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幸せって不幸せ  作者: 夢見たむぅ
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第0章 出逢い ~幸せだった悪夢~

webのコンテストがあることを知って、それに初挑戦してみるべく構想を練って書き始めた作品です!


人間の脆く移り行く心の変化を楽しんでいただけると嬉しいです\(^-^)/

「私も本当は別れたくないよ‥‥。だけどやっぱり私耐えられないから。優ちゃん、別れよう。優ちゃんには私なんかじゃなくてもっと相応しい人がいると思うからその人と幸せになって欲しい。さようなら。今まで本当にありがとう。最高に楽しかった! 」


 6年前、彼女の言葉に僕は何も言い返すことが出来なかった。


 まだ高校を卒業して1ヶ月が経とうとしていた3月の中旬に、これまで当たり前となっていた僕達の日常が土台から崩れてしまったのだ。


 彼女の名前は小桜三咲(こざくら みさき)


 160cmない位の小柄な身長で肩に軽く掛かる位のセミロングな焦げ茶色の髪をしていて、明るくて皆に優しいけどたまに見せる茶目っ気が周りから人気があって、クリッとした瞳で笑う姿に、僕もいつからかメロメロにされていた。


 仲は良かったのでとにかく周りよりも積極的にアプローチしようと、持てる機会をフルで利用してようやく待ち望んだチャンス。


 中学2年生の夏休み、太陽が辺りをジリジリと照らして蝉が忙しなく鳴き続けている真夏の公園で僕が同じクラスだった彼女に告白した。


 彼女が日の光よりも眩しい笑顔で頷いて手を握ってくれた時、僕の心臓は気恥ずかしさと嬉しさの高揚のあまりに破裂するのではないかと思うほどバクバクしていたのを覚えている。


 それから彼女を送って家に帰り、動物園の猿のようにベットの上でじたばた動きながら叫び声を上げて舞い上がっていたっけ。


 初めてのデートは地元の近くにある水族館で、結構有名だったイルカとシャチのショーを観ながら、手を繋ぎたい、手を繋ぎたいと考えながら手を伸ばしては引っ込めてを繰り返していた。


 そんな僕に気づいていたのか、スッと僕の手に小さくて可愛い手を重ねてきた彼女。


 男なのに情けないとか思いながら、顔を紅くして彼女の顔をチラッと見てみると、少しだけニヤリと笑っている彼女がこちらの顔を覗いて、焦げ茶色の肩に掛かるセミロングの髪を垂らしてずっと見つめてくる。


 恥ずかしさに負けた僕はたしか再び目を反らしながら、彼女の手をギュッと握って離さなかった。


 時が流れて高校受験の話題でクラスが持ちきりになっていた時は、同じ高校に行けるように毎日2人で学校に残って勉強していた。


 だいたい同等の学力だったから、切磋琢磨しながら、時々イチャイチャしながら勉強していたと思う。


 同じ高校に受かった時には彼女が抱きついてきて、発達途中であろう胸の感触を間近に感じて思春期まっしぐらの僕の股間が疼いてしまったのは申し訳なかった。


 高校に入ってから初めてクラスがバラバラになって、淋しくて、周りにカッコいい同級生がたくさんいたから、物凄く心配になった。


 でも、彼女も同じ事を考えていたことを後から知って、心の底から安堵したのは忘れられない。


 高校一年生の夏休みには、デートに行った遊園地の観覧車で初めてキスをした。


 観覧車の頂上でキスしたカップルは永遠に結ばれるなんて迷信を2人とも純粋に信じていて、周りからもしもその景色が見えていたなら、ラブラブ過ぎて腹が立ってくるんじゃないだろうか。


 お昼の彼女の作ってきたお弁当は美味しいって何回も言って食べていたが、正直その雰囲気の影響がかなり大きかった。


 こんな風にして、周りからは夫婦だの何だのと弄られながらも、幸せで順風満帆な生活を送っていた僕たちの生活に、大学受験を考え始めていた高校三年生の頃から密かに暗雲が立ち込めてくる。


 暗雲と言ったも仲が悪くなってきたとかそういうのではなく、彼女の志望していた学校が今住んでいる所からずっと遠くの看護系の専門学校で、いずれ遠距離恋愛になることがほぼほぼ確定していたのだ。


 お互いその事実を避けながら過ごしていたが、たまに進路の話になるとやっぱり暗くなる時があって、そんな時でも彼女は悲しそうな瞳をしながらも笑って寄り添おうとしてくれていた。


 (はな)(ばな)れになってしまうことを誤魔化すように、デートを繰り返し過ごし、やがて僕が地元の私大に合格して、彼女も専門学校の入学が決まって、高校の卒業式に。


 周りの友達も彼女も泣いていたけど、誰にも負けないくらいに泣いた。


 凄く幸せな時間だったからこそ思いっきり泣いたはず。


 この時はまだ、高校を卒業するのが名残惜しくて泣いているだけだと盲目していたけれど、この日から20日が過ぎたある日彼女に例の話題を持ち掛けられた際に、現実に戻される。


「ねぇ優ちゃん、私今週末には専門学校の近くで一人暮らしすることになったの。だからね‥、私達はどうするべきなのかな」


 咄嗟に聞こえてきたことは余りにも急すぎて驚いたが、それ以上に彼女が何か更に言い出しにくいことを隠しているように見えて、その曇った表情がまるで、自分に悟って欲しいと訴えかけてくるみたいだった。


 卒業式の日と()()涙が零れそうになる。


 そうだ、僕は卒業式の日、辛い現実から逃げられなくなるから泣いていたのだ。


 彼女や友達との幸せな日々だけのパラレルワールドに居座ろうとしていた僕を彼女が引き戻す。


 現実に帰って来てからは、一生懸命これからも付き合って行きたいことを伝え続けたけど、そのかいなく彼女の言い方は毎日毎日変わっていった。


「私不安だな、遠距離恋愛なんて自分にできる気がしないの」


「優ちゃんはこのまま私と遠距離で付き合ってても疲れちゃわないかな」


「もし別れたら、優ちゃんはどんな素敵な人を見つけるんだろう」


 何で僕とは真逆の方向にどんどん向かっていくのかわからなかった。


 彼女が遠くに行ってしまう2日前に僕は、電話中に初めて彼女に身勝手な怒りをぶつけてしまう。


「なんでそんなに別れることしか考えられないの? 別れたいならハッキリ言えばいいじゃんか! 新しい人を探したいならそう言えばいいじゃんか! 最初からそのつもりなら、俺に聞かないでくれよ。あんな暗い顔でどうしたらいいかなとか言わないでくれよ」


 僕に別れたいと言って欲しかったのだとしたら、こんな悲しすぎることはない。


 聞き慣れない怒声を浴びせると、黙り込んで無言のまま答えることもなく彼女の方が電話を切った。


 その後ムシャクシャして怒鳴った手前、掛け直すこともできないので、彼女の方から連絡が来るのを待っていたのだが、引っ越し当日まで連絡が来ることはないままだった。


 引っ越しの当日、SNSに一件の通知が入っている。


 『朝10時、最初に告白してくれた公園の木の下で待っています。』


 起きた時の時刻は9時44分で、思いっきりダッシュで向かった先の桜の木の下で彼女は待っていた。


 朝の挨拶もないまま、彼女は僕の目の前に立つなり口を開いて。


「急に呼び出してごめんね。私なりに結論出してきた」


「私も本当は別れたくないよ‥‥。だけどやっぱり――― 」


 真夏の告白のあの時とは違って、少し肌寒くて、僕の心は沈んでしまっていた。


 あれから6年がたった今僕は、地元の米屋さんでアルバイトとしてお米を売っている。


「あのー、もしもーし。ちょっと店員さん! 起きて!」


 女の人の声が聴こえて、ハッと我に返り、目が覚めて立ち上がってしまう。


「あ、い、いらっしゃいませ」


 ぎこちなく慌てた声を出して、前を向いてお客さんの方を見るとそこには、同い年か年下位で黒髪ロングの目元が例の元カノに似ている女の人が不思議そうに立っていた。


 どうやら余りにも客がこないので、うたた寝をしながら昔の断片的な思い出を夢に見ていたらしい。


 接客もせずに、長い昔の幸せだったはずの悪夢を見ながらうたた寝していた僕に怒っている様子もなく、クスクスと笑っている。


 そんな光景に、僕の方が頭にクエスチョンマークが多く浮かんで口をポカンと開いて首が傾いてしまう。


 あくまでお客様なので丁寧に謝罪しようと思い、改めて頭を持ち上げて一息付くと、女の人は更に可笑しそうに笑っていた。


「とっても面白い寝言でしたね。お店に来たら急に付き合って下さいって言われるし、顔がデレデレし始めたと思ったら、次は怒鳴って来るんですもん 」


 僕は思考を張り巡らせて、完全に理解が及ぶまでおよそ5秒間を費やしたのちに顔を真っ赤にして俯く。


「こ、声、出てましたか‥‥?」


 恐る恐る尋ねてみると、女の人はとてもニコニコした笑顔で、髪を縦に揺らしながら頷いた。


 店の中には、大量の種類のお米と僕と彼女しかいない。


 お米と彼女以外に話を聞かれている心配はないことに少しホッとしながらも、まずはこの状況を打破しようとしてみるが。


「私の名前は結原美実(ゆいはら みみ)って言います。あなたは何て言うんですか? 」


 完全にペースを握られていてる。


 下手に名乗るのを断って、社員の方に行くであろうクレームが更に酷いものになるのを避けるために仕方なく名乗った。


「僕の名前は宮内優真(みやうち ゆうま)です。あの、結原さん、こんなこと言うのもあれなんですけど、社員へのクレームだけは勘弁してくれませんか? 」


 久しぶりにまともに正面から話しかけてきた人間に対して、対応の仕方を忘れており、何でこんな失礼なことを言ってしまってるんだろうと後悔の念が後を追ってくる。


 けれども、こうなるのも当然かもしれない。


 あの日から僕は他人と接触することを避けて静かに無気力的に、幸せなんて無くていいから辛いことがないようにと生きてきた。


 進学した大学でも黙々と勉強にのみ打ち込んで、3年間で単位を取り終えて、4年生の時には家に籠って読書をする暮らしを営んできた。


 就職活動なんてものは行っていなくて、適当に親に養ってもらって、親が死んだら自分も死のうと考えていたが、それを許してもらえなかったので、この米屋さんでもう2年間ほどバイトをしているのだ。


 この2年間、パートのおばちゃん達や他のバイトに陰で就職すらしていないこと、性格が暗いことの愚痴を言われ続けながらも、仕事では問題を起こすこともなく続けていたのに今日で終わりそうな予感がする。


「宮内優真君かぁ〜。優真君、クレームを出してほしくなければ‥‥」


 相変わらずニコニコしながらこちらに顔を少しだけ近づけて、言い寄ってくる。


(まさか、クレームを言わない代わりに何かを要求するつもりなのか!? )


 たった1度のうたた寝によって、このバイト生活も終わるのかと覚悟した時、予想の斜め上のフレーズが耳に入ってきた。


「私に明日、すぐ近くにある喫茶店のモーニングを奢りなさい!」


 突拍子もない要求が飛び出してきて、あたふたする間も無く返答を要求する視線がこちらに向けられている。

読んで頂きありがとうございます!


失恋というものが人一倍心にキズを作ってしまっている主人公。


今後更にさまざまなことがわかっていく中で、どのようなENDを迎えることになるのか?


恋愛経験があまりない作者の妄想恋愛ストーリーをこれからも読んでいただけたら幸いです(^q^)


感想・質問などありましたら書いていただけると嬉しいです!

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