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潜入

◇◇◇

【アイテムカード:ピコっとハンマー】

【レア度:★★★★★★★(7) 装備した者の防御力を大きく上げる特殊武器。具現化時間:1日。再使用時間:3日】

◇◇◇


 彼方は具現化したピコっとハンマーをミケに渡した。

 そして、新たに別のアイテムカードを選択する。


◇◇◇

【アイテムカード:機械仕掛けの短剣】

【レア度:★★★★(4) 装備すると、スピードと防御力が上がる。具現化時間:2日。再使用時間:10日】

◇◇◇


 透明の刃の中に数千個の歯車が重なり合っている美しい短剣が具現化された。

 彼方はその短剣を右手で掴む。


 ――機械仕掛けの短剣は具現化時間が長くて、使い勝手がいい。ネーデの腕輪の効果で力も強くなってるし、戦闘にも慣れた。ほどほどの敵なら、これで十分だ。ミケにも防御力が大きく上がるピコっとハンマーを装備させたし。


 ふっと、脳裏に香鈴の姿が浮かび上がる。


 ――七原さん、無事でいてくれるといいんだけど。


 唇を強く結んで、彼方は鍾乳洞の入り口を見つめた。


 彼方たちは、音葉を先頭にして鍾乳洞の中に入った。空気はひんやりとしていて、壁には光る石が入ったカンテラが掛けられていた。


 どこからともなく、ぴちゃ、ぴちゃと水滴が落ちる音が聞こえる。


 曲がりくねった薄暗い道を進んでいると、十数メートル先で微かな物音がした。

 前を歩いていた音葉の動きが止まる。


「ここで待っていてください」


 彼方の耳元でささやくと、音葉は壁際に沿って歩き出す。

 やがて、革製の鎧を着た三ツ目のリザードマンが現れた。

 同時に音葉が動いた。死角から一気に飛び出し、青紫色の短刀でリザードマンのノドを斬り裂く。


「グッ…………ゴブッ…………」


 リザードマンは溺れるような声をあげて倒れた。


「急所を狙えば、毒の効果は必要ありませんね」


 音葉はふっと息を吐き、死んでいるリザードマンを見下ろす。


「さて、死体をどうしましょうか?」

「石柱の陰にでも隠しておこう。どうせ、バレるだろうけど、少しでも時間が稼げればいいから」


 彼方は視線を左右に動かす。

 十数メートル先で道が二つに分かれている。


 ――この鍾乳洞、中は相当広いみたいだな。七原さんや村の女の子たちがいるとしたら、牢屋みたいな場所があるはずだ。ザルドゥのダンジョンでは牢屋は最下層にあったし、ここも、そうかもしれない。


「とにかく、急ごう。なるべくなら、戦闘は避けたいし」


 彼方は機械仕掛けの短剣を握り締め、唇を強く結んだ。


 ◇


 十分後、後ろにいたミケが彼方に声をかけた。


「彼方、向こうから、食べ物の匂いがするにゃ」


 小さな鼻をひくひくと動かして、ミケは左側の斜面を指差す。


「食べ物か…………」


 彼方は緩やかに傾斜した斜面に近づく。斜面の上部には、つららのような鍾乳石が無数に垂れ下がっている。


「行ってみよう」


 彼方たちは足音を忍ばせて、ゆっくりと斜面を下りた。

 数十メートル進むと、下方から声が聞こえてきた。

 彼方は石柱の陰から、そっと顔を出して下方を覗いた。


 そこは楕円の形をした広場になっていた。中央には枯れ木が積み重ねられていて、オレンジ色の炎が揺らめいている。周囲には五十匹以上のモンスターが食事をしていた。


 右腕だけが異様に太いゴブリン。頭部が二つあるリザードマン。体中に白い毛を生やしているオーガ。異形のモンスターたちは血の滴る獣の肉に食らいついている。


 ――ここはモンスターたちの食堂兼リビングルームってところか。


 彼方は後ずさりして、ミケと音葉に顔を近づける。


「ここは無視して、別の道から下に行こう。みんな、油断してるみたいだし」


 彼方たちは静かに、その場から離れた。


 ◇


 曲がりくねった細い道を下り続けると、分厚い木の扉が行く手を塞いでいた。

 彼方は用心しながら、扉を開く。

 その先には一直線に伸びた通路があり、その左右に鉄格子でできた牢屋が並んでいた。


「どうやら、ここが牢屋みたいだな」


 彼方は視線を一番手前の牢屋に向ける。

 そこには誰もおらず、石の床には血の痕が残っていた。


「…………ミケと音葉はここにいて」


 彼方はひとりで薄暗い通路を進む。

 その時、奥の牢屋で微かな音が聞こえた。


 ――誰か…………いる。


 彼方のノドが大きく動く。

 ゆっくりと一番奥の牢屋に向かう。

 鉄格子の前に立った彼方の瞳に、座り込んでいる少女の後ろ姿が映った。


 少女はツインテールの黒髪で、クリーム色の服を着ている。


「…………七原さん?」


 彼方の声に少女は反応した。

 上半身をひねって、彼方に顔を向ける。


 彼方の顔が、一瞬で強張った。


 少女――香鈴の右腕は緑色に変化していて、無数のつるが絡み合っていた。そのつるから黄緑色に発光する葉が数十枚生えている。


 香鈴は鉄格子の向こう側にいる彼方を見上げながら、桜色の薄い唇を開いた。




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