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準備

◇◇◇

【召喚カード:結界の妖精 チャルム・ファルム】

【レア度:★★★★★★(6) 属性:地 攻撃力:0 防御力:100 体力:100 魔力:5000 能力:分身能力を持ち、強力な結界を作る能力がある。召喚時間:1日。再使用時間:14日】

【フレーバーテキスト:チャルム・ファルムはイタズラ好きの妖精じゃ。あれについていったら、二度と村には戻れなくなるぞ(木こりの老人)】

◇◇◇


 彼方の前に背丈が二十五センチ程の妖精が現れた。髪は淡い緑色で背中にトンボのような半透明の羽を生やしている。服はダークグリーンで先端が尖った茶色の靴を履いていた。


 チャルム・ファルム――チャルムは羽を動かして、彼方の頭の周りを飛び回る。


「はーい、あなたが私のマスターだね」

「うん。早速だけど、君には結界を作ってもらうよ」

「だと思った。私、戦闘はダメダメだから」


 チャルムは彼方の肩に腰を下ろす。


「で、どこに結界を作るの?」

「この盆地全体にだよ」


 彼方は広大な盆地を指さす。


「できる?」

「うーん。なかなか広いけど、なんとかなるかな」

「じゃあ、頼むよ。中にいるモンスターは一匹も逃がしたくないから」

「わかった。マスターの頼みだしね。私、がんばっちゃう」


 チャルムは彼方に向かってウインクすると、ふわりと宙に浮かび上がった。彼女の姿が

二匹になり、四匹、八匹、十六匹と増えていく。


 百匹以上に増えたチャルムを見て、ミュリックは、ぽかんと口を開ける。


「それじゃあ、いってくるね」


 百匹を超えたチャルムは半透明の羽を動かして飛び去っていく。


 彼方は新たなカードを選択した。


◇◇◇

【アイテムカード:錆びた短剣】

【レア度:★★★★★★★★★★(10) 無属性の短剣。十体の生者を錆びた短剣で殺すと、錆びた短剣は『異界龍の鎧』に変化する。具現化時間:2時間。再使用時間:30日】

◇◇◇


 具現化された錆びた短剣を彼方は手に取る。柄の部分には黒い宝石が埋め込まれていて、刃は赤茶色に錆びている。


「何、その短剣?」


 ミュリックが錆びた短剣を見て、顔をしかめる。


「これなら、そこら辺に落ちてる剣を使ったほうがマシだよ」

「いいんだよ。後のことを考えればね」


 彼方は軽く錆びた短剣を振る。


 ――攻撃力は期待できそうにないな。でも、今の僕なら、この短剣でも十体のモンスターを殺せるだろう。後は…………。


 さらに彼方は別のカードを選択する。


◇◇◇

【召喚カード:九尾のフェンリル】

【レア度:★★★★★★★★★(9) 属性:地 攻撃力:6000 防御力:8000 体力:9000 魔力:4000 能力:治癒能力のある地属性のクリーチャー。召喚時間:3時間。再使用時間:25日】

【フレーバーテキスト:なんと美しく神々しい生き物なんだ。この生物になら、私は殺されても構わない(生物学者シルトン)】

◇◇◇


 白銀に輝くフェンリルが姿を現した。顔は狼に似ていて、体長は三メートルを超えている。九尾のフェンリルは九つのしっぽを振りながら、彼方に歩み寄る。


「命令を…………聞こう。我がマスターよ」


 重々しい声が彼方の耳に届く。


「君の役目は陽動だよ」


 彼方は一歩前に出て、目の前にいる巨大な生物を見上げる。


「盆地の中には約二万匹のモンスターがいるんだ。君はできる限り、モンスターを倒して欲しい」

「全てでなくていいのか?」

「それは難しいだろうからね。君は目立つ行動をして、時間を稼いでくれればいい」


「理解した。どうやら、我がマスターは他の策も用意しているようだ。ならば、我は陽動の役割を果たすとしよう」


 九尾のフェンリルは尖った歯をカチリと鳴らして、巨体を揺らした。白銀の羽毛が逆立ち、前脚の爪がぐっと伸びる。


「ウォオオオオオーン!」


 空気が震えるような鳴き声をあげて、九尾のフェンリルは緩やかな斜面を駆け下りていく。


 ――これで僕は目立たずに動ける。


「か…………彼方」


 ミュリックが震える声で彼方の上着を掴んだ。


「あなた、フェンリルまで召喚できたの?」

「できないなんて言ってないだろ」

「いっ、いや、でも…………あんな強そうなフェンリルを…………」


 ミュリックは片方の頬をぴくぴくと痙攣させる。


「あなた…………何体のモンスターを召喚できるの? まさか、五体以上?」

「それは味方になった君が知る必要のない情報だよ」


 彼方は錆びた短剣を握り締め、盆地に向かって歩き出す。


「まっ、待ってよ」


 ミュリックが慌てて彼方の後を追った。


 ◇


 盆地の中は草木が生い茂り、数匹の森クラゲが宙に浮いていた。


 ――モンスターたちが集まっているのは奥のほうか。


 彼方は草のつるをかき分けながら、盆地の奥に進む。


 数分後、彼方は地面に座り込んでいる二匹のゴブリンの姿を発見した。

 ゴブリンたちは何かの肉を頬張っている。


「食事中みたいね」


 彼方の背後にいたミュリックがつぶやく。


「どうする? ゴブリン程度なら私が殺ってもいいけど」

「いや、二匹とも僕が殺すよ。そうでないと意味がないから」


 彼方はゴブリンの背後に回り込み、一気に襲いかかった。手前にいるゴブリンのうなじに錆びた短剣を突き刺す。ゴブリンの体がぐらりと傾き、そのまま地面に倒れた。


「ギィイイッ!」


 もう一匹のゴブリンが彼方に気づき、立ち上がった。腰の短剣に手を伸ばそうとしたが、彼方の動きのほうが早かった。右足を大きく前に出し、錆びた短剣を真横に振る。

 ゴブリンのノドが切り裂かれ、青紫色の血が周囲に飛び散る。


 二匹のゴブリンの死を確認して、彼方は息を吐き出す。

 視線を落とすと、錆びた短剣の柄の部分に埋め込まれていた黒い宝石が僅かに赤く変化している。


 ――残り八体。


「ウォオオオオーン!」


 盆地の奥から、九尾のフェンリルの鳴き声が聞こえてきた。


――モンスターと戦い始めたみたいだな。


「僕たちも奥に進もう」


 彼方はミュリックといっしょに薄暗い森の中を歩き始めた。



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― 新着の感想 ―
[一言] バイストゥ○ウェルのミ・フェラリオ チャム・ファウですね。
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