浮遊島の戦い2
強い風が吹き、彼方の体が飛ばされた。
彼方は飛行船のへりに手をかけ、甲板に戻る。
ワイバーンは操縦室の屋根の上に降り、胸元を大きく膨らませた。
――ブレス攻撃だな。
彼方は呪文カードを選択する。
◇◇◇
【呪文カード:オーロラの壁】
【レア度:★★(2) 指定の空間に物理、呪文、特殊攻撃を防御する壁を五秒間作る。再使用時間:2日】
◇◇◇
白、赤、緑に変化する半透明の壁が現れた。その壁がワイバーンが吐き出した炎を受け止める。
「加勢するぞ!」
エルメアが魔風の弓でワイバーンを攻撃した。黒い矢がワイバーンの金色の瞳に突き刺さる。
「ガァアアアアア!」
ワイバーンは怒りの咆哮をあげて、エルメアに視線を向ける。
――ナイスサポートだよ、エルメア!
彼方は左足を大きく踏み出し、渾身の力を込めて神殺しの斧を投げた。斧は回転しながら、ワイバーンの長い首に突き刺さった。
「ガゴッ…………グゥ…………」
ワイバーンの巨体が傾き、そのまま、飛行船からずり落ちた。
彼方は甲板の後部に移動して、視線を動かす。百数十メートル先に黒い髪の女がいることに気づいた。
――あの女が魔獣使いのメルーサか。
女――メルーサは胸元から二つの小瓶を取り出し、そのフタを開く。
三つの頭部を持つ黒い犬――ケルベロスが二体現れた。全長三メートルを越えていて、目は燃えているかのように赤かった。
メルーサが右手を動かすと、二体のケルベロスは彼方たちがいる飛行船に向かって走り出した。
――巨大クモにワイバーン、そしてケルベロスが二体か。他のモンスターも使ってくる可能性があるな。早めにメルーサを倒しておいたほうがいい。
彼方は意識を集中させ、一枚の召喚カードを選択した。
◇◇◇
【召喚カード:両盾の守護騎士 ベルル】
【レア度:★★★(3) 属性:水 攻撃力:100 防御力:5000 体力:5000 魔力:500 能力:魔法の盾を二つ装備する護衛専門の騎士。召喚時間:1日。再使用時間:7日】
【フレーバーテキスト:要人警護なら、このベルルにおまかせあれ! でも、攻撃力は期待したらダメっすよ】
◇◇◇
十七歳ぐらいの水色の鎧をつけた少女が姿を現した。髪はショートボブの水色で、瞳は濃い青色。両手に円形の水色の盾を装備していて、腕には銀色の鎖が巻きついている。
少女――ベルルは片足を上げて、盾を持った両手を左右に広げる。
「お待たせっす。愛と正義の守護騎士ベルル! ここに参上っ!」
「ベルルっ! 君は船の上にいる僕の仲間を守って!」
彼方は素早くベルルに指示を出して、仲間たちを見回す。
「みんなはクモの糸を切って、飛行船を飛ばせるようにして」
「了解したにゃ」
ミケが腰に提げていた短剣を引き抜く。
「ミケの本気を見せてやるのにゃ」
「うんっ、頼むよ!」
彼方はミケの頭を軽く撫でると、縄ばしごを使って草原に下りる。
同時に一体のケルベロスが彼方に襲い掛かってきた。
彼方は前転して攻撃を避け、ワイバーンの死体に駆け寄る。突き刺さっていた神殺しの斧を掴み、背後から迫っていたケルベロスの胴体を真っ二つに斬った。
ケルベロスは炎の息を吐き出しながら、絶命する。
――もう一匹は?
視線を動かすと、もう一体のケルベロスは甲板の上でベルルと戦っていた。ベルルはケルベロスの炎を二つの盾で防いでいる。
――これなら、なんとかなるか。
彼方はメルーサに向かって走り出す。
彼方の動きに気づいて、メルーサは新たな小ビンを取り出した。フタを開くと、今度は尾が二つある巨大なサソリが現れた。
同時にメルーサは彼方に背を向けて走り出す。
――サソリは時間稼ぎだな。そして、あの躊躇のない逃げ方。最初から、逃げるつもりだったか。
――罠の可能性はある。だけど、ここは追う。
彼方は一直線にサソリに駆け寄り、体を捻って神殺しの斧を真横に振る。サソリの頭部がぐしゃりと潰れた。
動かなくなったサソリの横をすり抜け、メルーサが逃げた林の中に入る。数十メートル先にメルーサの背中が見えた。
彼方は左足を大きく踏み出し、神殺しの斧を投げた。斧は縦回転しながら、メルーサに迫る。
その斧が半透明の壁に突き刺さった。壁が割れると同時に斧が地面に落ちる。
――呪文で作られた壁か。ってことは…………。
彼方の周囲に三百枚のカードが浮かび上がった。
◇◇◇
【アイテムカード:深淵の剣】
【レア度:★★★★★(5) 闇属性の剣。装備した者の攻撃力を上げ、呪文の効果を打ち消す効果がある。具現化時間:3時間。再使用時間:7日】
◇◇◇
漆黒の剣が具現化された。
彼方はその剣を掴み、視線を左右に動かす。
「…………やっと会えたな」
十数メートル先の茂みから、二十代の男が現れた、髪は青紫色で黒い革製の服を着ている。
男――ティルキルは髪をかき上げながら、にやりと笑った。




