表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/338

鍾乳洞の中で

 彼方、ミケ、香鈴、音葉は巨大な石柱の間をすり抜けながら、地上に向かって進んでいた。

 周囲は薄暗く、壁にはトカゲのような生き物が張りついている。


 先頭を歩いていた音葉が足を止めた。


「…………どうやら、私たちの潜入がバレたようです」

「みたいだね」


 彼方は険しい表情で視線をあげた。数十メートル先に、たいまつを持った十数匹のモンスターたちが歩き回っている姿が見える。


 ――この道はダメか。カードを使って強引に通る手もあるけど、こっちが見つかってない状況なら、無理をする必要はない。


「他の道を探そう。それと、音葉には単独で陽動をやってもらうから」

「承りました」


 音葉は唇の両端を吊り上げる。


「それならば、多少目立つように動きましょう」

「危険な仕事だよ? それに、多分…………」

「わかってます。でも、私はカードですから、死んでも問題ありません。それに、あなたを守ることが、私の仕事ですから」


 彼方に一礼して、音葉はひとりで急な斜面を登り始めた。


 やがて、上部にいたモンスターたちが騒ぎ出した。

 どうやら、音葉がモンスターの一匹を殺したようだ。

 怒声が彼方たちのいる場所まで聞こえてくる。


 ――音葉、ありがとう。


 彼方は心の中で音葉に礼を言った。


 ――潜入がバレたのなら、鍾乳洞の入り口にいる伊緒里の役目は終わりだな。彼女には悪いけど、カードに戻ってもらって、新しいクリーチャーを召喚するか。


 彼方は意識を集中させて、伊緒里をカードに戻す。そして、新たな召喚カードを選択した。


◇◇◇

【召喚カード:両盾の守護騎士 ベルル】

【レア度:★★★(3) 属性:水 攻撃力:100 防御力:5000 体力:5000 魔力:500 能力:魔法の盾を二つ装備する護衛専門の騎士。召喚時間:1日。再使用時間:7日】

【フレーバーテキスト:要人警護なら、このベルルにおまかせあれ! でも、攻撃力は期待したらダメっすよ】

◇◇◇


 彼方の目の前に、十七歳ぐらいの水色の鎧を着た少女が姿を現した。髪はショートボブの水色で、瞳は濃い青色だった。両手に円形の水色の盾を装備していて、腕には銀色の鎖が巻きついている。


 少女――ベルルは片足を上げて、盾を持った両手を左右に広げる。


「お待たせしたっす。愛と正義の守護騎士ベルル! ここに参上っ!」

「ベルル、君の役目は七原さんとミケの護衛だよ」


 彼方は淡々とした声で言った。


「ありゃ! 彼方くんは守らなくていいっすか?」

「僕は大丈夫。自分の身は守れるレベルにはなったからね」

「それは残念っすね。マスターを守るほうが気合が入るっすけど」


 ベルルは頭をかきながら、ふっとため息をつく。


「まあ、了解っす。僕の絶対防衛術で二人を守ってあげるっすよ」

「か、彼方くん」


 香鈴が目を丸くして、彼方に声をかける。


「どうして、彼方くんが召喚呪文を使えるの?」

「異世界に転移した人間の中には、特別な力を持つ者がいるんだ。それが、どうやら、僕みたいなんだ」


 彼方は香鈴に機械仕掛けの短剣を渡す。


「この短剣は、装備するとスピードと防御力があがる特別な武器なんだ。使って」

「でも、彼方くんは?」

「僕は別の武器を出すから」


 彼方の周囲に、三百枚のカードが浮かび上がる。


◇◇◇

【アイテムカード:深淵の剣】

【レア度:★★★★★(5) 闇属性の剣。装備した者の攻撃力を上げ、呪文の効果を打ち消す効果がある。具現化時間:3時間。再使用時間:7日】

◇◇◇


 漆黒の剣が具現化され、彼方はその剣を掴んだ。


 ――これで、アイテムカードも限界まで使ったか。まあ、状況に応じて、強いアイテムカードと切り替えていこう。


「さあ、急ごう。音葉が時間を稼いでる間に脱出するんだ」


 彼方は、香鈴、ミケ、ベルルといっしょに薄暗い道を進み始めた。


 ◇


 一時間後、先頭を歩いていた彼方の視界が開けた。

 そこは四十平方メートル程の開けた場所で、左右の壁には色とりどりのビンや壺が置かれた棚が十数台並んでいた。


「ここは…………」


 彼方は視線を左右に動かす。


 ――薬か何かを保管する場所か。ってことは、こっちに出口はなさそうだな。


 その時、奥の扉が開き、黒い服を着た男が姿を見せた。

 男は二十代前半ぐらいの外見で褐色の肌をしていた。目は緑色で、その耳は鋭く尖っている。左右の指には、赤や青、緑色の宝石をあしらった指輪をはめていた。


 彼方は、その男がダークエルフのカリュシャスだと確信した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ