軍は部下の報告を聞いていた。


「獣人部隊が全滅…………ですか」


 メガネの奥の目が針のように細くなる。


「は…………はい」


 茶髪の女兵士が緊張した様子で言葉を続ける。


「ガトラ百人長を含め、九十名以上が行方不明になっていて、生存確認ができているのは十名程度です」

「…………それは予想外でしたね」


 ナグチ将軍は人差し指で自身のこめかみをトントンと叩く。


「金獅子騎士団の別働隊の姿は確認できましたか?」

「いいえ。キルハ城にヨム国の軍隊がいる気配はなかったそうです」

「そう…………ですか」


 ナグチ将軍は沈黙した。


 ――ガトラ百人長は用心深く、状況に応じて動ける男だ。多分、金獅子騎士団の別働隊がいないことで、キルハ城を攻める決断をしたんだろう。


 ――そして、待ち伏せしていた氷室彼方にやられたか。警戒していたはずなのに。


「予想外の手を使われたんでしょうね。私たちが知らない手を…………」


 突然、扉が開き、第七師団のカルミーラ師団長が部屋に入ってきた。


 カルミーラ師団長は長い黒髪をなびかせて、ナグチ将軍に歩み寄る。


「ナグチ将軍っ! 私にキルハ城攻略を命じてください!」

「キルハ城攻略?」

「はい。ガトラ百人長の仇を取りたいんです!」


 カルミーラ師団長は両手のこぶしを小刻みに震わせる。


「氷室彼方は、我が第七師団の名に傷をつけました。この汚名を返上するためには、奴の首が必要なんです!」

「落ち着いてください。今、あなたに戦場を離れられるのは困ります」


 ナグチ将軍は怒りの表情を浮かべているカルミーラ師団長の肩に触れた。


「キルハ城にいる氷室彼方より、ウロナ村の攻略のほうが重要ですから」

「ですがっ!」

「私の命令に従えないと?」

「いっ…………いえ。そういうわけでは…………」


 カルミーラ師団長の体がぴくりと動く。


「安心してください」


 ナグチ将軍は、にっこりと笑う。


「たかが百人の部隊が全滅しただけで、第七師団の名は傷つけられていませんよ。それに、氷室彼方は死ぬんです。ウロナ村が落ちた後に…………」


 ◇


 翌日の早朝、ナグチ将軍は第七師団の兵士七千人とともに砦を出発した。霧が立ち込めたガリアの森の中を、静かに北東に進む。


 やがて、森が開け、広大な開墾地に出た。

 五百メートル先に敷かれた横陣を見て、ナグチ将軍の表情が引き締まる。


 隣にいたカルミーラ師団長が口を開く。


「前に戦った陣形と同じですね」

「ええ。横陣を三つに分けて、盾持ちの騎士を増やしてます。守り重視の陣にして、戦況が不利になったら、すぐにウロナ村に撤退する。悪くない手ですよ」


 ナグチ将軍はヨム国の陣を見つめる。


「ただ…………今日は狙ってるようですね」

「狙ってる?」

「はい。騎士たちの動きが前とは違いますし、伝令兵の数も増えている。それに、指揮しているのは白龍騎士団のリューク団長ですから」


 ナグチ将軍は指先でメガネの位置を調整する。


「前の戦いで、彼はこちらの動きを探っていました。私がどんな戦い方をするのか、確認したかったんでしょう」

「だから、別働隊を使わずに戦えと指示されたのですね?」


 カルミーラ師団長の質問にナグチ将軍はうなずく。


「…………今回は、お互いに本気で戦えそうですね」


 ――どんな策を準備しているのか、楽しみですよ。リューク団長。


 ナグチ将軍はメガネの奥の目を細めて、ヨム国の陣を眺めた。


 ◇


 一時間後、第七師団は白龍騎士団に攻撃を仕掛けた。

 呪文で具現化された炎の矢が飛び交う中、ロングソードを持つ兵士たちが一角鳥の陣で左側の横陣に突っ込む。


 さらに中央に数十体のモンスターが現れた。

 全長十メートルを超えるドラゴンに背丈が三メートル近いオーガ、マンティスに双頭トカゲ。

 それらは数十人の召喚師たちが召喚したモンスターだった。


 モンスターたちは中央の横陣に向かって走り出す。

 その動きに合わせて、ヨム国の召喚師たちもモンスターを召喚する。

 ドラゴン、ゴーレム、ケルベロス…………。


 モンスターたちは開墾地の中央でぶつかり合った。

 ドラゴンの咆哮が響き、吐き出したブレスが周囲の空気を熱くする。


「攻めろ! 攻めろ!」


 後方にいるカルミーラ師団長が叫んだ。


「中央はモンスターどもにまかせておいて、左から崩すぞ。シルン千人長の部隊を突っ込ませろ!」

「はっ、はいっ!」


 若い伝令兵たちが走り出す。


 その後ろで、ナグチ将軍は戦況を眺めていた。


 ――召喚されたモンスターの力は、ほぼ互角か。白龍騎士団の中にも、よい召喚師がいるようだ。他の騎士たちの練度も高い。


 ――だが、第七師団の本気の攻めを受け止めるには五千では足りない。策があるとしたら、伏兵だろうな。


「ナグチ将軍」


 中性的な顔立ちの兵士がナグチ将軍の前で頭を下げた。


「斥候より、連絡が入りました。ヨム国の兵士千人が西から近づいてきてます」

「でしょうね」


 ナグチ将軍は視線を西の森に向ける。


「トルック千人長、あなたの部隊で足止めをお願いします」

「殲滅する必要はないのですか?」

「足止めだけで十分です。二時間程度粘ってもらえれば、こっちで白龍騎士団の本陣を落としますから」


 そう言って、ナグチ将軍は戦場に視線を戻した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そろそろ調子に乗りまくってるなぐっちに痛い目にあってほしいな~ 彼方が奇襲してくれないかな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ