ゼロ・シティー
カルサイト4。これは社会的に俺のすべてを表していた。『カルサイト』というのはシティの名称で、その下に付く記号は社会的な階級にあたる。
月に一度行われる情報記憶媒体読込査定と呼ばれる作業。そこで読み取った社会貢献度により、1から6の階級に振り分けられる。
フィルタリングの結果、さらに上位と判断されると、上の階級に進めるシステムだ。
平凡な俺にはあまり関係の無い話だが。
1〜3は上位階級。4と5は一般人で、6は人権すらも怪しい下等階級という構成がこの街では成り立っている。そして、4と3の間にはとてつもない差があり、昇級できるのはエリートと呼ばれる者の中でもごく一部。ましてや1クラスの人間ともなると、シティ全体の1%にも満たない選ばれた者のみ。その存在は此処で暮らす者にとって神に近いものがある。
下から三番目に位置しているランク、カルサイト4。それが現在俺のいる位置。シティの過半数はこれに属している。
自立して三年。当初5だった俺も今や過半数のうちの一人。ようやく平凡な生活を手に入れたわけだ。
……でも安心できるわけじゃない。
昇級したてのヤツはすぐに元の位置に戻されるケースが多い。
「…………」
考えたくもない。沈黙することでそれを拒絶した。
時刻は二三時、早く寝るに越したことはない。寝坊による遅刻で貢献度を下げるわけにはいかない。
「就寝。と」
ベッドに入って寝る体制になる。こうしていれば知らないうちに寝てしまっているだろう。
貝殻をベースに作られた住居の中、そこには暗闇に落ちていく一人の男の呼吸音だけがあった。